ほぼ日刊イトイ新聞

2019-11-07

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・じぶんでも、人に訊きますよ、よく。
 「いちばん好きなのはなに?」
 ま、シンプルなのは、
 あるバンドの曲のなかでいちばん好きなのはなんだとか、
 映画ではなにが好きだとか、料理ではどうだとか、
 とにかく、なにが好きなんだということを知りたがる。
 まぁ、知ってどうしたいというわけでもなく、
 会話のマッサージがわりの質問ですよね。
 答えはなんだっていいんだ、とも言えそうな。
 「ああ、そうそう、いいねぇ、それはいい」とか、
 たのしく相槌を打ち合うだけの遊びかもしれない。
 それでも、いざ本気になって考えると
 けっこう答えるのも大変だったりもしてね。
 あれでもないこれでもない、一方こういう考えをすれば、
 あれでもいいし、条件がこうだったらこれかなぁ、とか。

 この「いちばん好き」についての質問に、
 じぶんのなかで二種類の対応があると気が付いた。
 ひとつは、「おはよう」のあいさつくらいの感じで、
 どれでもいいんだけどという気持ちで、
 あれこれすぐに口に出して答えちゃうという場合。
 「ビートルズのなかでどの曲が好き?」と訊かれたら、
 ほとんど考えることもなしに「She loves you」とかね。
 他に候補にあげる曲のことなんかは、後で考える。
 どれも好きだということが、自然に表現されちゃう。

 もうひとつは、苦吟する、という感じで考え抜くケース。
 どれもいいし、あれもこれも捨てがたいとか思いながら、
 「そんなこと、簡単に答えられるかよ!」なんて、もう、
 怒り出しちゃったりすることだってある。
 「どっちかひとつ選ぶとしたら?」なんて言われたら、
 「じゃ、どっちもやめる」とか返しそうな真剣さ。

 そういうことあるよね、というくらいの話なのだけれど、
 おなじ人間のなかで、おなじ質問に対して、
 まったく別の反応があり得るんだよなぁ。

 ところでビートルズのなかで、いちばん好きなの、
 あなたは、どの曲ですか? 
 ぼくは、いま現在は、なんと「Yesterday」なんです。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
人間って、おそらく会話すること自体が、娯楽なんだよね。


ここ1週間のほぼ日を見る コンテンツ一覧を見る