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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

すでに「海」祭りの会場でご覧になっている方も多いでしょうが、こちらにも投下させていただきます。

どうかよろしければ感想をいただければと思います。


頬にあたる心地よい風。
髪が翻り風になびく。
足元から伝わる力強いエンジンの響き。
絶えず上下動する床はしっかりと踏ん張っていないと跳ね飛ばされてしまいそう。
「すごいすごーい!」
後部デッキではしゃいでいるヒー子の声。
うんうん。
そうだよねー。
すごいよねー。
わくわくしちゃうよねー。
こんな素敵なクルージングタイプのプレジャーボートで海の上にいるなんて経験、滅多にできるものじゃないもんね。

潮の香りがする。
波しぶきが時折船室の窓を叩く。
蒼空がどこまでも抜けるような青さで、私たちを歓迎しているかのよう。
夏の日差しが輝き、二階の操舵席は暑いに違いない。
「ねえ、これってどのくらいのスピードが出てるの?」
ヒー子の隣で冷たいコーラに口をつけている麻理香(まりか)が二階の操舵席に声をかける。
たぶん・・・25ノットぐらいかしらね。
私は何となくだけどあたりをつける。
この手のプレジャーボートは最大速度が大体30ノット前後。
エンジンはまだ余裕あるみたいだから、きっとそのぐらいだろうと思ったのだ。
「ん? 今24ノット」
操舵席で間の抜けたような声がする。
エンジン音と波の音が結構うるさいので、少し聞き取りづらい。
「そっかー、24ノットか~・・・それってどのくらいの速さなの?」
あらら・・・
麻理香の言葉に私は苦笑した。
「しらねー」
ちょっと、オーナーの樹村(きむら)君が知らなくてどうするのよ。
船舶免許持っているんでしょ。
まあ・・・冗談だとは思うけど・・・
「1ノットは時速約1.85キロメートル。だから24ノットで・・・えーと・・・時速44キロぐらいか」
私は素早く暗算する。
「えっ? 嘘ぉ! これ絶対もっと出てるよ~」
プレジャーボートのスピード感は並じゃない。
だから麻理香が信じられないのも無理は無い。
「そんなものよ。車で走るほうが速いわよ」
私は自分も冷たいものを飲もうとキャビンに入る。
合皮と合板とは言え、いかにも豪華なキャビンの内装は私にはちょっと戸惑いを感じさせてしまう。
乾いてきているとは言え、先ほどまで泳いでいた水着のまま座ってもいいのかしらね?

私たちは大学二回目の夏休みを、この離島で過ごしているのだ。
ここにはこのボートの持ち主である樹村君のお父さんの別荘がある上、こうしてボートでダイビングもできるとあって、私たち三人は誘われたのをいいことにお邪魔しているというわけ。
樹村君は船が似合う好青年・・・とは言いがたいタイプだけど、彼の友人の大濱(おおはま)君と仲西(なかにし)君はルックスもそう悪くない。
つまり私たちは三対三の合コンをやってるようなもの。
ヒー子と大濱君が一緒のサークルという縁で、こうして私も誘われたというわけ。

「ねえねえ、ダイビング楽しみだねぇ」
麻理香がニコニコしながらキャビンに入ってくる。
「そうね」
私も思わず釣られてにこっとしてしまう。
麻理香の笑顔は天性のもので、見るものを微笑まさせずにはいられない。
そう、私たちは、この島の沖合いでダイビングをするためにボートに乗ってきたのだ。
この日のためにダイビングスクールで講習も受け、綺麗な海底に潜れる日を指折り数えていたのよ。
すでにキャビンの片隅にはエアボンベが置かれ、私たちはそれぞれ好みの水着の上にパーカーを羽織ってその時を待っている。
もっとも・・・
ヒー子はショッキングピンクのビキニだし、麻理香もパステルグリーンのビキニだというのに、私はオレンジ色のワンピース。
し、仕方ないのよ。
私は彼女たちのようにスタイルもよくないし、おへそ出せるほどの勇気も・・・なかったんだから。

「そう言えばさぁ」
麻理香がふと口にする。
後部デッキではヒー子が大濱君の腕にしなだれかかって甘えていた。
「何?」
私は麻理香の表情がいたずらっぽくなったのを見て、少し警戒する。
この娘がこんな表情をするときはろくなものじゃないわ。
「島の人に聞いたんだけど・・・」
「うんうん」
私は適当に相槌を打ち、冷たいコーラを取ろうと冷蔵庫の中に手を伸ばす。
「最近ウエットスーツの女の幽霊が出るらしいよ」
「ええっ?」
私は思わず手が止まる。
うう・・・
ひどいよぉ・・・
麻理香は私が昔から怖い話が大嫌いなこと知っているのにぃ・・・
「夜とかにぃ、真っ黒なウエットスーツを着た数人の女性がふらふらと海岸を歩いているのが何回か目撃されたんだって。足引っ張られるかもよぉ」
腕を胸の前でだらんと下げ、いわゆる“うらめしや”の格好をする麻理香。
「いやぁ!! やめてよぉ!!」
私は耳をふさぎ目をつぶって必死になって悪いイメージを振り払う。
そんなこと言われたら潜れないよぉ・・・
「あはははは・・・ごめんごめん。詩織(しおり)ってホントこの手の話に弱いよねぇ」
「ひどいよぉ・・・」
私は半ば泣きそうになりながら麻理香をにらみつけた。
怖くて楽しみにしていたダイビングができなくなったら、訴えてやるぅ・・・

「なあに? また麻理香が詩織を怖がらせているの? もしかしてあの話?」
大濱君にぶら下がったヒー子がキャビンに顔を出す。
体格のいい大濱君はヒー子がしなだれかかっているのがちょっとうれしそう。
「何だい、あの話って?」
「ウェットスーツの女の話よ。どうせ、夜に漁に出た海女さんでも見たんでしょ」
あ・・・
そうかそうか・・・
海女さんなら幽霊じゃないよね。
なーんだ・・・
よかったぁ。
私はホッと胸をなでおろす。
「でも、この島の海女さんは夜漁なんかしないって言うわ。それになんか無表情で不気味だったって・・・」
麻理香がまだ言っている。
やめてよもう・・・
「夜見たらなんでも不気味よ。夜間ダイビングを楽しんでいた人たちかもしれないし」
「でも、そんなんじゃこんな幽霊話になるわけないわ」
「もうやめてよ!! いいじゃない、なんだって!!」
私はいい加減にして欲しくて思わず声をあらくする。
「あ、ごめんごめん。もうやめる」
「うんうん、詩織は怖がりだもんねぇ。どうせなら仲西君に怖ーい助けてってしがみつけば好感度アップなのにねぇ」
二人が笑っている。
ひどい。
二人して私をからかっているんだわ。
まったく・・・
「ボクがどうかしましたか?」
操舵席の隣にいたはずの仲西君がひょいと顔を出す。
私は何となく気恥ずかしくなってしまい、顔をそらす。
「お、これは脈ありですかな姫子(ひめこ)さん」
「うむうむ、晩熟の詩織にも春の到来かにゃ」
二人は顔を見合わせてニヤニヤしている。
くぅー・・・
「いい加減にしてー!!」
私は先ほど手に取ったコーラの缶を思いっきり投げつけた。

「痛たたた・・・」
「ごめんなさいごめんなさい」
私は一所懸命に謝りながら、濡らしたタオルで仲西君の額を冷やす。
やけくそで投げた缶コーラがまさか仲西君に当たっちゃうなんて・・・
「もういいですよ。大丈夫ですから」
そう言って笑う仲西君。
三人の男性の中では一番子供っぽく見えるのは、一人称がボクだからかもしれないけど、この笑顔が少年っぽいのも事実だ。
「本当にごめんなさい」
私はもう恥ずかしいやら情けないやら何がなんだかわからない。
「おーい、そろそろ到着だぞ。あれだ」
操舵席の方から声がする。
「あの島?」
「うわぁ」
ヒー子と麻理香も声をあげる。
私も前方を見ると、ボートの行く手に近づいてくる小島が見えてきた。
島と言っても小さなもので、岩礁と言った方がいいかもしれない。
てっぺん付近に樹がいくつか生えていて、鳥がその近くを飛んでいる。
そそり立つ岩肌は切り立っていて、海岸なんてものは無く、まさに海から突き出た岩という感じ。
たぶん周囲にはごつごつした岩が海底にいいアクセントを与えているだろう。
ダイビングにはもってこいというところだわ。

「おい、樹村」
心なしか小島の方を見ていた大濱君の顔が曇っている。
「何だい?」
「あれって・・・神隠しの島じゃないのか?」
神隠しの島?
それっていったい?
「そうだよー。だからいいのさ。手付かずで自然が残っているし、島の連中は誰も来ない」
「あそこには近づくなって言われているだろ。二週間前にもボートが帰ってこなかったじゃないか」
操舵席の樹村君に苦々しい表情で訴える大濱君。
ボートが帰って来なかったって・・・ホント?
「あはははは・・・あれは沖合いに流されたんだって話だよ。ダイビングしててボートを見失うんだ。よくある話しだし、救助もされたじゃないか。神隠しなんて迷信だよ」
「だけど、助かった奴らだってウェットスーツの女の幽霊を見たって言ってたそうだし・・・」
「幻覚でも見たんだよ。窒素酔いでもしたんじゃないのか?」
樹村君はまったく気にして無いみたい。
でも大濱君は気乗りしていないようだわ。
「なあ・・・別のところにしないか? あんまりいい気分じゃねえよ」
「大丈夫だって。俺も先日潜ったし、すっげえ綺麗なんだって。なんなら大濱だけボートに残っててもいいぞ」
バカにしたような樹村君の言葉に大濱君はむっとしたよう。
「わかったよ。あんまり女性を怖がらせたらかわいそうだと思ったから言っただけだよ。別に迷信なんか信じちゃいないし、俺は潜るぞ」
「あ、それじゃ最初はボクが残るよ。誰かはボートに居た方がいいだろうし、二級免許あるからさ」
額に右手を当てたまま仲西君が左手を上げる。
そっかー。
彼って船舶免許もっているんだ。
いいなぁ。
私も取ろうかなぁ・・・
「お、いつの間に取ったんだ、このヤロー」
「つい先日。今年はみんなで船に乗るって話だったからね」
大濱君が仲西君を小突いている。
「わ、私も残ります。ちょっと船酔いしたみたいで・・・」
私は自分でも驚いたことに手を上げていた。
船酔いなんかしていないし、綺麗な海底も見たかったけど・・・
やっぱり何となく神隠しの島ってのが気になるし・・・
缶コーラをぶつけちゃった私が仲西君を置いてってのも悪い気がするしね。
「うんうん、詩織、せいぜい仲西君といちゃいちゃするんだよー」
「そうそう。『缶コーラぶつけちゃってごめんなさい。お詫びは私の躰で』ってね」
「そ、そんな」
ヒー子と麻理香のからかいに私が何か言う前に、仲西君が真っ赤になってしまう。
私もすごく恥ずかしくなって、何も言えなくなってしまった。

「それじゃ行って来るね~」
「留守番お願いなー」
「仲西君、詩織をよろしくねー」
「ま、麻理香!」
思い思いの言葉を残し、後部デッキから海に入って行くみんな。
カラフルな水着にボンベを背負っているだけなので、透明度の高いこの海ではしばらくは船上からも姿が見える。
でも、みんなが遠ざかるにしたがってやがてそれも見えなくなり、私は一休みするためにキャビンに入った。
もう・・・
ヒー子や麻理香があんなこと言うから・・・
仲西君の顔がまともに見られないじゃない。
幸いと言うかなんと言うか、仲西君は操舵席に上がってしまったので、キャビンには私一人。
みんなはしばらく戻ってこないだろうから、少しゆったりと寝そべっていようかな。
私はキャビンのソファーに横になる。
エンジンはアイドリング状態なので、とても静か。
波もほとんど無いようなものなので、ゆらゆらと気持ちいい。
夏の強い日差しもキャビンの中までは入ってこない。
はあー・・・
気持ちいい・・・

「いやぁー! た、たすけ・・・」
な、何?
私はまどろみの中から引き戻されて飛び起きる。
「仲西君! 何なの?」
私はキャビンをでて外を見る。
ヒー子?
あれはヒー子だわ!
「た、助け・・・ガボボッ」
海面に顔を出したヒー子が助けを求めている。
おかしい・・・
ヒー子は泳ぎは得意だったはず。
あれはまるで海中に引き込まれていくような・・・
「待ってろ! 今行く!」
操舵席から仲西君の声が響き、ボートのエンジンが轟音を立てる。
ヒー子のいる位置はちょっと遠い。
飛び込んで助けに行くよりも、ボートを近づけた方が早いのだ。
「たす・・・おんあ・・・ガボガッ」
必死に海面でもがいているヒー子。
でも、ボートが回頭すると、その姿が海面から消えてしまう。
「ヒー子ぉ!」
私は声を限りに叫んだ。
な、何なの・・・何があったの?
他の人は・・・他の人たちはどうなったの?
何で誰も上がってこないのよぉ・・・

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
すざまじい悲鳴が上がる。
「な、何?」
私にはもう何が何だかわからない。
何が・・・何が起こっているの?
いやだよぉ・・・
もういやだよぉ・・・
「大濱!」
仲西君が叫ぶ。
海面に姿を現した大濱君が見える。
あれは・・・
あれは何なの?
大濱君にしがみついている人がいる。
真っ黒でつやつやのウェットスーツのようなものを着ている人。
こげ茶色の髪が海面に広がって、胸の膨らみと腰の括れがその人が女性であることを示している。
ウェットスーツの女の幽霊・・・
私はぞっとした。
作り話なんかじゃなかったんだ・・・
こんな昼間だというのに・・・
「た、助けてーーーー」
大濱君の絶望に満ちた声が夏の空に響き渡る。
「大濱、待っていろー!」
ボートを旋回させ、大濱君に向かわせる仲西君。
違う・・・
あれは幽霊なんかじゃない・・・
もっと・・・
もっと性質が悪いものだわ・・・
「ああああ・・・・・・」
「大濱ー」
大濱君にしがみついた女がこちらを見た。
その目も口も全てが無表情。
まるで生きている人とは思えない。
でも・・・
幽霊じゃないわ。
女の周囲でぼこぼこと海面が泡立つ。
白い煙が周囲で立ち昇る。
「ぎぃやぁーーーーー」
苦悶の表情で大濱君が悲鳴を上げた。
「な、何なんだよ・・・なんで海が沸騰するんだよ!」
仲西君の声も震えている。
そうか・・・
あれは海が沸騰していたのか・・・
熱いんだろうな・・・
私はデッキにへたり込んでしまった。

「しっかり・・・しっかりしろ! ダメか・・・」
あ・・・
私はあれから意識が遠くなっていたらしい。
ボートの後部デッキには、仲西君が屈みこんで何か声をかけている。
「あ・・・仲西君」
私は立ち上がると、そっちで何をしているのか見に行こうとした。
「来るな!」
「えっ?」
「・・・ごめん。そこのバスタオルを取ってくれないか?」
仲西君が振り返ったその向こうには、真っ赤に焼け爛れた・・・
「ヒッ」
「見るな!」
「う、うん」
私はキャビンからバスタオルを取り、仲西君に手渡した。
「大濱はダメだった。死んだよ」
バスタオルを後部デッキに寝かせた大濱君に被せ、仲西君はそう言った。
「死ん・・・だ?」
私は膝がガクガクした。
何で?
何で人が死ぬなんて・・・
「樹村も戻ってこない。それに神無月(かんなづき)さんも綾城(あやしろ)さんも」
そんな・・・
ヒー子も麻理香も戻ってこないなんて・・・
「一度戻ったほうがいいかもしれない。ここはやっぱり神隠しの島だったんだ」
私は言葉が出なかった。

「とにかく谷島(たにしま)さんはキャビンに入っていて。無線で助けを呼んでみるよ」
「はい」
そう言って私がキャビンに入ろうとした時、ボートの周囲の海面から勢いよく何かがジャンプして来た。
まるで特撮映像でも見ているみたい・・・
膝を抱えた人間がくるくると空中で回転し、タンという音とともにボートの上に着地したのだ。
その数三人。
いずれもが真っ黒でつやつやなゴムのようなウェットスーツに首元からつま先まで覆われていて、胸の膨らみも腰のくびれもまったく隠そうとはしていない。
驚いたことに、三人のうち一人は金髪の白人であり、無表情な青い目が不気味に輝いていた。
「な、なんだ! お前たちは!」
いきなりキャビンの天井や後部デッキに降り立った彼女たちに対し、仲西君が精一杯の声を上げる。
「オトコニハヨウハナイ。ソノオンナヲツレテイケ」
まるで機械が発声したような声で金髪の女が言い放つ。
いったい彼女たちは何なの?
私たちをどうするつもりなの?

「クッ。もしもし、もしもし」
仲西君が無線機に取り付いて必死に呼びかけを始める。
これで誰かが来てくれれば・・・
「ムダナコトヲ・・・」
キャビンの天井に立った金髪の女が操舵席に入り込み、いきなり仲西君の腕をひねり上げた。
「うわあっ」
「仲西君!」
「な、なんて力だ・・・」
マイクを取り落とし、あらぬ方向に捻じ曲げられた仲西君の腕を見て、私は胸中に絶望感が沸いてくるのを止められなかった。
「仲西君!」
叫ぶ私を両側から二人のウェットスーツの女たちが取り囲む。
「あ、ああ・・・」
膝がガクガクする・・・
怖い・・・
誰か・・・誰か助けて・・・
「谷島さん! 逃げろ!」
仲西君が叫んでいる。
でも、逃げろって言われても・・・
私は動けない。
足が言うことを聞いてくれないよぉ・・・
助けて・・・
両側からがっしりと捕らえられ、私は二人の女に取り押さえられてしまう。
彼女たちのスーツからゴムくさいような香りが私の鼻腔に流れ込んだ。
「た、谷島さん!」
「オトコハフヨウ」
そう言うと金髪の女は仲西君を抱きしめる。
「えっ? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
仲西君の激しい悲鳴。
熱い風が私の顔にまで流れてきて、操舵席は一瞬にして炎に包まれる。
女に抱きしめられた仲西君は見る間に焼け爛れ、身につけていた海水パンツが燃え上がる。
「ああ・・・いやぁぁぁぁぁぁ」
どこかで悲鳴が聞こえた。
それが私の悲鳴だと気がつくのにそれほど時間はかからなかった。
ああ・・・そうか・・・
あの女は自ら熱を放出するんだわ・・・
その熱で周囲を焼き尽くすんだ・・・
きっと私も焼かれるんだわ・・・
私は両側から抱きかかえられるままに、ボートから海に転げ落ちるように引き込まれる。
海水が目や鼻、口から入ってくるけど、そんなのはもうどうでもよかった。
遠くで焼けたボートが爆発する音を聞きながら、私は暗い深淵に飲み込まれていった。

******

ひんやりとした空気に目が覚める。
ここはどこ?
オレンジ色の淡い照明が部屋の中を照らしている。
誰もいない。
四角い部屋には私一人。
硬く冷たい金属でできた壁は、少々のことでは傷付きもしないだろう。

あれからどうなったのだろう・・・
ここはどこなのだろう・・・
私はいったいどうなっちゃうのだろう・・・
心細いよぉ・・・
誰か助けて・・・
助けてよぉ・・・
私は水着の上にパーカーを羽織った姿のままの自分を抱きしめる。
私を拉致したあの女性たちは何者なんだろう・・・
私は殺されちゃうんだろうか・・・
それとも男たちに・・・
外国に売られちゃったりするのかな・・・
怖いよぉ・・・
ヒー子ぉ・・・
麻理香ぁ・・・
誰でもいいから助けて・・・

「デナサイ」
音も無く扉が開く。
スライド式のドアはこちら側には取っ手も無い。
入り口にはウェットスーツを身につけた女性が立っている。
「えっ?」
私は驚いた。
無表情で私を見下ろしているのは、ヒー子なのだ。
「ヒー子? 無事だったの?」
「コタイメイ“タニシマシオリ”。デナサイ」
私はぞっとした。
この声はあの金髪の女と同じ電子の声。
ヒー子は機械の声をしゃべっているの?
「ヒー子、ヒー子なんでしょ? しっかりして! いったいどうしたって言うのよ!」
私は立ち上がると、ヒー子の両腕を握り締める。
ゴムのギニュッという感覚が伝わってくるものの、その下にはずっしりとした重たいものが詰まっているよう。
これって・・・
ヒー子はどうなってしまったの?
「ワタシハコタイメイRW-221。ヒーコナドデハナイ」
無表情で私を見据えるヒー子。
その目はただ冷たく感情がまるで無い。
「あ・・・ああ・・・」
私は恐ろしくなって後ずさる。
違う・・・
これはヒー子じゃない・・・
ヒー子は・・・
ヒー子だったモノにされちゃったんだ・・・
「キナサイ」
「いやー」
私は差し出された手を振り払おうとしたけど、ヒー子の手はがっちりと私の手首を握り締めて離さない。
「離して! 離してよぉ!」
必死に振りほどこうとしたけど、ヒー子は無表情のまま私を引き寄せる。
「助けてー!」
そう叫んだとたんに、ヒー子の腕から電流が走り、私は再び意識を失った。

「・・・り・・・」
「し・・・り・・・」
「けて・・・おり・・・」
えっ?
私は耳にした声に目を覚ます。
えっ?
あれ?
私は起き上がろうとして起き上がれないことに気がついた。
両手と両脚が固定されているのだ。
「嘘・・・」
私は首を回して周囲を確認しようとする。
「詩織ぃー! 助けてぇー」
えっ?
見ると、私の右側に同じように手足を固定された麻理香が十の字に磔にされているのだ。
両腕を左右に広げ、両足は揃えるように固定され、パステルグリーンの水着も脱がされて、きちんとお手入れされた叢がはっきりと晒されている。
「麻理香。麻理香! 無事だったの?」
私はまったく相応しくない言葉をかけてしまっていた。
麻理香は無事なんかじゃない。
これから何かをされるんだわ・・・
まさかあのヒー子と同じに?
「詩織ぃー、助けてよぉー。誰かぁー! お願いやめてぇー!」
必死にもがく麻理香。
でも私はそれを黙って見ているしかできない。
私の両手も両脚も固定され、首を動かすぐらいしかできないのだ。
「やめて、お願いだからやめてー!」
私も必死に叫ぶ。
でも、ここには誰もいないのだ。
ここにいるのは私たちだけ。
あのウェットスーツの女たちも、ウェットスーツを着てしまったヒー子もいない。
いったいここは何なの?
私たちはいったいどうなるの?

グングンと音を立て、麻理香を固定した台が動き始める。
垂直に吊り下げられた麻理香の足元が左右に開き、ムワッとするゴムの臭いが広がってきた。
「いやぁっ!」
ええっ?
麻理香の足元に広がったのは、真っ黒な液体ゴムのプールのようなもの。
その上で麻理香を固定した台が吊り下げられているのだ。
「お願い。お願いよぉ。何でもするから助けてぇ!」
必死に身をよじり助けを請う麻理香。
私は次に起こる事を考えて目をそらしたかったが、目をそらすことができない。
やがて、麻理香を固定した台がゆっくりと下がり始め、麻理香の足元が液体ゴムのようなものに浸けられていく。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
麻理香の悲鳴が上がり、私は唇を噛み締めた。

麻理香を固定した台は、麻理香の首までを液体に沈めた。
腰のあたりが浸かるまで叫んでいた麻理香だったけど、胸のあたりが浸かる頃には叫び声を上げなくなっていた。
やがて、麻理香の周囲にいくつもの管がぶら下がり、麻理香の首筋や耳、口などに器用に侵入していった。
私は必死で吐き気をこらえながら、麻理香がどうなるかを見ずにはいられなかった。
おそらく次は私なのだ。
たぶん・・・麻理香も私もあのウェットスーツを着た女性たちのようにされてしまうのだろう。
改造?
そう・・・たぶん私たちは改造されるのだ。
そして無表情で人を焼き殺すようになるのかもしれない・・・
私は悲しかった。
でも、どうすることもできなかった。

麻理香の躰が引き上げられる。
彼女の首から下は漆黒のゴムが覆い、つま先までウェットスーツを着たようになっていた。
麻理香は一言も発せず、差し込まれた管のなすがままになっている。
時々麻理香のお腹の中でうねうねと動き回っているのが見える。
ひどい・・・
こんなのってひどすぎる。

管が外れ、麻理香を固定した台が床に横になる。
手足を固定した枷が外れ、漆黒の躰にぴったりしたスーツを纏った麻理香がゆっくりと起き上がった。
「ワタシハコタイメイRW-222。コレヨリドウサカクニンヲオコナイ、ハイチニツキマス」
麻理香の目は何も見ていないかのように正面を向いたまま、私には何も言わずに歩き出す。
私はただ悲しくて、涙があふれるのを止められなかった。

「うあ」
私の腕につきたてられる管。
そこから何かが私の中に注入される。
「うああ・・・」
躰がじんじんと熱くなる。
な、何なの?
ああ・・・
始まるんだわ・・・
私もヒー子や麻理香と同じゴム人間になってしまう・・・
でも、もうどうしようもないよ・・・
お母さん・・・お父さん・・・
ごめんなさい・・・

私を載せた台が頭を上にして引き上げられる。
張り付けられた躰が空中に持ち上げられ、徐々にゆっくりと動いていく。
始まったわ・・・
私は半ばあきらめの境地で、されるがままになっている。
どちらにしろこの手枷足枷がはずれるわけじゃないのだし、誰も助けてくれる人もいやしない。
麻理香やヒー子と同じになるのだと思えば、そう恐ろしくも・・・
いや・・・
いやよ!
「いやよぉー!」
私はどうしようもなく手足をばたつかせる。
はずれっこないけど、このままはいやー。
「おかあさーん! 助けてー!」
私は声を限りに叫ぶ。
足元には真っ黒な液体のプール。
吊り下げられた台はゆっくりと下降し始める。
みるみると近づいてくる漆黒のゴムのような液体の海。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私はただのどの奥から泣き叫んだ。

ひた・・・
私のつま先が、そして踵が黒い液体に浸けられる。
「いやぁっ」
そのまま私はずぶずぶと黒い液体に沈んで行く。
全裸の私にネットリと纏わり付いてくるゴムのような液体。
でも・・・
意外と気持ち悪いものではないわ。
むしろ・・・
一度躰にへばりつくと、そのあとは躰を優しく包んでくれるような感じ・・・
暖かささえ感じるわ。
私は何かホッとしたような緊張がほぐれて行くようなそんな感じを受けていた。
何かしら・・・
なんかとても気持ちがいい・・・
首まで液体に浸かっていると、躰に液体が沁み込んでくる感じだわ・・・

やがて私の周囲には幾本ものチューブが下がってくる。
私は躰を覆う脱力感とともにそれらをぼんやりと眺めているだけ。
首筋や肩口にちくっとした痛みが走ったものの、その周囲からもたらされる鈍痛も今の私には心地いい。
耳からはぎりぎりと何かを差し込んでくる気配を感じるのだけれども、それが何なのかもわからないし、気にしようとしても気にならなくなっていく。
口が勝手に開いて一本のチューブを咥えると、それはのどを滑り落ちてお腹の中をかき混ぜる。
ただただ躰がだるい。
目を開いているのも億劫だわ・・・
私は私自身が何か得体の知れないものに変わっていくのをうっすらと感じていたけれど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。
私の躰は作り変えられ、マスターの目的に沿うように変わっていく。
皮膚は全て皮膜と同化し、内臓は全て金属質の細胞に置き換えられる。
およそあらゆるところで活動でき、エネルギーの変換効率も生物とは及びもつかないものになっていく。
目は高解像度のカメラとなり、視覚情報を的確に伝えるセンサーとなる。
耳は音波ばかりではなく電波もキャッチできるアンテナとなり、マスターからの命令を余すことなく伝えてくる。
口からは音波を衝撃波として放射するシステムが備えられ、腕や足などの物理攻撃とともに相手を粉砕する手段となる。
体内の発電システムと発熱システムによって、一時的に電流を流すことも高温をもって周囲を焼くことも可能だ。
全てはマスターのため、その目的をただ達成するための機能。
私はマスターの道具となる。
あと1分42秒で脳の変換も終了する。
私はドールWR-223に生まれ変わる。

突然躰が揺れた。
地震?
激しい揺れが起こり、私はまどろみから引き戻された。
薄暗いホールの各所に赤いランプが輝き、何か緊急事態が起こったことを知らせてくる。
私はどのように行動すべきかをマスターに・・・?
違う。
違う違う。
私はマスターの道具なんかじゃない。
私は個体名谷島詩織。
ドールなんかじゃないわ!

私は夢中で手足の枷を引きちぎり、いくつものチューブを引きちぎる。
口の中にもぐりこんでいたチューブも引っこ抜いて、黒い液体の中に飛び込むと、そこを泳いで縁から体を引き上げる。
赤いランプが明滅する中、周囲にはドールの姿はなく、いずれもがマスターからの指令待ちの状態が窺えた。
チャンスだわ。
今ならこの基地から脱出することができる。
再び人間の世界に戻ることができるんだ。
私は急いで脱出口を探しにホールを出た。

幾人かの立ち尽くすドールたちのそばをすり抜ける。
みんな自律行動をとれないでいるんだわ。
マスターの命令は絶対。
マスターの指示が無ければドールたちは動けない。
私はこの幸運に感謝して通路を走りぬける。
躰が軽い。
筋肉はエネルギーを存分にパワーに変換して私の躰を力強く運んで行く。
この基地内の構造はわかっている。
私の頭に蓄積されたメモリーが私を正しく導いている。
一人での操作には難のある転送システムを避け、私はカモフラージュされた立て坑式の非常脱出口へ向かう。
そこがなぜ作られ、どうして必要だったのかはわからない。
けれど、そこからなら確実に外へ出ることができる。
私はパネル状のシャフトの入り口をこじ開けると、ひしゃげた金属の板を放り出して中にもぐりこんだ。

ゴム状に覆われた私の外皮はしっかりと金属の梯子を握り締めることができる。
足の指など無くなったつま先も滑ったりすることは無い。
全てにおいて行動しやすい形に作られたドールのボディ。
それが私を確実に地上へと導いている。
私はそれが心地よかった。

昇り始めて2分14秒後、私は脱出口のハッチにたどり着いた。
脱出口のハッチは二重構造になっている。
手前のハッチは簡単に開いたけど、最後のハッチを開ける前には手前のハッチを閉めなくてはならない。
ハンドル式のハッチはロックされていたけれど、私は指先に電極を形成して電磁ロックを焼ききる。
無駄なこと。
ドールの行動をとめることはマスターにしかできはしないのだ。
私はハッチを開けて外へ飛び出した。

『わぁ・・・綺麗・・・』
私は思わずつぶやいていた。
そこは満天の星空の下だったのだ。
しーんとした静けさの中、そよとも吹かぬ風の下に白い砂漠が広がっていたのだ。
周囲には樹はおろか草すら一本も無い。
寒々とした荒涼たる大地に私は立っていた。
『ここは・・・どこ?』
私はメモリーを探る。
しかし、書き込み途中だったのかこの場所についてのデータは見つからない。
『とにかくここにいては追っ手に見つかってしまう』
私は砂漠を走り始めた。
遠くに人工物のようなものが私のカメラに捕らえることができたのだ。
とにかくそこへ行ってみよう。
そうすればここがどこかもわかるかもしれない。
躰が変にふわふわするのを補正して私は走る。
きっと家ではお父さんとお母さんが心配しているに違いない。
せめて電話の一本も入れなくては。
私は両親の姿をメモリーから引き出して映し出していた。

『トマリナサイ。RW-223』
私の受信機に声が流れる。
私はその声に思わず立ち止まった。
私の行く手には二体のドール。
RW-221とRW-222が立っていたのだ。
違う・・・
違う違う。
ヒー子と麻理香が立っているのだ。
無表情の冷たい目。
マスターの命令が下ったのだろう。
私を捕らえに来たのだろうか・・・
『私はRW-223なんかじゃない。二人とも目を覚まして! 一緒に家に帰りましょう』
『オマエハRW-223。モドルノハマスターノモト』
『オトナシクシタガイナサイ。オマエハセイゾウトチュウ』
二人はまったく私の言葉を受け付けない。
当然だわ。
ドールはマスターに従うもの。
ドール同士といえども、マスターの命に反するような提案を受け入れるはずが無い。
私は覚悟を決めた。

勝負はあっけなかった。
ドールとしての能力を使いこなせていない私と、すでにドールとして完成したヒー子や麻理香とは勝負にはならなかったのだ。
私は躰のあちこちに機能不全を起こしながらも、必死で逃げた。
あの人工物のところに行けば・・・
それだけを考えて私は逃げた。
ヒー子も麻理香もすでにこちらに反撃の余力が無いと見てゆっくりと近づいてくる。
もう少し・・・もう少しで助けてもらえ・・・
えっ?
あれは何?
私は映像をズームする。
奇妙に角ばった構造物。
そばに旗が立っている。
赤と白の縞模様の旗。
一画に青地に白い星がたくさんある。
星条旗だ。
ここはアメリカだったの?
いや・・・ちがう・・・
あれは・・・
あれは・・・

『あははははははは』
私は笑い出してしまった。
補正をしないと躰がふらついたのは当たり前だ。
ここは・・・
ここは・・・
私はその奇妙な人工物のところにたどり着く。
四本の足を持つ金色の物体。
側面には星条旗が描かれている。
足の一本には梯子がついており、その下には奇妙な足跡がいくつも残されていた。
折りしも地平線の向こうから巨大な青い星が昇ってきた。
私は笑いが止まらない。
青い海に白い雲がかかった巨大な星。
ああ・・・
あれは地球だわ・・・
ここは月。
ここは海。
そう・・・ここは「静かの海」だったんだ。

******

「コタイメイ“ニシハラユミカ”。デナサイ」
私はマスターの命じるままに新たなドールを作り出す。
マスターが新たなドールをどのくらい必要としているのか私は知らない。
そのようなことは考える必要がない。
私はただドールRW-223としてマスターの命令に従うだけ。
私はがっくりとうなだれた女を抱きかかえるように連れ出すと、プラントで待っているRW-221に引き渡す。
これでまた新たなドールが生み出されるのだ。
私は次の指示をマスターに求めるべく通信を試みた。


「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/08(土) 20:28:06|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<楽しんできました | ホーム | 祭り開催です>>

コメント

改めて、ご馳走様で~す!
祭りの開催に尽力された事と、いつもながら素晴らしいSSを読ませていただいた事に感謝!であります。

なるほど、海は海でもそっちの海でしたか。
やっぱり某国は月面に到達していたんですね、という事で(笑)。
月だけに、ドールの皆さんはバニースーツ着用だったりして(笑)、失礼しました~。
  1. 2007/09/08(土) 22:50:37 |
  2. URL |
  3. 空風鈴ハイパー #-
  4. [ 編集]

>>空風鈴ハイパー様
あの最後のシーンで驚愕していただければ、それだけで満足です。
バニースタイルは考えなかったですねー。
失敗でしたー。(笑)
  1. 2007/09/09(日) 19:57:48 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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