「お金自体を使わない」世界が広がっていく必然

キャッシュレスと並行して拡大する

急速に進む「無料化」その背景とは?(写真:YakobchukOlena/iStock)
電子マネーにキャッシュレスサービス、仮想通貨(暗号資産)、ブロックチェーン。今、フィンテックという言葉のもとに、あらゆる場面の根幹にある「お金」のあり方が変わり始めた。インターネットと社会の関係を長年研究する著者は、この先「貨幣経済が衰退する可能性は高く、その未来にまったく異なる世界が立ち上がる」と主張する。新著『2049年「お金」消滅 貨幣なき世界の歩き方』から一部抜粋して解説していく。

「無料化」の流れが止まらないわけ

私はキャッシュレスこそがこの先「お金」が消えていく出発点だと認識しています。一方でキャッシュレスの動きとは別に「お金」を「使わない」「稼ぐ必要が無い」世界というものも急速に拡大し始めています。

資本主義の社会には唯一の原理があります。それは貨幣を多くコントロールできる主体が勝者である、というものです。この原理にもとづき、資本主義の勝者になるには、手元に多くの資金を保持していることが条件で、そのため富裕層から最貧層にいたるまでを等しく貫く行動原理として「使わないで済むならお金は使わない」という原則的な考え方があります。

そうした社会の中で事業を行っていくことを前提に、ユーザーたちから選ばれることを至上とするのであれば、「無料」であることが最強となります。

ただし無料化という戦略に対しては様々な意見があります。大会社であれば、無料でサービスを提供し、多くのユーザーを獲得しながら、その商流のデータを用いて、たとえば広告に応用することで収益を得るような方法を考えることもできるでしょう。

他方、イラストレータのような個人事業主にとっては、絵を描く時間そのものが価値で、かけた時間に対しての対価が必要だというのが現在の一般的な考え方です。イラストやアイデア出しなど、プロにただで頼むな、という論調はその最たるものです。

とはいえ無料化が最強の戦略だということについては、今現在、そのとおりのことが起きていると言わざるを得ません。

次ページ世界最強企業のうちの2社が「無料」を掲げる
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  • ham7fea2850a161
    紙幣や硬貨を使わないことがお金を使わないことに繋がるわけがない。お金が紙幣ではなく数字になったことは間違いない。無料と言うのもその裏では別の形でお金が動いている。民放が無料であっても企業が広告費を支払い、その広告費が商品価格に含まれている。ネットも無料であるが、裏では同じことになっている。
    紙幣を見なくなってからの方がお金の動きが活発になりお金の価値が高まっている。数字になったお金は集まるところにはどんどん集まって個人も法人も格差が広がっているように見える。
    up51
    down7
    2019/11/7 07:53
  • 十里スガリbaed6fe6b934
    価値を凡人が知ることになるのは、普及して一般化してからではあるのだが、無料ビジネスは素晴らしいから格差を容認してお金がなくてもいいよね、とリードするように書くのはどうかと思う。

    文中で資本主義の話をしているが、まさにこの記事こそ、資本主義の資本側が搾取することを容認する論理になってしまっている。

    筆者はよく考えて記事を結ぶべきだ。
    up34
    down3
    2019/11/7 08:39
  • くりとっぽ0f35d8bc00e6
    > マネーなんて自分で刷ればいい

    うーん、失礼ながら、大学の先生って訳のわからないこと考えてて、優雅でいいですねー。
    そういう人たちも(こそ?)先進国の社会には必要でしょうが。

    「未来食堂」、そんなにすごいですか?
    ままごとの「こども銀行券」と一緒に思えますが。
    また、今話題のウィーワークを、IT企業と見るか不動産業と見るかというのと、どこか共通している気がします。

    > 「マネタイズに悩むなんて、いつの時代を生きているの?」

    学生には上から目線、そしてご自分は本の宣伝で、ちゃっかりマネタイズ。
    up20
    down6
    2019/11/7 11:56
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