ラッサールの呪縛@佐藤優
デイリー新潮で、連合の神津会長と佐藤優さんの対談が載っています。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/10290555/?all=1
冒頭のあたりも、社会主義協会の先輩の峰崎直樹さんと意気投合したとか、神津さんの教養学科アジア科時代の卒論が宮崎滔天だったとか、関係者には面白いややトリビアな話が詰まっていますが、その辺はリンク先をそれぞれにじっくり読んでいただくこととして、今日的関心からするとやはり最後のあたりの消費税をめぐる論議が重要です。
佐藤 それでは、連合は消費増税なのか国債の発行なのか、どちらなんでしょう?
神津 私は国債だけを選択肢にすることはできないと思っています。これだけの借金の積み上がりを見ると、返済不能ということも大いにありうる。財政破綻で真っ先に悪影響を被るのは、私たち労働者であり、制度なら社会保障と教育です。労働組合の立場からすると、破綻の可能性を織り込んだ選択は取るべきじゃない。
佐藤 よくわかります。
神津 かたや消費税ですが、政策要請で「消費増税は予定通りやってください。ただし軽減税率はダメです」と要請しました。ところが消費増税賛成とだけ世の中にメッセージが伝わってしまい、連合に批判が寄せられました。消費税でなくてもいいんです。負担の構造がきちんと担保されるのなら別の税目で構わない。ブログなどでもそう発信したんですが、所得税の累進性はこれでいいのか、法人税も国際競争のために低くしているがこれが妥当なのか、あるいは金融取引の税でもこの税率でいいのか、などいろいろな議論が必要です。
佐藤 今は税率を低くして金融取引を奨励し、それでGDPをかさ上げしようとしていますからね。
神津 社会保障や教育を、どう財政的に担保していくのか。そのトータルの姿が与党も野党も描けていない。
佐藤 理念としては、高福祉高負担か、低福祉低負担の二つがある。でも中途半端にやっていると中負担低福祉みたいなことになってしまう。
神津 それが実際の姿じゃないですか。
佐藤 行政への不信がある限りは、将来への不安から、手元に少しでも可処分所得を残しておきたいというのが国民心理ですからね。増税反対は致し方ないところがある。
神津 それで悪循環に陥るんです
ここまでは、しかし、よく言われていることです。この後に、佐藤優さんが持ち出しているこれが、とかく古典的な左翼の人々が陥りがちな傾向をよく示しています。
佐藤 消費税については、すぐ機械的に、高所得者より低所得者の税負担率が大きくなり、逆進性が強いと言う人がいますね。その起源は19世紀にプロイセンの社会主義者ラッサールが書いた『間接税と労働者階級』だと思うんです。でもあの時代の間接税は、再分配が想定されていない。集めたお金は軍事や治安に使う時代でした。だから当時の感覚で消費税を考えてはダメで、増税分が所得の低い層にどう再分配されるかを見ないといけない。
なるほど、古典的な左翼の人々がやたらに消費税を目の敵にしたがる根源には、ラッサールがあったとは!
コメント