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 インターネットに意見や評価などを投稿した人が対価を受け取った場合は、投稿の中で告知する。受け手が情報を的確に判断できるよう、その基本を徹底していく必要がある。

 京都市がイベントや施策をPRするため吉本興業と業務委託契約を結び、同社に所属する京都市出身の兄弟漫才コンビらがツイッターで発信、報酬を得ていたことが「ステルス(見えない)マーケティングではないか」と波紋を呼んだ。

 この漫才コンビの場合、ふるさと納税に関して「京都を愛する人なら誰でも、京都を応援できるんやって!」とツイートするなど計4回つぶやき、市は吉本側に100万円を支払った。

 一連の投稿には「#京都市盛り上げ隊」「#京都市ふるさと納税」などのハッシュタグ(検索ワード)がついている。しかし市が対価を支払ったことは明記されず、専門家らが「ステマにあたる」と問題視した。

 吉本が所属タレントで作った「京都市盛り上げ隊」は昨年夏に京都市長を訪問し、その様子はメディアで報じられた。ツイートにハッシュタグもあるため、吉本、京都市とも「ステマではない」との立場だ。

 ただ、ツイートを見た人が皆、経緯を承知し、ハッシュタグからPRだと推測するとは限らない。漫才コンビが郷土愛から自発的に投稿したと受けとめた人もいるだろう。

 SNSを巡ってはこれまでも、飲食店検索サイトでの口コミ投稿や競売サイトを推奨するブログ記事が「やらせ」だったことが判明するなど、たびたびステマが問題になってきた。このためネット広告の業界団体は指針を定め、広告であることと広告主を明示するよう求めている。別の団体は金銭や物品、サービスの提供を受けたと明記するよう呼びかける。

 吉本は、芸能人やスポーツ選手ら影響力の大きい「インフルエンサー」を多く抱え、SNSでのPR活動に積極的だ。業務としての発信ならその事実をわかりやすく示すよう、所属タレントを指導すべき立場にある。

 スポンサーだった京都市も、公費を投じる行政としての責任を自覚すべきだ。公的な施策のPRでも、企業が商品やサービスを宣伝する場合と同様に、誤認を防ぐ配慮は欠かせない。

 海外の事例にならってステマへの法規制を求める声もあるが、表現の自由との関係など詰めるべき点は少なくない。

 誰もが気軽に思いを発信できるネットの利点をどう生かしていくか。誤解されずわかりやすいPRに努めると表明した吉本と京都市だけでなく、社会全体で考え、実践していきたい。

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