・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
ナザリック第九階層執務室、アインズは
「……今更だけれど、なんで(仮)なんだ?」
ネイア・バラハ率いる『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』、仮初めで感謝を送っているのか?とも邪推してしまうが、ネイアのちょっとアレな位の心酔ぶりや、
……ネイアは自分たちの活動がアインズ様から認められ、正式に自分たちの団体へ名を下知して頂けるまで、正式名称を付けないという方針から付いている(仮)だが、そんな事知るよしもないアインズからすれば謎でしかない。
「それにしても……。」
(ナザリックに忠誠を尽くす現地の人間集団か……。育成に掛かる費用対効果とメリットが釣り合わないから後回しにしていたけれど、いざ出来上がるとどうすれば良いのか俺の頭じゃ浮かばないなぁ。シャルティアを洗脳した集団を炙り出す囮には使えるだろうな。)
未だ尻尾を出さない狡猾な集団にふつふつと怒りが沸いてきて、沈静化される。それでも火種は心に燻ったままだ。ナザリックに弓を引き、愛しの我が子を穢した賊共にはこの世の地獄という地獄を味わって貰おう。絶対に殺さない、死ぬなど許さない。苦痛と汚辱に塗れたジュデッカの最奥すらも生ぬるい地獄を見せてやる。
「……っと。おゎ!やべ!」
知らずに絶望のオーラを発して居たのだろう、お付きのメイドが腰を抜かして失禁・失神しており、
「す、すまない。怪我はないか?もう大丈夫だ、忘れてくれ。」
メイドや
「アインズ様!いと尊き御方の前で何たる醜態を!この首を刎ねその贖罪とさせて下さい!」
「き、気にするな。これはわたしの……」
アインズはそこまで考え、恐らくこのまま何も命令を与えないで優しくすると、一般メイドなら本気で自害しかねないと判断する。
「全く、わたしの発するオーラ程度で失神するなど、付き人として自覚を持ちたまえ。貴様には罰を与える。着替えと湯浴みの後、部屋を1人で掃除しろ。以前よりも綺麗にだ。そしてもう一日わたしに付き従え。次こそ寝ることも休むことも許さん。」
「畏まりましたアインズ様!」
「ではさっさとその汚れた服と身体を清めて来い。わたしの前に立つに相応しいよう、時間を掛けるのだぞ。」
「はい!では、御前失礼致します!」
(はぁ……。完全にブラック上司だよ……。何でこんな上司を望んでいるんだ一般メイド達は……。)
アインズの脳裏に一般メイドの作成者……ブラック企業に苦しめられていたヘロヘロさんや、イラストレーターの薄給激務を嘆いていたホワイトブリムさんが浮かぶ。設定の薄いNPCには制作者の性が反映されるのだとすれば、余りにも残酷な話だ……。
●
『お夕飯の時間だよぉ~。』
「解りましたぁ~。ぶくぶく茶釜様ぁ♪」
アウラは腕時計から発せられた甘ったるい声色に、耳をダランと垂れさせニヘラァと恍惚の笑みを浮かべる。自らの創造主にして神たる存在、そのお声を聞くことのできるマジック・アイテム。アウラの働きにと、アインズ様よりご下賜頂いた品だ。
「おや、もう晩餐の時間ですか。では会議はまだ途中ですが、1時間休憩と致しましょう。」
第9階層放送室、その横に併設された会議室で、何時ものようにナザリックラジオ放送会議を行っていたデミウルゴス達は資料を仕舞い、テーブルに純白のクロスを張る。丁度メイド達が、放送室を訪れてハンバーガーセットやイタリアンのフルコース、固めに焼いたパンにザワークラウト・粗挽き腸詰めのセット・ビールをワゴンで運んできた。
正直飲食も休憩も必要無いのだが、アインズ様からの命令となれば仕方がない。
「しかしアウラ嬢、素敵な腕輪に御座いますね。至ッ高の御方のお声を聞けるアイテムなど!正しく神代の品!」
「そうでしょう!アインズ様のお手持ちの品なんてとても受け取れなかったけれど、アインズ様がご褒美にって。」
「おおお!我々守護者は灰燼に帰するその瞬間までお仕えすることが当ッ然の理!!にも関わらず、褒美の代物まで下々の我々に与え賜うとは正しく御方々の束ね役!流石は慈悲深き、わたくしの創造主!」
「でもアインズ様から制限を付けられてるんだよねぇ。7時21分の後に19時19分にはタイマーをセットしちゃダメだって。シャルティアに聞こうとしたけれど、それもダメって言われたんだよねぇ。」
「ほほぅ……。申し訳無いアウラ嬢、アインズ様のお手持ちの品ともなれば流石に<
「え!?どういうこと?」
2人が自分の腕輪を見る目が真剣味を帯びているのを感じ、アウラは狼狽する。
「ふむ。これは数霊が関連しているのかもしれないね。」
「数霊?」
「言霊と似たものさ。至高の御方々であれば、数に意味を持たせ力を宿すなど、雑作もない事だろう。」
「な、なるほど……。」
「そしてアインズ様が禁忌とされた数字。0721 1919。まず0721だが、この数字をバラし、推測すると……
「この腕輪にそんな能力が!?」
「それだけではない、次に1919……。その腕輪を作製されたのが、ぶくぶく茶釜様である事を考えれば、ぶくぶく茶釜様の御姿、1をピン揃の数霊に合わせると
「ぶ、ぶくぶく茶釜様の御力がですか!?デミウルゴス、確かにそれじゃあわたしが設定なんて出来ない!でも、そんなアイテムをわたし如きが貰うなんて……。」
「アインズ様がアウラへ貸し与えられた
アウラは無言で首を縦に振る。確かにそんな話を最初に聞かされていれば、幾らぶくぶく茶釜様のお声が聞けると知っても受け取ることは無かっただろう。
「……済まない、アウラ。この話は聞かなかった事にしてくれ。アインズ様が君にその腕輪の能力を隠し、〝褒美〟として与えたのには必ず理由が有る。となればわたし如きの邪推で君が腕輪を返すなんて事になれば、アインズ様のご計画に支障が出るかも知れないからね。過ぎた真似をしたよ。」
「ええ、この話は忘れましょう。アウラ嬢も悟られないように。」
「う、うん、デミウルゴス。パンドラズ・アクター。アインズ様からご下賜頂いた品に恥じない様、わたしも頑張るから!」
アウラは偉大なる御方と自らの創造主へ益々の敬意を募らせ、やや緊張した面持ちで腕輪を撫でた。