11月5日午前10時「急上昇ワード」初日のネタ決め
さっそく取材班9人で今日の深掘りワードを決める“トレンド会議”。
4日正午からのトレンドワードの中から話題にあがったのは、「少年の心」「電柱の地中化」「ZEPP金沢」。それぞれのツイートを調べた結果、<元の発言の真偽はどうなのか?><既にNHKの記事になっている>などの理由から、議論が進まない。そんな中、トレンドワードでよく見かけるハッシュタグが付いたいくつかのワードが目についた…
9位「#結婚タイムリミットは」
6位「#神からのあなたへの不満」
これらは、「診断メーカー」という診断サイトの「お題」だった。
ネット上で自分の名前を入れると、「あなたは@@です」という回答が返ってくるというもので、月間およそ1千万人が訪れる人気サイトらしい。
きょうのトレンドで上がっている「結婚タイムリミット」を調べてみる。
31歳の独身男性ディレクターは、「43歳で結婚しなければ一生結婚できない」と出た。
「なんかリアル…」とみなが不思議と納得して盛り上がる。
50代の女性プロデューサーは「確かにトレンドでよく見るが、一体何なのかよく知らない。でもトレンドワードを追う企画の初日ならではのテーマではないか?」
サイトの説明文には、「診断結果は入力された名前に応じてランダムに結果を割り当てる仕組みですので神社で引くおみくじのようなものです」と載っている。
えっ!?おみくじ??
おみくじに誰よりも反応したのが、私、ディレクターの山浦。
家族で旅行に行っても神社仏閣に立ち寄り「番組成就」をお祈りする。そんな自分にとって、おみくじは日々の迷いを照らしてくれる「心のよりどころ」だ。
午前11時、総合ランキング上位の作者に取材開始
「御朱印巡り」や「パワースポット」など、スピリチュアルなテーマは、ネット上でもしばしば話題になる。論理では説明できない何かに大いなる啓示を受けたくなるのは、とても共感できる。
仕事、家事、育児にめまぐるしく移り変わる日々の中で、SNSが、現代人が「天啓」を受ける場になっているのかもしれない。
そんな思いもよぎり、直接ダイレクトメッセージを送って取材を開始した。
すると早速、「#あなたの結婚タイムリミットは?」「#神からのあなたへの不満」というお題を作った作者から、メッセージをやりとりしてもらえることになった。
北日本在住の20代。これまで400近いお題を制作し、その診断を利用した人は延べ4300万人にも上る。
Q 1つのお題につき、何種類の答えを作るのですか?
「少ないときは15種類、多いときは1000種類以上です」
!!!!!!1000種類!!!!!!
Q 昨日のタイミングでなぜ「結婚のタイムリミットは?」というお題を作られたのですか?
「単純に「思い付き」です。自分が「流行らせたい」と思ったものを、暇なときに娯楽感覚で考えています。
ちょっと難しいですが、「この診断面白い」とか「予想外すぎて笑う」とかというツイートを見ると楽しく感じますね。 「受けそうなネタ」に関してはすごく難しいのですが、例えば「あなたは○○です」というような「自己分析」が特に受けるネタですね」
1日のうち、お題の制作に「30分から3時間」を費やしているらしい。
Q ちなみにこういった作品をご投稿されるとなにか収入とか報酬があるものなのでしょうか?
「いや、特に無いですね。できれば欲しいくらいです。自分としては無報酬でも“作れる場所が提供されている”のならそれだけで十分だと考えています」
Q 今回の「結婚」のお題が24時間経ってもまだトレンド入りしているのですが、ご自身でどうしてだと分析されますか?
「とてもありがたいです。「結婚」のお題がトレンドにあり続けているのは、おそらくTwitterの人たちが「恋愛」に貪欲だからだと思います」
午後2時。対面もしくは電話で直接話せる人はいないかと探していると、
人気お題職人9位にランキングしている「中中(なかじゅう)さん」と直接電話をすることができた。福岡在住の59歳。いま仕事はしていないらしい。
中中さんはじめ、お題の作者にとって1つずつのお題は作品。
代表作は「あなたの『戦闘能力』グラフ」だという。
診断結果に出る、戦闘力チャートは1枚ごとに画像にして、60通りを作った力作だ。
中中さんが診断サイトのお題を作りはじめたのは、文具の卸業に勤めていたおよそ10年前。ツイッターがはやり始めた頃だ。
最初は「いつでも誰でも簡単に作れる手軽さ」から試しに作っていたと言うが、今では、診断サイトのお題作りは「日常に、なくてはならないものになっている」と話した。
「働いているころは、昼にネタを考えておいて、夜に作成する日常でした」
これまでに1400を越える診断のお題を作り、その診断を利用した人の累計は、およそ4000万人!!もう、誰もが認める“診断サイトのお題職人”なのだが、現在もテレビや新聞などでふとした会話をネタ元に、お題を作り続ける。
「なんていうかな、パズルみたいなもんなんですね。パズル好きは完成したからって満足しないで、次から次へと高度なものを作るでしょう。今となっては遊びに行ったりすることもできないですし、自分にとっては大切な娯楽の1つですね」
中中さんは、2年前に会社を早期退職した。決断のきっかけとなったのは、突然の脳出血で、右半身が不随となった妻を介護するためだった。
妻は言語障害があり、中中さんの話を理解することはできるが、自分で話をすることはできないのだという。
「妻は日中デイサービスに通っているのですが、それでも介護生活は想像以上に大変でした。無駄な時間がないって言うか…」
日中は一人で家事をこなし、夜は数時間おきに起きてトイレへ連れていく。
そんな毎日の中で「診断サイト」は、中中さんにとって「おみくじ」や「占い」なのだろうか????
「おみくじっていえば、おみくじかもしれませんが、僕にとって言葉遊びなんですよ」
例えば、「あなたを天使系か悪魔系かに分類すると!?」というお題に用意した診断結果は全部で244種類にのぼる。
「元々好きなキャンディーズの“やさしい悪魔”からヒントをもらって作りました。こういう天使と悪魔に似合うような、言葉を考えて当てはめるのが自分にとってのパズルなんです。」
こだわりは、「堕天使」のようなみんなが知っている言葉を外すこと。
「この自分の作ったパズルを基に、みんなが結果を見て、勝手に解釈する。それがこの診断ツールの面白さじゃないでしょうか」。
確かに、私が肌身離さず持っているおみくじにも、冒頭に「歌」が書かれていて、その歌をどう解釈するのかが、おみくじの醍醐味だったりする。
「おみくじ」だけでなく、「タロット占い」もカードの絵柄の解釈で判断する。
中中さんに診断を作る上で重要ポイントを伺うと「喜ぶ言葉を書き連ねること」だという。
「以前、おみくじでいう「凶」のような厳しい(あまり良くない)結果を多くしたお題はあまり人気がなかった」
中中さんにとって一番の楽しみは「診断結果を見たコメント」。
「自分をいじってもらえるような結果が、若者には受けるようだ。」
誰とも気軽につながる為のコミュニケーションツール?
渋谷で診断サイトを使ったことがあるという高校生(16)から話を聞くことが出来た。
「診断の結果がツイッターで数多く投稿されているので、自分の診断結果と似た人を見つけて、相性がいいとかわかるのが嬉しい」
診断結果をお互いに見比べて、ツイートのネタにするのだそうだ。
他の職人さん達にも聞くことができた。
今回、ダイレクトメッセージなどで合計13人の“診断サイトのお題職人”から話を聞くことができた。「診断サイトとは何か」と聞いて印象的だった言葉を、いくつか箇条書きにすると。
・自分では言い出しにくいことも、診断サイトの言葉を借りれば、言うことができる
(ずぅんさん・東北在住・会社員・30代)
・フォローし合って長くなると 改めて自己紹介をするのは気恥ずかしいこともありますので。診断サイトを通して自分をアピールしてもらったり、会話のネタになったりしてフォロワーさんと交流になっているのをみるとすごく嬉しくなります!
(九州在住・医療関係・30代)
・つぶやくことがないから、診断サイトをやる。同じテレビを見ているような共通の話題、そのカジュアル版。政治的思想とか主張がないのが魅力。
(すいどうばしさん・東京都在住・元植木屋・40代前半・男性)
・「はやっていることに参加をしたり、コミュニケーションを取れると社会とのつながりを確認して得られる安堵感」
(バンコク在住・会社員・30代・男性)
サイトの運営はどうやって成り立っている?
このサイトの運営者は一体どのような人なのか?どのようにサイトの運営を成り立たせているのか。私たちは「診断メーカー」の運営元に、ツイッターのダイレクトメッセージを通じて取材を申し込んだが、5日午後10時までに返事はもらえなかった。「診断メーカー」の商標を登録した会社の住所地も訪ねてみたが、オフィスがあるかどうかは分からず、5日の段階では接触することはできなかった。
みなさんは、どんな“深掘り”に興味がある?
今回のトレンドワードから“うっすら見えてきた”現代の課題は、「ツイッターで、見知らぬ誰かに話しかけたい」という人々の声なき声だった。
では、この課題をどのように深掘りをすると、私たちは見知らぬ社会を知ることができるのだろうか。そして今日の社会課題を解決できるのだろうか。
例えば…
・診断サイトの歴史的変遷や海外事情を深掘りしてみると???
・コミュニケーションツールの更なる可能性・危険性を深掘り???
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みなさんからいただいたご意見をもとに、11月13日(水)放送予定のクローズアップ現代+「ネット急上昇現場行ってみた。」で取り上げるテーマを決定します。
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