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【社会】

外国人旅券職場で管理 帰国も転職も阻む「不当契約」 横浜の行政書士事務所

フィリピン人女性が働いていた行政書士事務所が入る建物=横浜市で

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 横浜市の行政書士事務所「アドバンスコンサル行政書士事務所」が、雇用した三十代のフィリピン人女性の旅券(パスポート)を預かる契約を結び、返還も拒んでいることが女性側への取材で分かった。女性は「パスポートがなく、母国に帰ることも転職活動もできない」と訴えている。

 外国人の旅券預かりは、技能実習生に対しては法律で禁じられている。一方、実習生以外は厚生労働省が「旅券を保管しないようにする」と指針を出しているものの、罰則など強制力はない。改正入管難民法施行で外国人労働者に門戸が開かれ、大幅な増加が見込まれる中、「法の不備」によって不当な扱いを受けやすい現状が浮かび上がった。

 女性の支援者は「立場が弱い外国人労働者を囲い込む行為」として返還を求めている。アドバンス事務所では、別の外国人もパスポート返還などを求めたが、事務所側は団体交渉に応じなかった。神奈川県労働委員会は九月、団交の拒否を不当労働行為と認定した。

 女性や支援するNPO法人「POSSE」の外国人労働サポートセンターによると、女性は二〇一七年四月に来日。日本語学校で学んだ後、就労ビザ取得の手続きで訪れた同事務所に雇用され、今年五月から通訳などの仕事を始めた。

 その際、(1)パスポートを事務所が預かり、使用の際は書面による申請や許可が必要(2)管理方法や保管期限は事務所が決定-とする契約を結ばされた。女性はその後、退職を希望し、七月初旬を最後に出勤していないが、事務所は退職を認めず、パスポートの返還にも応じない。女性側は「賃金の一部も未払いだ」と訴えている。

 事務所の代表を務める行政書士は「取材はお断りする」としている。

◆現行法の保護 実習生だけ

 「日本語はほとんど話せない。何かあったらどうすればいいのか。パスポートを一刻も早く返してほしい」。行政書士事務所で働いていたフィリピン人の女性は、異国で自身を証明するものを持たない心細さを、声を震わせながら訴えた。神戸大の斉藤善久准教授(アジア労働法)は、企業がパスポートを預かり、返却を拒むことは「外国人労働者にとって精神的な拘束に等しい」と問題視する。

 女性は収入がないのに再就職も帰国もできず、身動きが取れない。斉藤准教授は「外国人労働者は雇用契約と在留資格がひもづけられており、立場が不安定。それに乗じてパスポートを取り上げ、転職の自由などを制約する不当な契約だ」との見方を示す。

 厚労省によると、外国人技能実習生については禁じられているパスポート保管の規定を、外国人労働者全体に拡大する動きは今のところない。

 外国人労働者は昨年十月末時点で百四十六万人となり、十年余りで約三倍に増えた。斉藤准教授は「今後も増えるだろうが、日本は外国人の保護政策が弱い。パスポート預かり禁止も含め、国は対策を考えるべきだ」と指摘した。

 

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