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「『マインクラフト』をプレイしながら…」ゲーマー向けポルノ動画を自主制作する海外カップルはいったい何を考えているのか【インタビュー】

『マインクラフト』プレイ動画とポルノを融合させた意図とは……?海外動画サイトで活動するハードコアゲーマーにインタビュー。

連載・特集 インタビュー
!注意!性的な表現やわいせつなコンテンツが苦手な方、18歳未満の方は閲覧をご遠慮下さい。


英語圏で言われる「NSFW」というネットスラングをご存知でしょうか。これは「Not Safe For Work」の略で、「職場での閲覧には注意」を意味するフレーズです。

しかし、グロテスクな描写やお色気シーンも少なくない海外ゲームの情報を調べていると、「敵の身体を手でちぎって無理やり口に突っ込んでから爆死させる」「娼館でいやらしいサービスを受ける」「盗んだクルマでストリップクラブに向かう」……といったような動画を目にすることも頻繁に起こりますよね。なので、私が海外サイトを巡回しているときに『マインクラフト』のレッドストーン回路のしくみを解説しながら淡々とセックスをするカップルの自主制作ポルノ動画を見つけてしまったことも、ごく自然なことなのです。

Game*Spark編集部は、そんな過激でニッチな動画を海外ポルノサイト「Pornhub」にアップロードするカップル「Eelet」にインタビュー。ハードコアなアイデアを生み出した男性・Jamesさんに、「なぜ『マイクラ』を遊びながらセックスをしようと思ったのか」「どうして友達が『リーグ・オブ・レジェンド』を遊んでいる隣でオーラルセックスをできたのか」など、次々湧き上がる疑問に答えていただきました。


ご多分に漏れず本稿も「NSFW」であるため、職場や学校などでの閲覧にはご配慮いただけるようお願いします。裸体や露出度の高いイメージを数枚掲載していますが、わいせつなイメージや動画ページへの直接的なリンクは含みません。また、過激な行為を連想させる記述があることにもご留意ください。



――Jamesさん、よろしくお願いします。早速ですが、なぜPCゲームを遊びながらセックスをしている動画を撮影しようと思ったのか、詳しく聞かせてください。

「Eelet」としてポルノ動画を制作・公開しているJamesさん

James:ゲーマーの間には、「セックス」と「ビデオゲーム」を日常的な感覚で組み合わせるための手段がないのです。それは皆にとって共通の考え方で、ある意味では「ミーム」と言えるかもしれません。一般的に、「ゲーマーである」ということと「現実の世界でセックスをする」ということは、完全に切り離されたものと認識されているのです。

そうした考えを証明するために撮影したつもりではなかったのですが、私はRedditとInstagramを見ているうちにこのテーマに気付きました。“『マインクラフト』のレッドストーン回路解説動画”という形で「ゲーム」と「セックス」がシームレスに混ざり合うことにより、どのような「精神的な分断」が起きるのか興味を持ったのです。人気が出るかどうか想像できなかったのですが、私にとってはそれはそれ。別の問題でした。

――「Eelet」はカップルで活動されるときの名義とのことですが、『マイクラ』の動画はどちらが思いついたアイデアなのでしょう?

同じく「Eelet」として活動するZylaさん

James:ええ、「Eelet」は私とガールフレンドのZylaのペア名義です。「Eelet」という言葉自体に特に深い意味はなく、少なくとも北米では舌を転がすだけの音だったりします。音の響きで選んでました。『マイクラ』の動画は私が考えたアイデアですね。彼女も嫌がらずに乗ってくれたし、もともと昔から好きなゲームだったので録るのも簡単でした。

――嫌がることなく受け入れてくれたんですか……さすがに気心知れた仲ですね。次は、「Pornhub」でのご活動について教えてください。いくつかの動画を拝見しましたが、Jamesさん達の動画を簡単に説明すると、どんなジャンルにあたるのでしょう。

James:私達は「ソフトコアBDSM」な動画を投稿しています。「BDSM」とは、「Bondage(束縛)」「Domination(支配)」「Submission(支配)」「Masochism(マゾヒズム)」の頭文字(※諸説あり)です。とは言え、そういったスローガンを掲げているわけでなく、単に自称しているだけなんですが。

BDSMでは「服従者」にロープや拘束具を使ったりしますし、他にもいろいろな方法で痛みを与えていきます。ロウソクやムチなんかは特に有名ですよね。一部の人達にとっては、それとセックスを組み合わせることが非常に楽しくて、とても興奮するのです。


私達の動画にはいわゆる「正統派」なBDSM要素がたくさんありますが、それでもかなりフレンドリーなほうなのです。行為の最中にもお互いに敬意を持っています。行為が過激になったり、なんらかの理由で一時中断するときのために、声に出して伝えやすい「セーフワード」を設けたりもしています。また、「カジュアルなセックス」を要素として取り入れることもあります。

――なるほど。たしかにゲームを遊びながらは“カジュアル”かもしれません……。ちなみに、JamesさんとZylaさんのどちらが“S”でどちらが“M”なのでしょう。

James:私はサディズム側の人間です。つまり、私にとってのS/O(※)はマゾヒストということになります。

※“Significant Other”の略で、「大切な人」や「付き合っている人」を指す。ここでは“Boyfriend”や“Girlfriend”と少し異なり、性別を問わない表現として使っている。

――JamesさんはなぜBDSMに惹かれるのでしょうか。

James:実際のところ、説明するためのそれらしい理由はありません。ただ「普通のセックスとは違う」と思っています。いろいろと大変なこともありますが、BDSMの裏に秘められたアイデアは私にとって愛すべきものなのです。

――『マイクラ』の動画についての質問です。レッドストーン回路の解説動画では何を制作されていたのですか? 映像で確認させてもらいましたが、改めて詳しく知りたいです。

James:2x2のピストンドアと、同じサイズのスライドドア、それとひとつのピストンで構成される自動ナイトランプなどです。ワールドデータもあるので送りますよ。

PC版『マインクラフト』のワールドデータをいただき、行為中に建築されたモノに実際に触れてみました。
砂漠に広がるのは工夫の跡が見えるレッドストーン装置、そして異常な数のロバ……。

――ありがとうございます! 現行バージョンでも無事に動きました。

James:それは良かったです。ものすごい数のロバと半壊したレッドストーン装置があったと思いますが、それは気にしないでください!

――動画内の装置に触ることができて、嬉しくも不思議な気持ちになりました。そういえば、『リーグ・オブ・レジェンド』の動画も投稿されていましたよね。『LoL』をプレイしている男友達のすぐ横でイチャイチャ……という。あの男性とはどういった知り合いなのですか? 間違いなく良いお友達なんだろうと思いますが。


James:彼とは16歳のときに高校で知り合った仲です。『LoL』の動画のアイデアを持ちかけたときは明るく気さくに応じてくれました。「手伝ってやるよ、絶対ウケるだろうし」って。

――やっぱり良いお友達ですね! 『マイクラ』や『LoL』の動画には、視聴者からどのような感想が寄せられていましたか? 次の動画のリクエストなどは届いているのでしょうか。

動画のファンから届いたという『マイクラ』スクリーンショット。ポルノ動画のワンシーンを街の近くにダイナミックに描いています

James:観てくださっている方々のコメントを見る限り、私達の動画はエンターテインメントとしての目的を果たせているように思えます。リクエストも来てますけど、次のアイデアは決まっていません。たぶん、撮影するときにハマっているゲームになると思います!

――ちなみに、今はどんなゲームにハマってますか?

James:『MORDHAU』に夢中です! 中世が舞台の対戦ゲームですね。

――いいですね。日本のユーザーやYouTuberの間でも人気のあるゲームです。やはりZylaさんもゲーマーなのでしょうか? 二人でゲームを遊ぶこともあったり?

James:もちろん彼女もゲーマーですよ!『アリス マッドネス リターンズ』が大好きです。

――そうなんですね! 私がJamesさん達の動画を知ったのはPornhubの記事がきっかけでした。『ボーダーランズ3』の動画をPornhubで探す人が急増していた……という調査結果の報告です。『フォートナイト』も人気だそうですが、ライバル視することはありますか?

James:ときおり少しだけ嫉妬することもありますが、乗り越えてやりたいと思っていますよ。私達に似たジャンルに挑戦する人も、他にあまりいないですし。

――それでは最後の質問です。JamesさんとZylaさん、「Eelet」としての活動における目標や、これから挑戦したいことについて聞かせてください。

James:これからもポルノ動画を作り続けていきたいです。もちろん、生活のためというところもありますけど。まずは、わずかなお金を稼ぐための楽しげなプラットフォームというところから、そのうち一部のユーザーやポルノ業界に対して、真に影響を与えるものに成長したいと思っています。

――ありがとうございました! センシティブな質問にも答えていただき、感謝します。
《キーボード打海》
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 16:08:31
    人はエロいことが絡むと、物事を覚えるスピードが格段にアップするからな。
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 16:06:44
    「ご多分に漏れず本稿も・・・」
    注意喚起が少し遅くないですかねぇ???
    0 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 14:54:43
    ???
    3 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 13:29:16
    ゲーム会社から訴えられそう
    4 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 13:02:02
    赤髪のお姉さんこっち向いて
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 12:59:44
    流石Pornhub(とゲムスパ)!俺達にできない事を平然とやってのける!
    …ってよく考えたら去年だったかNutakuのツイッターでゲームしながらセ〇クスするコンテストがあったな
    その時のpornhubやたら賑やかだったのは覚えてる
    6 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 12:50:50
    ゲームしながら気持ちよくなれて多少お金にもなるって、理想やん
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 12:15:57
    まあいろいろ立ったり生産的だしマイクラとは極めて密接な関係があるからな
    3 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 12:14:54
    このインタビューはゲムスパ史上最大の快挙と言える
    62 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-06 12:13:14
    さすがゲムスパ
    俺達にできない事を平然とやってのける
    34 Good
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7分間の映像に18ヶ月を費やす…Blizzard制作チームに訊いた「シネマティック」の作り方【BlizzCon2019】

ファンが手に汗握る「シネマティック映像」の制作についてインタビュー。ストーリーとゲームプレイを期待させるトレイラーは、どのように生み出されているのでしょうか。

連載・特集 インタビュー

11月2日から開催されたBlizzard Entertainmentの大型ファンイベント「BlizzCon 2019」。初日のオープニングセレモニーでは、『ディアブロ』と『オーバーウォッチ』の新展開が同時に発表され、『ハースストーン』と『World of Warcraft』の新しい拡張コンテンツもお披露目となりました。

そんなBlizzard Entertainmentの「発表」とこだわり抜かれたシネマティック映像は切っても切り離せない関係です。新たなゲームプレイや物語を期待させる映像たちは、これまでもイベント現地に集まる大勢のファンやオンライン上の視聴者の心を熱くさせてきました。


Game*Spark編集部は、そんな映画顔負けのトレイラー映像を制作するBlizzard Entertainmentの「Story and Franchise Development(以下、SFD)」チームにインタビューを実施。エグゼクティブバイスプレジデントのリディア・ボッテゴニ氏(写真右)とバイスプレジデントのジェフ・チェンバレン氏(写真左)に、シネマティック映像やストーリー関連コンテンツの制作秘話を伺いました。



――お二人はSFDの中でどんなお仕事をされているのでしょうか。

ボッテゴニ氏:私はBlizzardで働き始めて3年ほどで、以前は長編アニメーション映画のプロデュースをしていました。その過去を生かした作業を担当しています。Blizzardで最初に関わった作品は『オーバーウォッチ』のソンブラのシネマティック映像です。3年ちょっとの間ですが、とてもダイナミックでエキサイティングなことをやってきていますよ。ジェフとは大違いです。

シャンバーラン氏:私の仕事はエキサイティングではないですから(笑)。

ボッテゴニ氏:そういう意味で言ったわけじゃないです(笑)。ジェフはBlizzardで働き始めて、もうかなり長いんですよ。

シャンバーラン氏:もうすぐ勤続21年です!入社以来、ほとんどすべてのシネマティックに関わってきたと言えると思います。最初に携わったタイトルは『Diablo II』で、それ以来ずっとBlizzardのシネマティック制作部に在籍しています。シネマティック制作部は、サウンド/オーディオ部門やビデオ部門などから構成されるもっと大きな部署の一部になりました。

――BlizzConで発表したシネマティック映像は、どのように制作されたのでしょうか?いつごろから制作を開始したのでしょう。

ボッテゴニ氏:制作開始の時期は、映像の長さによって異なります。例えば、9分間におよぶシネマティックは5分間のものより、ずっと制作に時間がかかります。ゲームプレイトレイラーなら2分間だけのものもありますが、登場するキャラクターや内容の複雑さも制作時間に影響します。

例えば『オーバーウォッチ』のアナウンストレイラーには、重要キャラクターがたくさん登場したこともあって、かなり時間がかかりました。たしかプロダクションには2年ほど。通常、大きなアナウンスメントトレイラーには18ヶ月といったところでしょうか。ちなみに、もう次のBlizzConでお見せするためのシネマティック映像の制作に取り掛かっていますよ。

――『オーバーウォッチ 2』のシネマティック映像の制作には、何人のスタッフが携わったのでしょうか?


ボッテゴニ氏:複数のプロジェクトが同時に進行していて、脚本からローカライズまで様々なチームが同時に取り組んでいるので、はっきりとした数は説明しにくいです。ライターチームや、ディレクター、サウンド/オーディオチームなどが、様々なプロジェクトのそれぞれの専門分野に取り組んでいます。作品の複雑さによって必要な人員数も変わります。『オーバーウォッチ』のトレイラーにはより多くの人が関わりましたし、『ハースストーン』の2.5Dの映像にはそれほど多くの人員を要しませんでした。

――Blizzard社外のメンバーと映像を共同制作する際には、どのように取り掛かるのですか?

シャンバーラン氏:プロジェクトによって異なりますが、私達のチームでは、特にコミック制作において社外アーティストに作業を依頼することが多くあります。まずはSFDチームで物語の柱……つまりコミックの中でどんなことが起こってほしいのかを、外部のコミック担当ライターに伝えます。そうして、熟練した専門家の手によってコミックの物語を仕上げてもらいます。コミックで描かれる絵についても同様です。

アニメーションにおいては、『オーバーウォッチ』のドゥームフィストのオリジン・ストーリーを例として説明しましょう。このときは、社内で制作したラフアニメーションを外部のアニメーションスタジオに送り、残りの部分を任せていました。ものによっては外部アーティストにかなりの裁量を与えることもありますし、社内のチームから具体的な指示を出すこともあります。

――近年ではCGによる表現力が進化し、シネマティック映像の印象がゲームの中で重要な要素になることもあります。映像から得られるイメージに対し、ゲーム開発自体が期待通りに進まなかった場合は、どうされますか?

シャンバーラン氏:そんなことは今まで一度もありませんよ(笑)。私たちの部署は、開発チームと非常に近い関係にあり、そもそも二つの完全に分かれたグループだと考えていません。SFDの中でストーリーがなかなか思いつかなかったりしたら、開発チームも一緒に手伝ってくれます。とはいえ、今後どちらかのチームに問題が発生したせいで、いずれかの作業が滞るといったような事態にならないよう、一丸となって制作にあたりたいですね。

――『ディアブロ IV』のシネマティック映像についてお聞かせください。前作とは大きく雰囲気が異なる印象でしたが、どのような要素を取り入れて“ホラー”らしさを作り上げていこうと考えていましたか。

シャンバーラン氏:私たちの仕事は、シネマティック映像を使って、視聴者に意図通りの感情を抱いてもらうことです。今回の作品のために、カメラ回しや照明使いなど、視聴者の感情を呼び起こすためにどんな手法を採用しているのか、ホラー映画を参考にしながら研究しました。『ディアブロ IV』のシネマティック映像を観た方たちから、こちらが意図したとおりの感想を聞けて、これまで私たちが同作に注ぎ込んできた努力が報われた思いです。

――『Diablo II』のように初めから終わりまで完結したタイプのゲームと、はっきりとしたエンディングが存在しない、継続した運営型タイトルのゲームでは、ストーリーへの取り組み方はどのように変わりましたか?

シャンバーラン氏:いい質問ですね。あまり考えたことはなかったです。Blizzardでは今も両方のタイプのゲーム開発を続けていますが、たとえ完結しなくとも、『WoW』の拡張用のシネマティックなど、ゲームにおけるストーリーの大きな流れを形成するためのシネマティックの制作をしています。

また、開発が継続されるにつれて生まれるシネマティックもあります。『オーバーウォッチ』が良い例ですね。『オーバーウォッチ』の場合は、短編アニメーションではエピソードが完結しますが、コミックや短編小説ではストーリーの一部分を見せる形を取っています。BlizzCon2019でお見せした映像は、ゲームに関する情報を紹介するものです。このように、様々な形で大きな物語を補完するストーリーを作っていくことを、今のところは目指しています。その点に関しては今後多少変化することもあるかと思いますが、大きく変わることはないでしょう。すでに変わったことと言えば、以前はシネマティックのみだったのが、今はストーリーを語る手段が増えたことですね。例えばコミックや短編小説など。

――ストーリーを作っていく上で、開発チームとはどのように協力して作業しているのですか?いつ、どのようなシネマティック映像を作ろうといった決定権は誰にあるのでしょうか?

ボッテゴニ氏:驚かれるかもしれませんが、各フランチャイズにクリエイティブディレクターが存在している訳ではありません。同じように、クリエイティブライターやエディターも、必ず各チームにいるわけではないのです。いつも私が言っていることですが、各ゲームそのものに個性があるように、各チームにも個性があります。アーティスト寄りのディレクターもいれば、ライター寄りのディレクターもいます。私たちの仕事は、そんな彼らをサポートすることです。

はっきりとしたイメージを持ったディレクターが「こんなシネマティックを作ってほしい」と具体的にサポートを求めてきたとしたら、その要望に副うよう制作に取り掛かりますし、「開発チームのライターをSFDチームに寄こすので、うちのライターと一緒に制作に取り組んでほしい。ただし主導権はSFDに委ねたい」と求められても、その希望に合わせます。ライティングだけではなくビジュアルの発展という点において、ゲーム開発と一緒になって問題解決に当たるというのはあまり一般的ではないかと思いますが、まさに『オーバーウォッチ 2』のトレイラーのように“増援が来た!”と、みんなで力を合わせて作業します。

シャンバーラン氏:後半の質問についても同様で、開発から具体的に「こんなシネマティックが欲しいんだけど」とアプローチがあることもあれば、私たちのほうから思いついたアイデアを提案することもあります。つまるところ、アイデアがどこから出てくるかは、みんながそのアイデアをよしとするのであれば、あまり重要ではありません。

ボッテゴニ氏:また、年に一度、ゲームプロデューサーたちと顔を合わせて話し合う場を持ち、長期的な戦略や制作期間の長いシネマティック映像、今後の拡張コンテンツの予定などについて話し合います。そのときに、私たちからは「これくらいの時期にシネマティックを公開したい、アナウンスメントを出したい」といったことを提案します。そういったやりたいことをすべてマッピングしていくと、そのうち40%程度しか実現できそうにないことに気付きます。ですので、そこから優先度をつけて削っていくことになります。そういったことを、一年を通してプロデューサー陣と協議しながら決めています。

――BlizzCon2019で公開されたシネマティックの中では、どのプロジェクトが一番大変でしたか?


ボッテゴニ氏:プロデューサーとしての観点から言うと、『ディアブロ IV』ですね。理由は、『オーバーウォッチ』や『WoW』、『ハースストーン』と違い、この作品は初披露だったためです。その他の作品には、既になじみのある重要キャラクターたちが登場しますが、『ディアブロ IV』に関しては今回が初めてなので、イメージを具体化する必要がありました。ゲームデザインという点でも、新しいメンバーが入ってきたり、過去のフランチャイズにしばらく触れていなかったということもあり、プロデューサーとして未知の領域が多くありました。

シャンバーラン氏:クリエイティブな部分で話すと、私も『ディアブロ IV』が一番大変だったかと思います。アートの面でもやはり新しい要素が多くありました。同時に、『オーバーウォッチ』も挑戦でしたね。ヒーローたちが集まるごとに、視聴者のみなさんに喜んでもらいたかった。その意図を形にするのが、当初考えていたよりも実際にはとても難しかったです。アニメーションの編集やサウンド、音楽、すべてに特に気を付ける必要がありました。

――『オーバーウォッチ』のように、『ディアブロ IV』でも短編小説やコミックなど、シネマティック以外でストーリーテリングのためのプロジェクトを展開する予定はありますか?

シャンバーラン氏:将来のリリースに関する具体的な話はできませんが、他のタイトル同様、『ディアブロ IV』についてもどんなストーリーをどのように語っていくか、考えたり、開発に話をしたりはしています。

――以前は非現実的な設定やキャラクターが多く登場するゲームが多かったのに対し、『オーバーウォッチ』では現実に近い世界が舞台になっています。ストーリーを語る上で、違いはありますか?

シャンバーラン氏: 個人的には『オーバーウォッチ』の世界観も非現実的であるとは思いますが、いずれにせよプロセスとしてはどちらもそれほど変わりません。とはいえ、『オーバーウォッチ』には実在する都市などが登場しますし、そうした事情がストーリーに若干影響を与えることもあるかもしれません。あったとしても最低限の制限がある程度です。今後は『オーバーウォッチ』の世界にトロントが追加されますが、トロントやカナダに関するストーリーはまだ語られていないので、今後考えなくてはならないですね。現実世界の都市を扱うという意味では、そういった点を考慮することもあります。

――Blizzardのパブリッシングは、地域ごとの文化に則したマーケティングを各地で展開していますが、Blizzardはアメリカの会社ですし、プロダクションのほとんどがアメリカで行われています。ローカライズが行われる際は、アメリカのSFDが一緒になって制作にあたるのでしょうか?

ボッテゴニ氏:Blizzardは、ローカライズチームとパブリッシングを世界中に配置しています。ローカライズというのはとても複雑な分野ですが、ローカライズについてはエキスパートである各地の専門チームに任せることにしています。

―― ジェフ・カプラン氏(Blizzard Entertainment VP)がオープニングセレモニーの冒頭で、『WoW』のシネマティックでモーションキャプチャー・アクターを演じたと冗談を言いましたが、実際に使ったことがあったのですか?

シャンバーラン氏: あれはジェフのジョークだと思います(笑)。これまで社内の開発の人間をモーションキャプチャー・アクターに採用したことはありませんよ。

――ボッテゴニ氏の長編アニメーション映画のプロデュースをされてきた経験は、Blizzardでの作品制作にどのような影響を与えましたか?

ボッテゴニ氏:これまでソニーやディズニー、ワーナー・ブラザースアニメーションなどで働いてきましたが、大きなアニメーションスタジオとなると、働き方はどこもよく似ています。現在はBlizzardの中に「ミニ・ピクサー」があるようなイメージです。脚本からデジタル処理、ミックス、ローカライズに至るまですべてを社内で完結することが可能です。そういう意味で、規模は小さくなりますが、Blizzardも先述のアニメーションスタジオとよく似ています。

ただし、大きな違いもあります。コンテンツの目的です。ハリウッドのスタジオで制作される長編アニメーションは、観客を映画館に呼び込み、観てもらうことが目的です。それに対し私たちの目的は、ゲームをプレイする人々に映像を観せて、時には特定の行動を促すためだったり、特定の感情を抱いてもらうことだったりします。今は違ったモチベーションを楽しんでしますよ。

――Netflixのようなプラットフォームと今後提携する計画はありますか?

ボッテゴニ氏:いろいろな方からそういった期待の声があるのは知っていますし、時にはそういった話もするのですが、今のところ私たちのチームはゲーム向けのストーリーに取り組むことに精一杯です。BlizzConに向けて、全員が全力以上を出して制作にあたっていました。多くの方がもっとBlizzardのアニメーションを観たいと思ってくださっているのも承知していますが、今回はこれについてお話しできることはありません。考えていることは考えています。

――『リーグ・オブ・レジェンド』のライアットゲームズから「Arcane」というアニメーション制作の発表がありましたが、Blizzardでもアニメシリーズを展開する予定はありますか。

ボッテゴニ氏:トレイラーを観ましたが、とてもかっこよかったですね。ライアットゲームズは本当にとても素晴らしいお仕事をされていると思います。ご質問の件ですが、これについても多くのご意見をいただきますし、たくさん考えたり、話し合ったりもしますが、やはり本日お話しできるようなことはありません。私たちが今一番に力を注ぐべきはゲーム内のコンテンツだからです。

――Blizzardが制作するアニメーションは毎回とても完成度が高く、多くの人が関心を持っています。そういった意味で現実的なアイデアかと思うのですが、今後Blizzardによる独立した長編アニメーションスタジオを設立する予定はありませんか。

ボッテゴニ氏: 6分から7分の映像を作るのにどれだけの時間をかけているかと思えば、あまり現実的とは思えませんね(笑)。私たちが作る映像は手作りなんです。映像を通してそれが伝わるといいのですが。

繰り返しになってしまいますが、多くの人がそのように考えてくださっていることは存じていますし、同じことを聞かれることが度々あります。本当に嬉しいことです。実現したら素晴らしいとは思いますし、考えたり、話し合ったりもしますが、今回は残念ながらこの件でお話しできることはありません。いつか実現したらいいなとは思いますけどね。

――本日はありがとうございました。

《Cameron Gilbert》
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 16:44:03
    リークみたいなのなければもっと驚いた
    楽しみが減っちゃった感がある
    1 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 8:15:38
    普通に映画クオリティだったからなぁ。凄まじいクオリティだった。
    そら18ヶ月かかるわ。
    ただ、補足情報として製作時間は初期準備に大分もってかれるから7分が30分だとしてもプラス2ヶ月とかで出来るけどね。
    6 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 7:37:33
    孔明「もっとほ」
    1 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 5:24:52
    テレビに7分のCM流した企業あるそうだな。凄いわ…
    5 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 5:11:14
    某FFとかとりあえずまず意識高いCGムービーばかり作ってる印象じゃない
    3 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 1:02:19
    Starcraftまではそこまで飛びぬけてる印象なかったけど
    broodwarから急にクオリティが上がって
    DIABLO2ではこのままCG映画作り始めるんじゃないかってレベルになってた
    8 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-04 0:25:59
    映像は作品として素晴らしい出来だと思うけど、数分のカットシーンに2年もかけてると思うと、普通のゲームなら絶対考えられないよなあ。
    意外と小さい規模で作ってるのかな。
    2 Good
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  • スパくんのお友達 2019-11-03 22:18:24
    グッと!地球便でやってたな
    日本人がいるんだよねこの映像チーム
    8 Good
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