スピン経済の歩き方:首里城の被害を拡大させたのは「安すぎる入場料」だと考える、これだけの理由 (1/6)

» 2019年11月05日 08時11分 公開
[窪田順生ITmedia]

 沖縄の「宝」である首里城が消失し、復元へ向けた支援の輪が全国で広がっているなかで、悲しみに打ちひしがれる沖縄の人々に追い打ちをかけるような悪質なデマがネットで流れている。

 この手の悲劇が起きるたび、「中韓の犯行ではないか」「いや、反日左翼の自作自演だ」なんて流言が飛び交うのは毎度のこととして、今回驚くのは、一部で「沖縄県が悪い」と言わんばかりの印象操作が行われていることだ。例えば、某ニュースサイトのコメント欄には、こんな感じの投稿がされて、数千を超える多くの支持を得ている。

 「これまで首里城の管理を国がしていて、場内でのイベントは原則禁止されていた。今年2月以降に管理が県に移って場内でイベントが解禁となった。その途端に今回のような火災が起きた」

沖縄の「宝」である首里城が消失し、復元へ向けた支援の輪が全国で広がっている(出典:ロイター)

 結論から申し上げると、これは真っ赤なウソだ。

 国が管理していたときから首里城ではフツーにイベントをやっている。正月には今回焼失した正殿の前で演奏や琉球王朝時代の儀式が再現される「新春の宴」が盛大に行われているし、毎年秋になると夜の9時まで正殿前の舞台で、琉球舞踏などが見られる「中秋の宴」というイベントが開催される。県に管理が移行してから「柔軟な利活用」を目指していたのは事実だが、この2月を境に首里城のイベント方針がガラリと変わったわけではないのだ。

 もちろん、もっか原因を調査中なので城内のイベント準備が関係ないとは断言できない。が、もしこれがイベント関係者の火の不始末だろうが、分電盤のショートのせいだろうが、ここまで甚大な被害を招いた「真犯人」は別にいる。

 それは「大人830円」という「安すぎる入場料」だ。

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