最初はバンドガールズ・オブ・ザ・デッドにしようかと思ったんですけど、ここに調ちゃんを巻き込むのは無理があると思ったので、地底人☆お届け大作戦となりました。
今回はブシドーの時とは違って、アイドル時空の調ちゃんの話となります。久しぶりにアイドル時空も書きたかったからね。
という事でどうぞ。
今日はアイドルとしてのお仕事も無くて、切ちゃんも出掛けちゃって暇だったから彩さん達の世界に遊びに来た。
特に理由はないけど、強いて言うなら羽沢珈琲店のコーヒーが恋しくなった……って感じかな? とりあえずコーヒー飲んで一休みして、彩さん達と会えたら会おうかな、とかそういう魂胆。
そんなこんなでギャラルホルンを通って平行世界。相変わらず異端技術とは無縁な世界に羨ましさを感じつつ、こっちに来たら最低一回は行っている羽沢珈琲店へ。イヴさんもバイトしてるし、パスパレの皆と遭遇できる可能性も高いんだよね。
シュルシャガナは早いうちに解除して、その足でそのまま羽沢珈琲店へ。道中すれ違うこころさんとか美咲さんに挨拶しつつ、チリンチリンという音を鳴らして羽沢珈琲店の中へ。
「いらっしゃいませ~。あっ、調ちゃんだ。久しぶりだね」
「久しぶりです、つぐみさん」
久しぶりとは言っても大体一ヵ月ぶりくらいかな? 最近は色々とあったから来れなかったんだよね。
つぐみさんとこのまま話したい所なんだけど、流石につぐみさんもお仕事中だから会話は手短に。クリス先輩に、アフグロのメンバーに会ったらよろしく言っておいてくれって言われたから、クリス先輩がよろしくって言ってましたと、言葉そのまましっかりと伝言を伝える。
それじゃあ、席はどこにしようかな……
「あっ、そうだ。今、彩さんと千聖さんと、あと日菜先輩が来てるよ?」
「え? あ、ホントだ。イヴさんと麻弥さんは居ないんですか?」
「今日は収録みたい」
さっきからずっと悩んでいるから行ってあげて、って急かされたから、話もそこまでにしてとりあえず彩さん達の所へ。どんな風に声をかけて驚かせようかなと思っていると、日菜さんがこっちにバッチリ気が付いて、ジーっと見つめてきた。
どうしたんだろう。彩さんも千聖さんもジッとこっち見てるし……
『アクションできそうな知人いた!!』
「へ? ……へ?」
いや、あの……彩さんに日菜さん、急に叫ぶとお店に迷惑です、よ?
なんて言う間もなく、二人が叫んでからすぐに、わたしは両腕を掴まれてそのまま日菜さんの隣に強制的に座らされた。
一体どういうことなのかよく分からなかったけど、そこら辺はしっかりと三人から……というか、主に千聖さんから懇切丁寧に説明される事となった。
話を要約すると。
「今度、パスパレが主演の映画を撮る事になったけど、事務所がアクションシーンの適役に男性じゃなくて女の子を使いたいから、アクションできそうな知人を探してきてくれと言われて途方に暮れていた所、わたしが来たと?」
「ごめんなさい、調ちゃん。こっちの話に巻き込んじゃって……」
どうやらわたしの解釈は大体合っていたらしい。
にしても、なんて傍迷惑な事務所なんだろう……アイドルの映画だから、敵役も女の子にして全体的に華やかにしたいとかで知人を連れてこいって……
知人が居なかった場合は、普通に男性のスタントマンを起用する予定だったらしいんだけど、知人を連れてきたらその分だけ恩恵あるよー、とか言われて、ちょっと悩んでたらしい。で、居ないのは居ないで仕方ないからそう事務所に伝えようと思った所でわたし登場。無事連行されました。
……いや、いいんだけどね? 暇だったし、こっちだと無名の一般人だし。
「……まぁ、アクションはできますよ? 多分、下手なスタントマンよりも色んな事できるとは思います」
「だよね! あの時もすっごいズバーッて戦ってたもんね!」
「それぐらいはできないと、多分三桁は死んでますから……」
それに、最近は逃走中でパルクールやったせいか、肉体派アイドルとか言われるようになっちゃいましたし、バラドルの汚名がもう雪げない状態になりかけてますし……
という闇は一旦呑み込んでおくとして。
別に撮影に付き合うのはやぶさかではないんだけども、わたし自身に問題がある。
わたし自身のスケジュールが、パスパレの撮影に合わせられるかどうか。ついでにわたしがこっちでの連絡手段を持っていない。
「でも、わたしにも一応予定はありますし……それに、装者としての任務もいつ来るか分かりませんし」
「あっ……そ、そうだよね。調ちゃんもアイドルだし、装者っていうのをやって世界を守ってるんだもんね」
「えー。あたし、調ちゃんと撮影できると思ってるんってしてたんだけどなぁ。サボれないの?」
「流石にちょっと……」
「こら、日菜ちゃん。無茶な事言わないの」
こう見えても多忙なんです、わたし。
学校にアイドルに装者。どれもこれも簡単にサボれるような物じゃないから……一応、アイドルとしての仕事を優先していて、装者としての仕事は合間の時間に詰め込んで緊急事態以外は二の次の状態。でも、最優先は学業。
スケジュール表を見てみるけど、休めそうなのはレッスンくらいかなぁ……ここら辺は基本的に緒川さんや司令に見てもらうやつだし、二人も私情優先で大丈夫って言ってくれたけど、既に入っているお仕事だけはどうしても……それに、もしあっちで異常が発生したらこっちには暫く来られないだろうし。
……まぁ、でも。
「実は、アイドルのお仕事の方なんですけど、ライブの練習も始まるので暫くはリフレッシュしてこいって事で、結構お休みを貰ったんですよ。それに、わたしってまだラジオ以外のレギュラー番組を持ってませんから、お仕事も結構まちまちでしか入ってませんし。装者としての仕事は流石にサボれませんけど、アイドルの方のお休み中に終わるんでしたら、付き合いますよ?」
わたしだって彩さん達とお仕事したいなーとは思ってたし、受けてみようかな。
やられ役なんて早々やれる物じゃないし、いい経験にはなりそうだからね。
「ほんと!? 流石調ちゃん!!」
「ちょっと彩ちゃん……でも、いいの? 貴重なお休みなんでしょ?」
「いいリフレッシュになりますから」
でも、学校には行くけどね。
ちょっと忙しくなりそうだけど……まぁ、彩さんも日菜さんも嬉しそうだし、別にいいかな。
ちなみに撮影するのは映画で、パスパレの五人が主役。なんか地底人を見つけて元居た場所に帰すためにあっちこっち奔走する話らしいんだけど、その際に地底人を確保するために来る刺客がわたしらしい。
……この映画のジャンル、SFになるんだ…………
****
あの後は事務所の方に連れていかれて、わたしのスケジュールの空きと撮影のスケジュールを照らし合わせて、わたしが撮影に参加する日、リハーサルに参加する日を決めた。そのついでに、わたしがどれだけアクションできるのかをパスパレの五人と、事務所の方&撮影監督に実際に見せる事になったんだけど、そんじょそこらのスタントマンよりも遥かに動くわたしを見て、事務所の肩と監督さんは気に入ってくれたようで、無事撮影には参加する事になった。
まぁ、借りたジャージとスニーカーでバク転とかバク宙とか、風月ノ疾双のMV撮影の時に翼さんと練習した殺陣を披露しただけなんだけどね。あとパルクール。
……あのMV撮影は地獄だったなぁ。本気で斬りかかってくる翼さん相手に立ち回って互角を演じろとか、何その無理ゲーって何度思った事か。そのMVの方は翼さんの剣技は実戦剣術だし、わたしもそれに近い型を披露したからか、一時期SNSが凄い事になったけどね……主に若者の人間離れ的な意味で。
しかも、わたしがかなり動けるという事で、アクションシーンが増えました。わたしが出るのは合計二回なんだけど、本当は最後の一回だけアクションする筈が、最初の登場シーンでもアクションする事に……
「調ちゃんすごっ……剣もあんなに振れるんだ……」
「凄いですシラベさん! まさにブシドーです!!」
「いや、昔取った杵柄というだけで……」
で、一回目のアクションシーンはわたしが一人で壁を蹴ったり階段から飛び降りて着地したりして、五人の追手となるわたしの脅威を見せる感じで、二回目では木刀を持つイヴさんと実際に斬り合う感じになる。
いや、わたしのキャラ、思いっきりポン刀持ってるのに木刀と斬り合うんですか……? なんかもう勢い以上に適当が過ぎる気が……まぁいいや。
それからわたしは元の世界に一度帰ってから、緒川さんに一応報告。休暇を潰してアクションシーンの撮影をする事に緒川さんはちょっと渋い表情を浮かべたけど、体を壊さない事、ちゃんと体のケアは怠らない事を条件に許可してくれました。
「もしライブの練習に影響が出そうでしたら、すぐに止めますからね。それだけは覚えておいてくださいよ」
「大丈夫です。今さらそんなヘマはしませんから」
散々敵にぶん殴られた後でもケロっとお仕事に行ってるわたしだもん。今さらアクションシーン程度で……
…………あれ? なんかわたしの体、ちょっと頑丈さがおかしくない? いや、シンフォギアのバリアフィールドのおかげだから。そうに違いないから。
まぁ、そんな事は置いておくとして。
空いた時間に彩さん達の所へ行ってリハーサルをして、イヴさんと斬り合う練習をしているうちにいつの間にかわたしが出演するシーンの撮影に入ったらしくって、わたしはしっかりとメイクをした後に黒スーツに着替えさせられた。わたしは政府から派遣されたエージェントっていう役で、彩さん達がとある日に捕獲した地底人、モグちゃんを捕獲するために彩さん達の前に立ちはだかる、という設定らしい。
……こんなちんまいエージェントって色々と大丈夫なのかな? なんかただのコスプレみたいな感じになってるけど。
「それで、月読さんにはパステルパレットさん達があっちへと走っていくシーンで立ち上がってもらって、全力で走る五人に追いついてもらいつつ、この壁を蹴って皆さんの前に回り込んでもらう形になります。台本通りですが、大丈夫ですか?」
「あー……えっと、一度練習させてもらっても?」
「時間が押していますので、なるべく手早くお願いします」
「大丈夫です。スーツと革靴でできるかが不安なだけなので。えっと、彩さん達があっち向いたとして、立ち位置は確かここだから……よっ、ほっと!」
リハーサルの方はジャージで一度終わらせたけど、流石にスーツでできるかは分からなかったから、練習はしっかりとさせてもらった。
彩さん達が練習室から出てきて、五人で固まって移動するから、その五人に追いつきつつ通せんぼするために無駄にアクロバティックな動きで五人の前に回り込む。本来はここで見逃すはずなんだけど、監督が勝手にねじ込んだみたい。台本も追加で渡されたし。
軽く走って、横に飛んで、壁を蹴って前方宙返りをしてから着地。パルクールの技術がここで活きたよ。
よし、大丈夫。完璧。
「うわ、調ちゃんすっご……」
「なんか特撮見ている気分っす……」
「まぁ、これくらいできないと、な環境でしたから」
明らかにアイドル始めてからもっと別な技能が身についてるけどね。
まぁ、それはともかくとして、お色直しを終えたパスパレの皆さんも戻ってきたから、通しでリハーサル開始。わたしが五人が居る準備室のドアを叩いた、という体でドアの前で待機している場面からスタート。
「あー、すみません。ここは今日、ジブン達がずっと使う予定で……」
「いきなりですみません。ちょっとお話だけ聞きたくて」
わたしの言葉に怪訝な表情を浮かべた麻弥さんと、その後ろからこっちを見ているパスパレの四人。
次のセリフを忘れるなんてポカはしない。しっかりと覚えてるよ。
「ここら辺で奇妙な生き物を見たという情報を得まして。ご存知ないですか?」
「奇妙な生き物、っすか?」
「えぇ。こう、小さくデフォルメされたモグラ、みたいな」
と、言いながら目線を日菜さんの方へ。日菜さんの手にはモグちゃん役の人形がしっかりと握られている。
で、その直後にヤバいと判断した日菜さんがわたしの体を押してから部屋を出て、そのまま部屋の外へ。その際になんだけど、わたしはかなり派手に吹き飛ばされて、との事。
それじゃあご希望に答えまして。
「知りませーん!!」
そう叫びながら突撃してきた日菜さんを一瞬受け止めてから、わたしは違和感がないように後ろへ飛んで思いっきり背後の壁に背中を大きな音と共に打ち付ける。
っていうか予想以上に日菜さんの力が強すぎて割と本気で吹き飛ばされたんですけど。いや、受け身も取ったから痛くないけどね。そこら辺のリハーサル忘れたから日菜さんも加減間違えたっぽい。
まぁ、それを悟らせないレベルでいいスタントができたけども。
「うっ!!?」
「し、調ちゃん!? 大丈夫!?」
で、ここから日菜さんがこっちこっち! と言いながら五人を先導する場面なんだけど、かなりの勢いで吹っ飛んだわたしを心配して演技を無視してこっちに来ちゃった。
これには思わずわたしもジト目。後ろで千聖さんが怖い表情してますよ。
「……あ、あれ?」
「演技ですよ、彩さん」
「い、いや、でもすごい音が……」
「全然痛くないですから。自分から当たりましたし、受け身も取りましたし。ほら、この通り」
「あっ、ホントだ。なんだ、よかったぁ」
「彩ちゃん……?」
「…………ご、ごめんなさい」
という事でリハーサルはテイク二。
わたしが吹き飛ばされて、思いっきり壁に背中を打ち付けて、そこから日菜さんが部屋からモグちゃんを連れて出てくる。
「こっちに非常口があるから、あっちから逃げよ!」
「そ、そうね! みんな、行くわよ!」
で、五人が走り始める。
日菜さんがこの中では一番足が速いけど、他の四人に合わせるからわたしの全力疾走で十分に追いつける。
ここからのセリフはっと!
「いっつ……逃がしませんよ!」
と、叫びながら一気に五人の後ろに追いついて、横の壁へと跳躍。そのまま壁を蹴って前方宙返りをしながら五人の前に着地。勿論五人もこれは知っているから、わたしが壁を蹴った時点で足を止めてわたしの方を見ている。
ドヤ顔の一つでもしたいところだけど、まだリハーサル中。着地してから余韻を数秒出しつつ振り返って腰の模造刀に手をかける。
「大人しくそこの地底人を渡さないと、無事では帰しませんよ……?」
「さ、流石政府のエージェント……! すごい身体能力っス……!」
「どうしますか? そこの地底人を渡すか、痛い目にあってみるか……二つにひと」
「ブシドー!!」
で、わたしのセリフを遮って何故か木刀を持っているイヴさんからの奇襲を貰う。
勿論、寸止め……なんかじゃなくて、実際に腕でガードしつつ後ろに飛んでダメージをゼロに。でも演技だから腕を抑えて小さく苦痛の声を漏らす。
「ぐぅ……っ!? たかがアイドル風情がよくも……!」
「今の内に逃げましょう!」
「あっちにも非常口あったよね! あっちに行こう!!」
「ま、待て!」
五人はそのまま走り去っていき、わたしは腕を抑えたまま舌打ちを一つして、このシーンは終わり。
「し、シラベさん、大丈夫ですか!!?」
で、終わった直後にイヴさんがこっちに走ってきた。
一応このシーンは何度も練習したし、一度も受け止め損ねて本当にダメージを貰うなんて事は一度もなかったけど、イヴさんはやっぱり心配だったようでかなり焦った表情でこっちに向かって走ってきた。ついでに麻弥さんや彩さん、千聖さんも。
あんなに練習したから大丈夫なのに……心配性だなぁ。
「大丈夫ですよ。ほら、この通り」
袖を捲くって腕を見せれば、ちょっとだけ赤くなってるけど特に痛くもなんともない腕が。
ブンブン振って何度か叩いて見せた辺りでようやくイヴさんは安心したようで、ホッと一息をついた。流石に木刀で人を殴るなんて今までなかっただろうし、その焦りもあったんだろうね。
わたしなんて幾ら木刀で殴られても大丈夫なのに。木刀よりキツいのを何度も貰ってるし……訓練でも生身で数メートル吹き飛ばされる時あるし……ははっ。
「それじゃあ本番いきまーす!」
で、その後は本番……なんだけど、ちょっとここで悪戯心が発動。
イヴさんに木刀で奇襲されるシーンでちょっとだけふざけてみました。
「ブシドー!!」
「づあぁぁぁ!!? ぐっ、この……!! よくも、よくもたかがアイドル風情が!!」
『!?』
割と本気でアドリブの演技してみました。
日菜さんはあんまり驚いてくれなかったけど、他の四人はかなり驚いてくれたし、しかも受け身の取り方もちょっと変えたからイヴさんが本当に殴っちゃったと思い込んだみたいでうろたえている。
でも千聖さんがなんとか機転を利かせてくれて、なんとか彩さんもセリフを言ってから走っていってくれた。
で、カット。無事このシーンを撮り終える事ができたんだけど……
「シラベさん、今、思いっきり痛そうな声を!!」
「演技ですよ。ほら、当たったところも特に何も無し」
「へ……?」
「にしては迫真過ぎっす!! 心臓に悪いっすよ!!」
「アイドル兼装者ですから」
なんてちょっとお茶目を見せたけど、この後千聖さんにお説教されました。
解せぬ。
ちなみに監督さんには好評だったようで、このカットはしっかりと使ってもらえる事になりました。やったね。あと、その直後の光景はNGシーン集で使ってもらえる事にもなりました。
あと事務所の方から演技を買われて本気でアイドルにならないかとスカウトもされたけど、断りました。もうなってるんで。
****
それから暫く。
あの日の撮影はアレで終わって、暫く経ってからもう一度撮影に入った。その撮影っていうのが、モグちゃんを迎えのUFOに送り届けるために山の中にやってきた彩さん達と決戦するっていう話。
ここではわたしとイヴさんが一騎打ち。そのためにチャンバラの練習もしたし、イヴさんと入念な打ち合わせをした。わたしなら万が一があっても避けれるし、攻撃を逸らす事もできるけど、そんな事したら不自然になっちゃうからね。一応、わたしは翼さんの所で刀の握り方とか色々と教えてもらえたし、結構その道の人っぽく動く事ができるんじゃないかな?
リハーサルも終えて、いよいよ本番。流石にスーツと革靴でアクションするのはくたびれるけど、頑張ろう。
「うわっ、あっちの方に黒服さんが沢山いるっす!」
「どうしてココがバレたんでしょう!?」
「おかしいなぁ。痕跡とかは極力消してきたんだけどね」
と、五人が演技している間、わたしは木の上で待機。
どうしてかと言われれば、監督がわたしは忍者っぽく木の上から現れてみたら面白いんじゃ、とか言い出すもんだから、試しにやってみたらそれでいこうって言われて。これこそ本当にスタントマンがやる演技だと思うんですけど……
まぁ、この監督がその場の勢いでアレコレ言うのは結構見てきたし、わたしも平行世界のではあるけど、プロなんだし。与えられた仕事はバッチリとこなすよ。
「……そういえば彩ちゃんって、ずっと自撮りばっかりしてたわよね?」
「え? してたよ? はいチーズ」
「言ってる側から撮らないの。で、撮った写真は?」
「SNSに上げてるけど……」
「うわ、彩ちゃんのSNSにあたし達が居る場所とかモグちゃんとかバッチリ写ってる」
彩さんはエゴサ癖はあるけど、そんな頻繁に自撮りをSNSに乗っける人じゃなかったと思うんだけど……ちなみにこのSNSの写真とかは、実際に彩さんのSNSに投稿される予定で、映画公開日に合わせて彩さんが毎日撮影中に撮った自撮り写真をSNSに合わせて投稿して、この映画が本当に起こった事、みたいな感じのキャンペーンみたいなのをやるんだとか。
そんな事を考えている内にわたしの出番が。木の上で座って待機してたけど、出番が来たと同時に木の上で音を立てずに立ち上がる。
「その通りです。お陰であなた達には簡単に追いつけましたよ」
と、言いながら木の上から飛んで、前方に何回か宙返りしつつ着地。忍者っぽく登場してみる。
本当の忍者は残像を残すんだけど……まぁそこら辺は特にツッコミを入れない方向で。
「あ、あなたはこの間の!」
「さぁ、その生命体をこちらに渡してもらいましょうか。今度ばかりは、わたしも本気です」
刀の抜き方もちょっと魅せる。
腰から刀を取って、柄と鞘を握ってゆっくりと抜刀。鞘は投げ捨てて刀を回しながらカッコつけて構える。実戦でこんな事したら敵から隙ありって殺されるのでやめましょう。
「若宮イヴさん、でしたか。この間はよくも煮え湯を飲ませてくれましたね。今回は容赦しませんよ」
「ここは私が時間を稼ぎます! ブシドー!!」
「何度も愚直な突進を!」
と、言いながら交戦開始。ここら辺は結構練習した場面だし、イヴさんもプロ根性でしっかりと木刀で巧みに戦ってくれる。
真剣と木刀だと、流石に木刀が不利。というか、ぶつかり合えば確実に木刀がスパッと斬れるから、基本的には二人で相手の攻撃を受け流す感じの立ち回りをする事になる。最初はわたしが優勢、みたいな感じで押すんだけど、途中からイヴさんの攻撃に押されて……という感じになる。
「くっ、たかがアイドルと侮ったばかりに……!」
「貰いました!」
で、この一撃でわたしが片腕を使って防御して、それが偶々前回イヴさんが木刀で叩いた所だから、完全に腕が使えなくなって片腕のまま戦うけど、イヴさんはわたしを圧倒……という予定。
だったんだけど、貰いました! と言った直後に防御姿勢を取ったわたしに木刀は当たらなかった。
どうも木刀がすっぽ抜けてしまったらしく、イヴさんの木刀は後ろの彩さん達の方へと飛んでいってしまっている。あっ、これ駄目だ。完全にリテイクパターン。
「よっと」
まぁ、ミスはしかたないよね。日菜さんが軽く木刀をキャッチしたし、リテイクで……
……あれ? なんか日菜さん、こっち見てない? なんかうずうずしてない?
あっ、これ。
「といやー!」
やっぱり殴りかかってきた! 明らかに目線がやっちゃうけどいいよね? 答えは聞いてない! って言ってたもん!
けど、こうなった以上は仕方ない。イヴさんを軽く押して下がらせてから、日菜さんと斬り合う。
って、この人普通に強い!?
「よっ、ほっ、たぁ!!」
「調子に……!!」
やっぱり天才って凄いんだなぁと思いつつ、しっかりと攻撃は受け流す。そしてわたしが斬りかかっても日菜さんは軽くそれを受け流す。
明らかにイヴさんの時よりも動き方が素人のソレを超越した殺陣になってるんだけど……まぁ、日菜さんが楽しそうだしいいかな。で、そろそろ撮影時間もアレだし、攻撃を食らっておこうって事で、わざと受け流しをミスして片腕に木刀を当てる。
「ぐぁっ!? こ、この間の傷に……!!」
「あれ? まぁいいや。イヴちゃん、ナイスパスだったよ!」
勿論しっかりと衝撃は殺しながら当たったから、怪我は一切なし。
イヴさんは日菜さんから木刀を受け取って、改めてわたしに斬りかかってくる。さっきのは日菜さんが上手く演技でカバーしたみたいだし、監督たちもなんか満足気だし、まぁいいかな。
この後は片腕しか使えないから押し切られて、わたしはイヴさんの木刀に吹き飛ばされてKO。倒れている間に彩さん達は山を登って行って……
「カット! いやぁ、実にいい殺陣だったよ!!」
無事に撮影終了。あとは彩さん達がモグちゃんをしっかりと送り届けて、わたしはこのまま時間を潰してから、負けてからのアレコレを撮影するだけになった。
「日菜さん、アクションできたんですね」
「イヴちゃんと調ちゃんのを見てたら覚えちゃった!」
それで覚えるって、やっぱり天才は凄いなぁ。
イヴさんと彩さんは結局わたしの心配ばっかりしてくれるけど、勿論無傷。痛い音が鳴った? 大丈夫、その程度で傷付くほど柔な特訓はしていませんから。もっとヤバいので殴られまくってますから。
「これは、もしかして調ちゃんよりも強くなっちゃったかな~?」
とかなんとかやっていたら、日菜さんがそんな事を。
ほう。
そんな事言いますか。それじゃあイヴさんの予備の木刀を拝借しましてっと。
「じゃあ試してみましょうか。わたしも本気でいきますよ?」
「ふふふ。あたし流剣術を見せてあげよう!」
「覚悟!」
「あらよっと!」
ちょっとカチンと来たわたしは暫くの間、日菜さんとチャンバラごっこして時間を潰していました。
――ちなみにこの光景、彩さんが撮っていたらしく、映画公開後にSNSに投稿した所、ちょっとバズったそうな。あと、映画を見て居ない人はわたしが誰か分からず、ちょっとだけ話題にもなったらしい――
****
映画の撮影も無事終わって、それが公開されてら暫く。わたしはまたもや彩さん達の世界に訪れてみた。
映画の方は、パスパレファンの方からは結構好評だそうで。そのついでと言っちゃなんだけど、わたしの顔もパスパレファンの方にはちょっと知れ渡ってしまった様子。敵役の刀をぶん回している子は誰だ、とか、そういう感じで。
「そんな訳で、調ちゃんの事がそこそこ言われてるんだよね」
「一時期、パスパレの新メンバーになるんじゃ、とか言われてたよね」
「わたし達の方で否定はしておいたし、調ちゃんの事は今回限りの出演だとは言っておいたのだけど……」
で、彩さん達と同年代でスタントマンばりのアクションができるような人材なんて結構貴重に決まっているし、あの監督さん、わたしの事をえらく気に入ったみたいで。
羽沢珈琲店で駄弁っているわたし達の前には、出演オファーのお手紙が。勿論、敵役の殺陣要員として。
わたしと音信不通状態が多いせいか、監督さんはパスパレの事務所にお手紙を届けたらしく、そのお手紙が彩さん達に渡され、そしてわたしの前に。
まぁ、断るしかないんだけどね。
「暫くはこっちでも変装が必要そうですね……」
「そうなるわね。ごめんなさい、調ちゃん。唐突に巻き込んじゃったせいで」
「別に大丈夫ですよ。変装には慣れてますから」
念のためにいつも持ち歩いている帽子と伊達眼鏡で即座に変装完了。いつもの三人と一緒に居る所を見られてバレて、色々と聞かれたら困るからね。学校の友人、と言える程度には変装しておいて損はない。
で、この後はパスパレメンバー+わたしで、スタッフ主催ではなくわたし達だけの打ち上げをする予定だから、そろそろ移動しようという事で腰を上げた。
「あ、調ちゃん。打ち上げの時に写真に映ってもらっていい? その方がファンの人も喜ぶかなーって」
「いいですよ。特に断る理由もないですし」
さて。打ち上げが終わったら元の世界に戻ってアイドルしないと。
頑張るぞっと。
なんやかんやで結局自分から巻き込まれた挙句ノリノリで撮影に協力する調ちゃんでしたとさ。
で、アニメの方ですが……シンフォギア、終わってしまいましたね……
面白かったですし、最高に燃え上がれましたが、ポッカリと胸に穴が空いた気分です……でも、最高の充実感があります。
本編の方の感想ですが、装者+キャロルによる対シェム・ハ戦。作画も良ければ全員がしっかりと活躍できていて、更にこれがエクスドライブだと言わんばかりに滅茶苦茶やりますし。翼さんはグラブルの某オクトーさんみたいな事するし、クリスちゃんはシャイダーですし、FIS組はまたロボ出してるし。
未来を奪い返したい、って本心をぶちまけるビッキーはいつもに増してビッキーっぽく見えましたし、そのビッキーがバラルの呪詛が無くなった人たちの心を一つにしてぶん殴るのなんて、最高にビッキーでしたし。
METANOIA、最高でした。
もう後書きじゃ語りつくせないほどの十三話でした。本当に、これが正真正銘の最終話なんやなって……
曲も新曲が三曲も。PERFECT SYMPHONY、Xtream Vibes、未来のフリューゲル。キャロルが混ざった七人での合唱、未来さんが混ざった六人らしい歌、最後はシンフォギアの始まりの曲でもあるフリューゲル。
全部聞いててすっごく良かったです。やっぱ最高だよシンフォギア……
最後のCパートは、ビッキーと未来さんが流れ星を見に……未来さんが直接伝えたかったことと、それと同じであろうビッキーが伝えたかったこと……
ごめん、完全に告白にしか見えない!! あれあの後告白してひびみくでしょ!? 結婚式しよう!?
はい、調子に乗りましたごめんなさい。何気にキミだけにのオフボーカル、流れてましたよね。
CMは、最後の最後だからおふざけなしに終わっちまうのか……と思ったらビッキーが意味深な発言を。
お願い、今日のラジオで劇場版とかOVAの作成決定とかそういうのを!! それがあればどれだけ辛くても生きていけるんだ!!
サラッとキャロルがアプリディスった直後に参戦決定で笑いましたけど……ホント、シンフォギアは最高でした。
自分はGXから見始めたんですが、四年の間、ずっとシンフォギアを楽しみに生きてきました。こんなキャラ崩壊上等のやらかしSS書いてる馬鹿野郎が何言ってんだという感じですが、シンフォギアに出会えてよかったです。
この四年間、ずっと一番好きだと言い続けたアニメがシンフォギアです! だから、十年先でも自分はシンフォギアを好きで居続けるでしょう! シンフォギアに出会えたことは自分の人生の中でもトップクラスに幸運な事だと、そう思います!
それでは、次回からは毎週更新とかはできないと思いますが、地道に更新していこうと思います! では、また次回!!