梓は既に安室の素性を知り得た上で素知らぬ顔で振舞っている可能性があることを綴りました。
そして「ゼロの日常」の38話「おかしな噂」でそれが顕著となったシーンが見られましたのでここに記載したいと思います。
内容は安室に関する奇妙な噂が周辺で複数確認されたことで真相を突き止めるために安室が動きますが、自分と似た人物の存在が原因であったというものです。
話そのものは『ゼロの日常』でよく見られるほのぼのとしたものですが最後のページがとても印象的でした。
というのも安室によく似た人物の話になった際、梓がこんなことを言い出します。
梓「そっくりさんっていえば…この前私にそっくりな人が安室さんとライブに行ってたって…蘭ちゃんと園子ちゃんが言ってました!」
これは90巻の「裏切りのステージ」の話です。
ベルモットが梓に扮して登場した時のことですね。
ではここで自分のそっくりさんについて語る梓の背景に注目してください。
蘭と園子の目元が描かれていません。
『ゼロの日常』は自分が信用が置けない、正体がつかめないと判断している場合相手の目元を描かないという手法が取られています
その人物が自分にとって日常ではないからです。
上記のリンクでも記載した通り梓は「ゼロの日常」で赤井を除いて唯一登場人物一覧でプロフィールの更新が無く、またモノローグがほぼないキャラクターです。
私はこの理由を梓には原作で描かれていない秘密があるからと考えています。
その梓から見た世界が描かれたということ自体がとても貴重なのですが注目すべきは蘭も園子も目元が描かれていない。
つまり梓から見て2人は無邪気な女子高生ではなく何か怪しい人物ということ。
『ゼロの日常』のルールを適用するとそういう意味になります。
対照的に安室は目元がしっかりと描かれています。
これは梓が安室を信頼のできる人物と判断していることを意味しています。
ですがよく考えてみてください。
安室は29歳の成人男性で、しかもポアロ勤務中に(大切な事情があるとはいえ)突然いなくなったりしてしまうような人物です。
その人物が謎の女性と一緒にいたとなれば不信感を抱くのは当然です。
そんな人物に信頼を寄せ、ごく平凡な女子高生に不信感を抱いているのは実に奇妙な話です。
これは梓が安室を同僚として信頼しているからという理由ではあまりに弱すぎる。
やはり梓には安室透は信頼に値する人物だと助言した誰かの存在があったと考えられます。
私の考察ではその人物こそ以前にも紹介した梓の父親、脇田です。
そして気になるのがもう一点。
梓は「裏切りのステージ」当日安室とベルモットが一緒にいるのを目撃したのではないでしょうか。
まず自分のそっくりさんについて語る梓の背景の描写が非常に繊細です。
まるで自分がその場を目撃したかのように詳細に描かれています。
梓の頭の中に浮かんでいるのは安室と腕組みをしている自分そっくりのベルモットです。
つまり梓は安室とベルモットが腕組みをしていたと知っていたということになります。
梓は「裏切りのステージ」の翌日に蘭たちから不審人物に関する情報を入手していますが(90巻)蘭たちは腕組みについてまで伝えていないと思います。
もし伝えていたならその場で安室に「その女性とはどんな仲なのか」「あなたは不審人物と関りがあるのではないか」と詰め寄ると思います。
それをしなかったということは腕組みの描写は彼女自身が目撃したからと考えることができます。
ベルモット「変装したままここに長居するのは危険なんだから…」
この台詞は安室に近い人物である梓に変装している為に出た言葉と考えていいと思います。
うっかり梓本人に目撃されたら大変なことになりますからね。
ですが「ゼロの日常」の最新話を読むと梓本人がその場を目撃していた可能性も出てきました。
翌日に自分そっくりな人物の情報を聞かされて驚いている梓の姿が確認できますが(90巻)これが演技である可能性も否定はできません。
何しろ彼女は安室の素性を掴んでいながら何も知らないふりを通しています(あくまで私の考察上の話ですが)。これくらいの演技はできそうです。
実際に62巻では殺人容疑のかかった兄の無実を証明するために演技で警察を撒いています。
ほんわかしたイメージが強い梓ですが実は演技派な一面があると私は考えています。
これらを踏まえるとベルモットの「変装したまま長居するのは危険」という言葉は既に梓に目撃されているという今後に繋がるヒントだったのかもしれません。
仮に目撃していないとしても当日の様子を父親である脇田が調べ上げて詳細を梓に伝えた為に細やかな描写となった可能性もあります。
どちらにせよ「安室透が信頼に足る人物」という情報を与えた人物が梓の周辺にいることは間違いなさそうです。
そして私の考察が正しければその人物は上記の通り脇田となります。