セキュリティ人材が不足する3つの要因

石川文也氏:「深刻化する”セキュリティ人材不足”に立ち向かう! サイバー攻撃への不安を解消する運用のヒント」と題しまして、キヤノンマーケティングジャパンの石川がお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

それでは本日のメインテーマ「セキュリティ人材の不足」のお話をさせていただきます。タイトルを見てお越しの方もいると思いますが、セキュリティ人材の不足に関して主眼を置いて、お話しします。

2016年に経済産業省が出している調査結果です。左側の表の真ん中の青い部分(情報セキュリティ人材)に注目してください。

2016年の段階で13.2万人のセキュリティ人材が不足しています、という情報が記載されています。そして、2020年になると19.3万人不足する、という予想が2016年に発表されました。2020年までに約20万人のセキュリティ人材が不足するということで、市場ではキャッチーなフレーズを付けて「202020問題」と言われたりしています。これはみなさん、ご認識のとおりだと思います。

それではなぜ、セキュリティ人材が不足するのかを要因ごとに詳しくご説明していきます。いろんな要因が考えられますが、大まかにまとめて次の3つが挙げられます。

要因1「IT環境の変化」、要因2「セキュリティ脅威の変化」、そして要因3「国際イベントによる情勢の変化」。これらの要因に関して詳しく話をしていきます。

破壊的な変化にどう対応していくか

まず「IT環境の変化」。(スライドを差して)こちら「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」が一因です。昨今セキュリティ関係のセミナーに行くと、みんなこぞってDXの話をしています。私も時流に倣って、こちらから話を進めさせていただきます。

2004年にスウェーデンの大学教授によって提唱されたのですが、おおまかにいうと「ITの浸透によって、人々の生活をあらゆる面でよりよく、豊かにする」といった概念です。

もう少し詳しい内容を、IDC Japanさんが出している定義から持ってきました。下線の部分に注目してください。「企業が外部エコシステムの『破壊的な変化』に対応しつつ」……いろいろな変化がある中、「破壊的な変化」と、かなり大げさに表現しています。こうした変化に対応していくことが重要である、ということが定義されています。

この「破壊的な変化」に対応するために重要なのが、プラットフォームです。変化を促していくための基盤となる第3のプラットフォーム。これを使って「破壊的な変化」に対応していくんだという話をしています。

ITプラットフォームを構成する要素が爆発的に増えている

第2のプラットフォームと言われているのは、クライアントとサーバーのシステムですが、第3のプラットフォームになってくると、大きく「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」「クラウド」の4つに分かれていると言われています。

モバイルでは、モバイルで稼働するアプリケーションであったり、ソーシャルでは、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSですね。

ビッグデータでは、顧客からの購入データなどいろんなものが日々蓄積される中で、統計したり分析したりする。クラウドは、クラウド基盤。AWSやAzureを使われてる方がいると思います。

こういった部分で、4つのプラットフォームに分かれます、というのが第3のプラットフォームです。先ほどお伝えしましたが、これらの4つのプラットフォームが、さらに複雑に分岐して、アプリケーションの話であったりデータの話であったりさまざまな分岐をとることによって、ITプラットフォームを構成する要素が今、爆発的に増えている。これが第3のプラットフォームです。

この構成する要素が爆発的に増えていくと、IT業務量がどんどん増大していきます。

こちらのデータは独立行政法人の情報処理推進機構のIPAが毎年出している『IT人材白書』より引用しております。IT企業に対して「どういったIT業務が増えていく見通しですか」というアンケートを取った表です。

一番増えるだろうと見通されているのが、「全社ITの企画」です。当然ですが、DXを推し進めれば推し進めるほど、ITの企画の比重が高くなっていく。42.1パーセントの企業が「増えていくでしょう」と回答しています。

約4割の企業が「セキュリティリスクの管理が増える」と回答

注目していただきたいのは、2番目に多いと言われている、40.8パーセントの企業が「増える」と答えている「情報セキュリティリスク管理」です。当然ですが、全社ITの企画が増えればそれに比例して、情報セキュリティリスクの管理も増えていき、業務量も増大していくということが、このグラフから読み取れます。

この情報セキュリティリスクに対応するには、体制作りが必要不可欠です。この体制を作っていくにあたっては、例えばCSIRT(Computer Security Incident Response Team: 組織内の情報セキュリティ問題を専門に扱う、インシデント対応チーム)や、プライベートSOC(Security Operation Center:セキュリティ監視を行う拠点)、インシデント管理をどうするなど、要員の教育も重要となります。

とくに課題となっているのが、人材の育成の難しさ。IPAの調査結果にもあるように、多くの企業が同様の課題を抱えており、「育成や習得に時間やコストがかかる」「必要となる知識やスキルが多い/わからない」を挙げています。

また、「セキュリティ以外にも幅広い知識と経験が必要」ということで、例えばサーバーやネットワークについて当然知っていないと、セキュリティに関しては語れないといったところがあります。

そもそも「情報セキュリティを志望する人が少ない」。我々としては非常に寂しいですが、そういうこともあります。

ちなみに、弊社キヤノンマーケティングジャパンの場合は、2016年の1月にCanon Marketing Japan Group CSIRT、「Canon MJ-CSIRT」を設立しています。当然1社だけではまかなえないところもあるので、外部の機関とか他の組織と連携をして、強化をしているという体制を組んでいます。

我々としては、意識改革を取り組んではいましたが、こういう体制になるまで時間がかかっています。

多様化する攻撃メソッド

続きまして、セキュリティ脅威の変化についてです。変化しているのは「攻撃メソッド」ということで、ここではどのように攻撃が多様化しているのか、複雑化しているのかを軽くお話させていただきます。

大きく分けて、「仮想通貨に関する脅威」「巧妙化する標的型攻撃」「脆弱性」の3つです。

仮想通貨に関する脅威は、一時期メディアでも多く話題に上がり、一般の方にも浸透したと思います。昨今はあまり一般では聞かれないかと思いますが、攻撃者にとっては今も仮想通貨は非常に便利なものです。

攻撃者はどこで使っているかといいますと、「ダークウェブ」です。今日ご参加いただいているみなさんはもうダークウェブという言葉を「聞いたことあるよ」とか「知ってるよ」という方もいらっしゃると思います。

ご存じない方に向けて軽くご説明します。我々が実際にアクセスをしたり、使ったりしているGoogleやYahooのような普通のWebサイトは、「サーフェイスウェブ」と呼ばれています。こちらは諸説あるのですが、全体のWebサイトの約4パーセントぐらいと言われています。たった4パーセントしかありません。

そのほかの領域がダークウェブ、ディープウェブと言われる世界。こちらは普通のWebブラウザーではたどり着くことができない、閉ざされた空間ですね。ここでは非合法な取引が行われています。

取引されるのはサイバー攻撃のツールであったり、臓器や兵器、銃火器など物体があるもの。あとは個人情報、クレジットカード情報などもあります。そういったものがダークウェブで取引されており、その際に仮想通貨が非常に使われています。