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【社会】

<子ども虐待を防ぐ>育児 抱え込まないで 悩む親へ相談勧める 恵泉女学園大学長・大日向雅美さん

戸田泰雅撮影

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 児童虐待防止法が六月に改正され、「しつけ」の名での体罰が禁じられるなど「子どもへの暴力はNO」という認識が社会に広がっている。一方で、親たちには「自分は大丈夫か」との不安が強まっているように見える。育児ストレスなどの研究者の大日向雅美・恵泉女学園大学長(69)は「完璧な親なんていない。一歩を踏み出して自分に合う相談先を見つけて」と話す。

 大日向さんは子どもへの虐待を「『ゾーン』を分けて考えることが大切」とする。日常的な暴力を止められず、児童相談所や警察など専門機関が関わる必要があれば「レッド」。そこまでではないが、親の強い不安感から子どもに矛先が向かう場合は「イエロー」で、保健所や子ども家庭支援センターなどが連携して支える必要がある。

 「誰もが足を踏み入れやすいゾーン」と大日向さんが挙げるのが「グレー」だ。子どもに適切に関わりたいと思っていても、ぐずりがひどいとか、自分が疲れているなど悪条件が重なると、思いがけず手をあげたり、怒鳴ったりしてしまうケースだ。

 「親が異常なのではなく、ワンオペ育児だったり、専業主婦が社会に取り残されているような不安を感じたり、要するに環境の問題」と大日向さん。「子どもにとっては、グレーであっても暴力はつらい。だから、パパママには一歩を踏み出してほしい」と地域の支援窓口での相談や、子の一時預かりの利用を勧める。

 相談員との相性もあるため、「気持ちを分かってくれないとがっかりすることがあっても、諦めないで別の人や相談先を探してほしい」と呼び掛ける。

 二人の娘を育てた大日向さんも、グレーゾーンに陥った。長女が三歳の頃、保育園から帰り、疲れて洗濯をしている時に、駄々をこねてまとわりついてきた。「後でって言ったでしょ」と払いのけた手が頭に当たった。「娘は悪くないのに『ごめんなさいお母さん、良い子にするから』と謝った。鏡に映った自分の顔は悪魔みたいだった。忘れられない」

 多くの親の悩みを聞き、支えてきた経験から、父親たちにも「母親の同志として、当事者として育児をしてほしい」と呼び掛ける。そしてこう断言する。

 「母親はいつでも慈愛に満ちているはずという母性観は幻想。『自分一人で子育ては無理です』『家族も地域の方も一緒に子育てを見守ってください』と訴えて。負けではないけれど、白旗を揚げるの。完璧なお母さんなんていないんです」 (石原真樹)

 ◇ 

 十一月は児童虐待防止推進月間。虐待を防ぐため、親子を支えたり助言したりする人々から、子育てに奮闘する親たちへのメッセージを随時掲載します。

<おおひなた・まさみ> 専門は発達心理学。1970年代初めに相次いだコインロッカーに新生児が遺棄される事件を機に、母親の育児ストレスなどを研究。2003年から東京都港区の子育てひろば「あい・ぽーと」施設長。9月に始まった厚生労働省の「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」座長。

 

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