一発ヒットを出し、その後描けなくなった漫画家宅で見た人生の明暗<不動産執行人は見た44>

漫画家の画材イメージ

Naoaki / PIXTA(ピクスタ)

「一発屋」という人生

 冷静に考えると“一発”でもヒットを飛ばしているということは、宝くじに当たると同等の幸運であり、更にその幸運を作品の持つ力が引き寄せたとあれば偉業にほかならない。だが、どうも嘲笑の対象とされがちなのが「一発屋」である。  かく言う筆者自身も2005年にファミリーコンピュータ向け大ヒットゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の楽曲を利用した、『B-dash!』にてスマッシュヒットを飛ばした経験を持つ「一発屋」の1人だ。  筆者の場合は幸運が幸運と重なり、さらなる幸運を呼び寄せたという稀な事例でもあるため、実力の部分が影響を及ぼしたヒットでないことを自認している。  そのため今では「一発屋」を自虐的な名刺代わりとして使わせてもらっている程度だ。  そんな耳慣れた「一発屋」という言葉に、差し押さえ・不動産執行の現場で出会うという事案もあった――。 「うちの旦那、一発屋なんですよ」

一発当てた後は、工場でバイト

 まだ10年も経っていない新興住宅地、日当たりもよく、女性受けのよさそうな可愛らしい建売住宅でそんな話を聞いている。  「それまではコツコツ真面目に描いてたんですけど、一発当たってからは調子に乗って全然描かなくなっちゃって」  債務者である“旦那”はどうやら漫画家らしい。  “一発”当てたまでは良かったが次作制作へのハードルを自身で上げてしまったためか、筆は進まずそこからの収入は細る一方。  漫画やイラストに対して中途半端な関わり方も出来なくなってしまった債務者は、細々と工場のバイトで稼いだカネを家計の足しにしていたようだが、それでも住宅ローン返済が追いつかなくなり今回の事態に至っている。  数ヶ月前より現実逃避のような別居状態がスタート、この日の執行にも立ち会うことはなかった。  債務者宅はどこもキレイに整頓されており掃除も行き届いている。  かつては債務者の作業場として使われていたのであろう部屋には、彼の手掛けたヒット作がテレビアニメ化された際に撮られたとみられるスタッフ集合写真、テレビドラマ化の際に出演者や関係者から送られたとみられる寄せ書きなどが誇らしげに飾られていた。  この部屋にも整頓や清掃は行き届いており、“作業場”との言葉がふさわしくないほどに“作業”の痕跡は見られなかった――。
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突然訪れた身に余る幸運は、やがて不幸へと着地する
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