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Webサイトの閲覧情報を記録する「クッキー」の規制を公正取引委員会が検討しているという報道が話題になっています。クッキーとは、Webブラウザー内部でサイトを訪問した履歴を残す仕組みのことです。Webページを見ていたら、1度調べた商品の広告が何度も出てきて気味が悪くなった、という経験がある人は多いはず。
簡単に仕組みを説明しましょう。例えば、ある化粧品のWebサイトを開いたとします。その化粧品サイトは、閲覧者のWebブラウザーにクッキーを残します。次に、別のニュースサイトを開いたとしますと、ニュースサイトの広告欄はWebブラウザー内のクッキーを参照します。化粧品サイトを訪れたことがある旨をアドネットワークのサーバーに通知し、その後サーバーはその化粧品の広告をその広告欄に配信するのです。
欧州では一般データ保護規則(GDPR)が2018年5月に施行となり、個人情報に対する厳格な管理が始まりました。日本でも、政府が20年に個人情報保護法の改正を予定しているほか、19年8月には公正取引委員会はGAFAに代表される巨大IT企業による優越的地位を生かしたデータ取得の乱用についてのガイドラインを公表しています。国内でクッキーに対する規制が広がるかは現時点で不明ですが、もしそうなればネット広告業界に大きな影響を与えることは間違いありません。
個人レベルでも、行き過ぎたネット広告を避ける動きが広がっています。iPhoneが搭載するWebブラウザーのSafariは、クッキーの働きを一部制限する「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」という仕組みを備えています。Webブラウザーの広告をブロックするアプリは、アプリ配信サービスのランキング上位に位置し続けています。
先日、就職情報サイト「リクナビ」の運営元が、利用者である学生の内定辞退率を企業に販売していた事実が大きな問題になりました。ネット経由で集めた個人情報について、価値を正しく理解しているのかという点が改めて企業の側に問われています。とはいえ、今やあらゆる業界がアドテクノロジーやデジタルマーケティングに無縁ではいられません。ネット広告の基礎知識を身に付ければ、今後の変化にも対応しやすくなるはず。初心者はもちろん、改めて復習したいという方も、アドテク基礎講座をぜひご活用ください。(松元 英樹)