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なぜ途中で辞任しなかったのか? 津田大介「表現の不自由展・その後」展示中止から再開まで、激動の75日間を語る

津田大介インタビュー #1

2時間前

「表現の不自由展・その後」の展示中止、そして最後の7日間の再開に最大の注目が集まった「あいちトリエンナーレ2019」。激動の75日間について、芸術監督を務めた津田大介さんに近現代史研究者の辻田真佐憲さんが聞きました(全3回の1回目/#2#3へ続く)。

津田大介さん

まだトリエンナーレの悪夢を見る

――ご無沙汰しております。津田さんは、ジャーナリズムとアカデミズムの垣根を超えて、ネット、音楽、社会問題など多方面で旺盛に活躍している稀有な書き手のひとりだと思います。リベラルの論客でありながら、会社経営者でもあるという背景も興味深く、一度しっかりお話をお聞きしたいと思っていましたが、まずは、今回の「あいちトリエンナーレ2019」について伺います。閉幕までお疲れさまでした。

津田 ありがとうございます。残務も結構ありますし、終わった実感はあまりなくて、毎日まだトリエンナーレに関係する悪夢を見ます。会期中はそれだけ緊張状態にあったんだな、と。

――8月1日から10月14日、75日間の会期を振り返って、いかがでしたか。

津田 毎日予想もつかないようなトラブルが尋常じゃない量降りかかってくる感じで、昼夜問わずその対応に明け暮れていました。飛行機に例えれば、離陸はできたものの、離陸直後にドーンと大きな音がして、エンジンに大きなトラブルが起き、とにかくその状況で墜落だけはしないようにフラフラ運転を続けたのが8月から9月にかけて。企画展「表現の不自由展・その後」(以下、不自由展)の再開という目的地を決めてからは、そこへ着陸するために何ができるのかを日々模索していました。

 

――一番大変だったことは何でしたか。

津田 一言でいうと、関わっている人たちはすべて正しいことを言っているのに、全員の主張に基づいて事を進めようとすると利害衝突が起きてしまってうまく進められなかったということに尽きますね。衝突した要素は多岐にわたるのですが、大きく言えば2つ。ガソリンテロ予告が起き、現場が電凸(電話、FAX、メールなどによる攻撃)で破壊し尽くされてしまっていたので、「すぐに展示再開できるわけではない」というあいちトリエンナーレ実行委員会側の見解があり、他方で、不自由展実行委員会や不自由展の参加アーティストたちは「自分たちは被害者であり、表現の機会が奪われている。一刻も早い再開を」と主張する。どちらも間違っていないから難しいんです。

2日目の朝、現場からの「もう無理です」という声

――「安全性の確保ができない」として、8月3日にあいちトリエンナーレ実行委員会が不自由展の中止を判断。電凸については、マニュアル化されたものがネットに出回っていましたね。

津田 実際に電話を受けているところを僕も見ています。2日目(8月2日)の朝には、現場から「もう無理です」という声を直接聞きました。

 

――8月16日には、大村秀章愛知県知事の主導で「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」(以下、検証委員会)が立ち上がりました。

津田 再開にあたっては検証委員会も重要なプレーヤーになりました。中間報告については納得いかない部分もありますが、検証委員会が立ち上がり、異例の速さでヒアリングと調査をしてくれたからこそ、再開にこぎつけられた部分は大きいと思います。知事、事務局、検証委員会、不自由展実行委、不自由展の参加アーティスト、そしてトリエンナーレの参加アーティストたちがプレーヤーとして存在し、それぞれの思惑も違っていました。

 とりわけ、トリエンナーレにダメージが大きかったのは、海外を中心としたトリエンナーレ参加アーティストたちによるボイコットです。不自由展の中止に抗議の意思を示して彼らは断続的に展示中止や作品の変更を行いました。僕とキュレーターたちは、アーティストたちの意思を尊重するということを最後まで貫いたつもりです。ボイコットに際して参加アーティストたちは、美術館や知事、僕を批判するようなステートメントを出しましたが、それらを検閲することはせず、会場に全て掲出しました。

 僕らも中止したくて不自由展を中止したわけではなかったわけですが、海外アーティストたちからすれば、“安全上の管理の問題で中止する”というのは検閲にほかならない――検閲をもっともらしく理由付けしているように見えちゃうんですよね。この溝はなかなか埋めることができませんでした。そのうえで、参加アーティストたちがこうした事態に直面したとき、抗議の意思を示すために取り得る手段はボイコットしかないんです。

 だから、また最初の話に戻りますが「みんな正しいことを言っている」んです。しかし、各々の主張に基づいて決断しようとすると、衝突が起きる。最後まで自分が責任を持って「こうします」と決められる立場だったらよかったのかもしれませんが、それもある意味で途中から奪われてしまった(※1)ので、自分はできるだけ衝突が起きないように裏側で風通しを良くするしかなかった。正直に言って、本当に再開できるのか、どこで折り合いがつくのかということについては最後までずっと分からなかったです。

※1 9月25日に発表された検証委員会の中間報告を受けて、大村知事は会見で今後、表現の不自由展実行委員会やアーティストとの協議から津田氏を外し、あいちトリエンナーレ実行委員会などが担当する方針を示した。

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