恒星が超新星爆発を起こすと、そのあとには中性子星やブラックホールが残されることがあります。今回、超新星爆発によって誕生したとみられる恒星質量ブラックホールのなかでも、最軽量級のブラックホールを発見したとする研究成果が発表されました。
■推定される質量は太陽の2.6~6.1倍
オハイオ州立大学のTodd Thompson氏をはじめとした研究チームが発見したのは、地球からおよそ1万光年離れたところにある恒星「2MASS J05215658+4359220」(以下「J05215658」)と連星を成しているとみられるブラックホールです。
観測によって求められたその質量は太陽のわずか3.3倍、誤差を含めると2.6~6.1倍の範囲におさまります。太陽の2~4倍の質量を持つ赤色巨星であるJ05215658は、このブラックホールを約83日の周期で公転しているとみられています。
研究チームによると、これまで質量が詳しく判明した恒星質量ブラックホールのうち、最小のものは太陽の5~6倍の重さを持っていました(これよりも軽いかもしれないブラックホールも見つかっています)。今回発見されたブラックホールは、その半分程度の質量しか持たない可能性が高いのです。
■中性子星とブラックホールの中間を埋める存在?
どちらも超新星爆発によって誕生すると考えられているブラックホールと中性子星、その境目となる質量がどれくらいなのかは、まだはっきりとした答えが得られていません。
今年の9月には、太陽のおよそ2.17倍の重さを持つ中性子星を発見したとする発表がありました。これは中性子星の上限と予想されている「太陽の2.5倍」という質量に近い、観測史上最も重い中性子星です。他の星との合体などによって上限の質量を超えた中性子星は自身の重力に耐えられず、潰れてブラックホールになると考えられています。
いっぽう、今回発見されたブラックホールの重さは最小で太陽の2.6倍しかなく、中性子星の上限とみられる質量にかなり近いことがわかります。
今回のブラックホールは、全天の4分の1をカバーするサーベイ観測プロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」の一環としてアパッチポイント天文台が実施した10万個に及ぶ恒星の観測データと、20基の天体望遠鏡で全天を観測しているネットワーク「ASAS-SN」の観測データを分析したことで発見に至りました。
「これまで知られていなかった低質量のブラックホールを特定できた」と語るThompson氏。同程度の質量を持つ軽い恒星質量ブラックホールがより多く見つかれば、ブラックホールや中性子星の性質をより深く理解することにつながるでしょう。
Image: Ohio State image by Jason Shults
Source: OSU
文/松村武宏
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