発達障害には多い順に、
が含まれます。自閉症スペクトラム障害は、自閉傾向の弱い子から重い子まで、そして、知的障害の軽い子から重い子まで幅があり、スペクトラム(連続体)を形成しています。
発達障害の子どもたちは生きづらさを抱えて生活を送りますが、自閉症スペクトラム障害児の中には非凡な才能を示すことがあります。
映画『レインマン』をご覧になった方も多いのではないでしょうか? 自分の欲に率直に生きる弟と、自閉症の兄の心の交流を描いたロードムービーです。自閉症の兄を演じたダスティン・ホフマンは、その迫真の演技でアカデミー主演男優賞を受賞しました。
兄レイモンドは、「人に関心がない」とか「決まった生活パターンを守り、同じ衣服にこだわる」など、典型的な自閉症の特徴を持っています。
そしてレイモンドには特異な才能があります。驚異的な記憶力と計算力です。彼は、床にばらまかれた爪楊枝の数を一瞬にして数えてしまうのです。まるで写真を撮影するように視覚情報を脳に記憶を焼き付けてしまうことを「直観像」といいます。
レイモンドには実在のモデルがいます。キム・ピークという方で、以前NHKでドキュメンタリー番組が放映されたのでご存じの方もいるかもしれません。キム・ピークは、生まれつき、左脳と右脳を結ぶ神経線維が欠けた「脳梁(のうりょう)欠損」という異常を持っており、知的障害を伴う発達障害者です。
しかし左右の目で本の左右のページをそれぞれ見つめて数秒で記憶し、図書館の9000冊を超える内容をすべて頭の中にデータベース化しているそうです。政治からスポーツまで、どんな分野でも、いつ、どこで、だれが何をしたか、すべて記憶しています。地図も郵便番号も読んだものはすべて記憶しているのです。
専門的な話になりますが、自閉症スペクトラム障害は次の2つによって診断されます。
ちょっと分かりにくいでしょうか? これをもっと具体的に説明してみます。子どもが1歳半になった時、健診を受けます。
体の成長ももちろんチェックしますが、実は1歳半健診で医師がもっとも注意深く診ているポイントの一つが発達障害の有無です。
健常児は、1歳半から2歳になると、言葉やしぐさを使って親とコミュニケーションを取ります。これが、対人的相互反応です。また、同年齢の子どもに関心を持ちます。これが社会的コミュニケーションです。自閉症の子は、こういったことがうまくできません。
また、1歳半から2歳では、特定の物や行為に強固なこだわりはありません。しかし、自閉症の子には、限定した反復的なこだわりがあります。こうした点を参考にして自閉症の診断を付けていくのです。
自閉症スペクトラム障害の診断基準に「記憶力」や「計算力」などは含まれていません。しかし自閉症の人や知的障害の人は、しばしばこういった人並み外れた能力を示します。これを「サヴァン症候群」と言います。サヴァンとはフランス語で、学者という意味です。