地鳴りのような歓声が一瞬にして悲鳴に変わった。浦和のセオリー通り3角発進のまくりを打った藤田菜七子騎手(22)=美浦・根本=騎乗のコパノキッキングは4角先頭。そのまま後続を引き離して押し切り態勢に持ち込んだ。これで決まったかと思われた瞬間、外から1頭ブルドッグボスの強襲だ。首差2着。JBCスプリント制覇で初のG1級タイトルを夢見たがスルリと逃げた。
「とても悔しいです」。藤田がインタビュースペースに現れた時にはもうJBCクラシックの出走馬が返し馬を終えていた。発走から40分近くたっていたが、まだ目は腫れていた。「チャンスのある馬に引き続き乗せていただいて、勝てなかったのは悔しい。そのひと言です」。普段から競走後に多くを語る性分ではない。この日は特にその一語に思いを凝縮させた。
完璧な騎乗だった。ゲートに先入れしたが、同じく枠入り不良傾向のあるノボバカラがゲート入りを渋ったため随分待たされた。それでも五分に出した。「手応えは抜群。向正面すぎからは自分からハミを取ってくれました。抑えつつ、邪魔しないように乗りました。馬の状態はすごくよかったし、ナイターでない分なのか、前走より落ち着きもありました」。インでごちゃつく先行争いをよく見て不利を避け、3番手の外にはまり込んだ。
反省しようにも落ち度なし。かといってツキのせいにはしたくない。消化しきれないこの日の悔しさは、成長しつつあるジョッキーにとって、必ず糧になる。