岡田育 / Iku Okada

続）敢えて言うまでもないが私は篠原先生の作品を好きで読んでいるし、一方でこの手のことに「一見さも配慮しているかのように見えてとことん無自覚」という男性作家の典型だとも思っていたので、非常にわかりやすく作品を通して抱いた印象のままの人なんだな、との印象を抱きました。良し悪しでなく。

続）「ワンピと違ってスケダンは配慮が効いている」「スケダンはひどかったがアストラではだいぶマシになった」といった評価をされがちな描き手で、他者との比較はさておき昔より改善されたと言われるのは、御本人なりのこうした努力の賜物なのだろうとは思うけど。でもねえ。と。次作も楽しみですが。

続）画面から滲み出る「こうやって描いとけば女も怒らないんだろ！」という（めちゃくちゃ思慮深いようでいて実際は思考停止であるような）態度に、女性読者は敏感なものですよ。何を描いても誰からも何も言われていない少年漫画家もいる、という事実をうっかり忘れそうになるほど、よくある話だけど。

続）「それだけ能力高かったらちょっと頭使えば秒で議題に追いつけるでしょ、本業に割く時間の数百万分の一でも十分足りるはずだから一回だけ、一回だけ本気出して考えてみて、いや待て下手な問題解決なんぞ試みんでいい、ただ、考えろ！」というの、VR美少女や将棋界ジェンダーの話などとも同じだな。

続）ここ数日また「なぜなにと訊いたときに教えてくれなかったママが悪い！」みたいな調子で女性学の研究者が叩かれている光景も見てしまい、結構暗澹たる気持ちになってしまったのだが、なんでここ毎回「ロボットに感情を教える」みたいな困難さを感じてしまうのだろうな……俺たち、ヒト同士だよな？

「今もうかなりいい位置まで立ててるんだから、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ頑張って目を凝らせばキミにも自力で肉眼で見えてくるはずだよ、そのライン、だから頑張って！ 諦めないで〜！」とやる家庭教師役、なるべく努めますが、疲れちゃうときもありますよね……。https://twitter.com/honeking/status/1187429332811014144?s=21…

続）「なんでコレがアリでコレがナシなんですかぁ〜？」と画像大喜利する連中に関してはあまりの不毛さにスルー一択だけど、この「ひらめいた！ 大衆の総意をデータ分析にかければ万人納得の最適解が出せるんじゃね？」って発想は、それはそれで別口でタチ悪いと思ってます。https://twitter.com/okadaic/status/1185187190252408832?s=21…

続）「懲りずにセクハラしては何度も罰を受ける」世界を描くのはいい。「殺人鬼の漫画を描いてるけど俺自身は一人も殺してない」という主張、わかるからな。ただ「需要に合わせた犯罪描写をしてるんだ」というのは本人に思想が有るようで全然無いし、作家というより編集方針の問題だよね、と思うかな。

続）チビッコ読者とその延長線上にある少年漫画家たちは「でもうちのママには怒られなかったもん」と当然言うし、その中に出来杉クンがいたら「僕の作品が怒られるに値しない根拠はこうです」と解説もするだろうけど、そこは「大人」である出版社編集部がストッパーとして機能しないといけないのでは。

続）私は篠原先生を出来杉だと思っているので、彼だけ叩かれるのは残念に思う。のび太たちはこれでますます「ああいう目に遭うから出来杉役は損だな〜」と逃げ隠れるんだろうから。で、そこで編集部が一緒になって「くわばらくわばら〜」と逃げながらタピオカ乳首やってんのが、本当にアカンと思うな。

続）出来杉だから、大人たちの矛盾や至らなさに大人より先に気づいて超えてってくれるのではないか、と次回作に期待してますが、出来杉であるがゆえに、別媒体に軸足を移すことになったりもするだろうな。私が出来杉でもそうする。そしてまた少年誌には「バクマン。みたいなアレ」が載り続ける悪循環。

この話もしつこいが、私が岩代先生の漫画を推してたとき、「あからさまな乳袋キャラが出てくるのが嫌だから読まない」と言ってた女性大人読者もいたんだけど、澪や祭がセクハラ受けないとか、子供だったマリーの成長を（フレデリカ以外）何も言わないとか、あれはあれで配慮効いてたと思いますけどね。

続）めちゃくちゃ贔屓目に言うなら「この世には巨乳を強調した服装の女性も胸の小ささを気にして口にする少女もさまざまいるが、少年漫画ヒーローたるものそんなことにはいちいち言及しないのである」側のスタンスで、そういう作品も多々ありますよ。さすがの私も全作品の全描写を擁護はできないけど。

続）あと同時期の『初恋限定。』みたいに「胸の大きい女子が男の目をどう感じているか」を描いた作品もまぁ少年誌でやる意義あったと思うんです。胸の大きな女子にも考えがある。そこから教育する。という。しかしそうした好い例のどれもが、編集方針に導かれた産物ではなかったんだろうな、とは思う。

続）熱心に毎号読んで「WJはWJなりに少しずつ良くなっているなー」と思っていた矢先に『バクマン。』前後で心底ガッカリして本誌読まなくなったのが10年前とかだから、例が古くて申し訳ないんですけど……。でも当時の新人中堅編集者が今ベテランになってるんだろうと想像すると暗澹たる気持ちになる。