日本版GDPR?!ついに日本でもGAFA規制についての検討が開始

情報コンプラアイアンス研究室:編集担当 2018.11.26 GDPR
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経済産業省と公正取引委員会、総務省は2018年11月5日に「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(案)を公表しました。

この中間論理整理(案)は2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」に沿って設置された検討会で、7月10日の会合を皮切りに、有識者を含め7回にわたり開催してきた会合の議論の結果をまとめたものです。


デジタル・プラットフォーマーとは、グーグル(G)、アップル(A)、フェイスブック(F)、アマゾン(A)の頭文字を取ったGAFAと呼ばれる米国発の巨大IT企業に代表される企業を指します。

デジタル・プラットフォーマーは、インターネットを活用した検索・SNS・電子モールなどでの操作履歴、購買行動といった「個人情報」を収集・分析して我々のニーズに合ったサービスを提供する、今や我々の生活には切っても切れないプラットフォームを提供する企業と言えます。

欧州ではGAFAに対する規制の一部が既に施行されていますが、日本でも本格的に検討が始まりましたので、今回は中間論点整理(案)の概要と背景についてご紹介をさせて頂きます。

中間論点整理(案)の概要

 

中間論点整理(案)は15ページのPDF文書で公開されており、大きく7つのポイントから構成されています。

 ・経済産業省ホームページ:http://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181105005/20181105005.html

 ・総務省ホームページ:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin01_02000269.html

以下に、今回の検討の背景と論点のポイントについて、上記を参照しまとめてみました。

 

検討項目

検討の背景

今後の論点

1

デジタル・プラットフォーマーの意義・特性

プラットフォーマーにはネットワーク効果を最大限発揮するため、「寡占化、独占化しやすい」傾向がある

消費者や事業者にとって社会経済上、不可欠ともいえる基盤を提供する存在

2

デジタル・プラットフォーマーに対する法的評価の観点

政府のデジタル・プラットフォーマーに対する見方の変化(場の提供者から、積極的な責任を取るべき)

公正かつ自由な競争を確保すべく、取引環境整備を図っていくか、規律のありかたについて検討が必要

3

イノベーションの担い手として負うべき責任の設計

消費者、事業者の総組み合わせにサービスを前提としており、縦割りのバリューチェーンを前提とした従来の業法の形態には当てはまらない

プラットフォーム・ビジネスの適切な発展を促進するため、守るべき社会的利益を踏まえた業法の見直し

4

公正性確保のための透明性の実現

ヒアリングの結果、プラットフォームのルールの不透明さが見受けられる。また個人情報のプロファイリング等により消費者への人格的・経済的価値を損なうリスクが想定される

プラットフォーマーと事業者・消費者の間で透明性及び公正性実現の必要性、これらを実現するための取組(専門組織の創設、規律の導入)

5

公正かつ自由な競争の再定義

プラットフォームに関する市場は多面市場であり、影響の算定が複雑になることから、更なる議論が必要と考えている

デジタル・プラットフォーマーが社会経済に不可欠で、高い市場支配力を有していることを前提に公正かつ自由な競争の再定義に基づく政策の策定、法案の制定

6

データの移転・解放ルールの検討

EUのGDPRや米国、英国の取り組みを例に日本での検討論点を展開している

データの移転、API解放といった解放ルールのあり方を定義

7

国際の観点

同様の事業を行なっている国内事業者と海外事業者が同等のルールに服するべきでは

海外事業者に対する実効的な適法法令の執行の仕組みを検討

 

欧州ではGAFAに対し、EU競争法、MiFID2GDPRなど先行して法案が施行されていますが、日本でも、独占禁止法/競争法、②税制、③データ・プライバシー規制という「3種類の観点」で検討が進んでいくことになると考えられています。

実際、②の税制については、英国でGAFAをターゲットに売上の2%の税を課す「デジタル課税」を2020年に導入する方針であり、③データ・プライバシー規制についても中国で2017年に整備された「サイバーセキュリティ法」や米国カリフォルニア州で成立した「新プライバシー法」が2020年に施行される見通しです。 

中間論点整理(案)提出後の今後の予定

年内を目処に、事業者ヒアリングやパブリックコメントを通じて意見を求めるとともに、基本原則の策定を行い、その後、具体的措置の実施に向けた検討を行うことになっています。

事業者へのヒアリング調査については、原則的に公開する方針とされており、早速、1116日に行われた検討会の状況を経済産業省のページから確認することができます。


・デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会(2018年11月16日開催)http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_platformer/001.html


11月16日に開催された、デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会では、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム、ヤフー株式会社、楽天株式会社が参加していますが、出席した担当者は「自主的な取り組みを見守り、十分でない場合には法規制を検討すべきだ」という厳しい規制に対しての慎重な意見が出ました。

まとめ


いかがでしょうか。欧州では20185月に施行されたGDPRで、個人情報を使用する前に事前に承認を取る「オプトイン」方式を採用し、利用者が自分の情報を他社に移せる「データポータビリティ」を基本的な人権と位置付けました。

一方、日本ではGAFAとの競争力を有するプラットフォーマーが存在するとして、規制強化がかえって競争を阻害する可能性を指摘する事業者の意見が一定数、見受けられます。

今後、事業者ヒアリングやパブリックコメントを通じて、どのような基本原則が策定されるのかを見守って行きたいと思います。