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講義No.03494

材料の破壊をもたらす力と破壊の種類

物が壊れるときに働く力と壊れるメカニズム

 材料の強度を研究するには、その材料が破壊にいたるまでに、どのような力がどのようにかかっているかを調べる必要があります。その基本は、単位面積あたりにどれぐらいの力が働くかという「応力」、そして材料の変形の大きさ、つまり「ひずみ」です。
 材料の変形にもいくつか種類があります。調べたい面に対して垂直に引っぱる「引っぱり変形」というのに対し、面に対して平行な力が働くのを「せん断変形」と言います。材料の内部には応力が分布していますが、材料の形状や、欠陥の有無によって、応力の分布は均一にはなりません。何かの原因で応力が極端に高いところができ、それが破壊の原因になります。

破壊の形態もいろいろ

 また、荷重のかかり方によって破壊の形態も3種類に分けられます。まずは単純に力がかかる「単純荷重」、そして、変形を繰り返すことで破壊にいたる「疲労」、そして、高温下で材料を引っぱった状態を長時間保持することで起こる「クリープ」という形態です。
 単純荷重の特徴として、ある程度の力までは弾性といって、ゴムのように伸びても元に戻る性質がありますが、ひずみが大きくなると元に戻らなくなります。この性質を「塑性変形」と言います。中にはガラスなど、塑性変形せずにいきなり壊れる素材もあります。
 材料は硬ければ壊れにくいというものではありません。硬いと大きな応力が1点に集中し、一気に破壊しますが、ある程度柔らかいと材料が変形するので応力が分散します。

破壊の研究のこれから

 破壊の研究は古い学問ですが、新しい素材が出てくる限り終わることはありません。しかも、目に見える範囲の研究はかなり進んできましたが、今はミクロの視点での研究が主流になっています。つまり、塑性変形しているときに原子レベルでどのようなことが起こっているのかといった研究です。
 そのため破壊は、最近では工学と物理学との学問の垣根を越えて研究されるようになってきました。これからは、ますますその傾向が高まっていくでしょう。

材料の劣化・破壊の原子シミュレーション

夢ナビライブ2014 東京会場

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材料強度額の考え方

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この学問が向いているかも 材料強度学、材料力学、破壊力学

東京大学
生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター 准教授
梅野 宜崇 先生

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メッセージ

 大学の勉強は、高校までのように与えられた勉強をカリキュラムに従ってやればいいというものとは違い、自分で問題を設定しなくてはいけません。誰かが「これをやりなさい」と言ってくれることはないので、自分から探す姿勢が大事です。しかし、個性の前には基本がなくてはなりません。
 また、新しいことを発見したと思っていても誰かが何年も前にやっていたということはよくあります。それを知っておくためにもコミュニケーションは重要です。特に国際的に活躍するには英語力も必要です。英語ができれば日本の外にも活躍の場が広がります。

先生の学問へのきっかけ

 私は小さな頃から機械が好きで、工学部を志望していましたが、大学で学んでいくうち、機械そのものから機械を作る「材料」のほうへと興味が移っていきました。「材料の強度」を知ることはものづくりの基本だからです。材料の強度には、実はまだまだ謎の部分が多く、それを原子・分子の視点から解析するのは新しい手法です。研究をすればするほど新たな謎が見つかり、面白くなってくるのがこの研究の魅力です。

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梅野 宜崇 先生がいらっしゃる
東京大学に関心を持ったら

 東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。