フリースクール性被害裁判の原告女性による推薦図書をご紹介していきます。
前回の動画編に続き、不登校保護者会では、先日のフラワーデモに参加した有志と事務局の保護者たちで分担して、実際に読んでみました。それぞれの図書の紹介には、私たちの感想もまとめてあります。
不登校の女の子が性被害に遭ってから立ち上がるまでに助けになった本のなかから、今回は前編です。
目次
- 1. 『メグさんの男の子のからだとこころQ&A』
- 2. 『女の子、はじめます。: ココロとカラダの成長ログ』
- 3. 『「いや!」というよ!―性ぼうりょく・ぎゃくたいにあわない 』
- 4. 『いいタッチわるいタッチ(だいじょうぶの絵本)』
1. 『メグさんの男の子のからだとこころQ&A』
カナダの看護師メグさんが、思春期の男の子に向けて性の悩みや疑問に答えてくれる本です。
「性の話は科学的にしたら恥ずかしくないよ。」
「人の体はそれぞれだから人と違うかもと悩む必要なないよ。」
「先輩の話や雑誌の広告、お金もうけのためのポルノに惑わされないで。」
と子供の気持ちに寄り添いながら正しい知識を教えてくれます。
男女の間での同意については、
〈嫌なら「いやだ」と言うべき。「いやだ」と言う人の気持ちが優先されるべき。〉
とあります。
これに関しては、「いやだ」と言えなかった場合に自分を責めてしまう子がいるかもしれない…と少し気になりました。
子供向けの同意の動画のように、
〈意思を尋ねてみて両者が「いいよ」と言った場合に同意が成立する〉
ことを補足した方が良いかもしれません。
(「いやだ」と言うべきなのがより現実的なのも分かりますが)
「セックスは男らしさの確認や力の証明のためにするものではない。」
とありました。
性被害にあった場合の話でも、
「別の被害者を出さないためにも大人に言うべき」
と毅然とした態度と勇気を後押しする姿勢が印象的でした。
- 「図書館で借りられたので読み始めました。」
- 「良いですこれ。これ私も買う!」
2. 『女の子、はじめます。: ココロとカラダの成長ログ』
女の子、はじめます。: ココロとカラダの成長ログ | カーリル
思春期にさしかかる女の子のためのこころと身体をイラストや漫画で丁寧に産婦人科医の北村邦夫医師が解説しています。
ファッションやコスメ記事が導入部にあり、女の子のファッション誌テイスト。
一番大切だと感じたのは、自他境界線の問題に触れているところ。
p.123
「つきあう」ってどういうこと?
つきあう相手は所有物じゃないよ。
全部同じでなくていい。
p.124
動物学者モリスの12段階を引用して、出会いから性行為に至るまでの過程を12のステップで解説しています。どんな段階でも大切なのは、「イヤ」と言える関係です。
p.134
セクスティングについて
ネットで自撮りを送るように強要されることへの注意喚起
性感染症についても詳しく記載があります。
男性性器、性欲、自慰に関する解説も思春期の女の子目線で解説されています。
他に、
男の子の生器、性欲について。男の子の性欲について、はっきりNOといいましょうとも。男の子、女の子の自慰について、必要なことであり、自然なことである。
自分の意思で射精をコントロール出来ない男性との性交は、望まない妊娠に直結しますと。
恋とは愛とはなにか。
いやと言えない関係はいけない。
漫画が4作品
・乳首について
・月経について
・女らしさおとこらしさ
・初めてのセックスについて
全体的に、「学校で教えてくれない性教育本」というイメージでした。
- 男女交際についてしっかり学べる。これはいいですね!!
- すごく女子っぽい解説。女子女子してる。この表紙だから好き嫌いあるかと。
- 少女雑誌に載っていそうな感じの書き方ですね。
- 完璧とも言える網羅。全然教わったことがありません
- なんか…女の子って大変だな
- 娘をもつ父親としては圧倒されます。さすがにパパから娘に読み聞かせはできんが、振り仮名ついてるし、そっと本棚のどこか微妙に目につく位置に常備しておくべき本かも。
3. 『「いや!」というよ!―性ぼうりょく・ぎゃくたいにあわない 』
「いや!」というよ!―性ぼうりょく・ぎゃくたいにあわない (じぶんでじぶんをまもろう)
- 作者: 嶋崎政男,すみもとななみ
- 出版社/メーカー: あかね書房
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 大型本
「いや!」というよ!―性ぼうりょく・ぎゃくたいにあわない | カーリル
かなりしっかりしていて良いと思います。
- 女の子が下校時に物陰に引っ張り込まれるなど、連れ去られそうになった時の具体的対処法
- 男の子が親類男性に性器を触られる
- 親による子への心理的虐待
- 親による子への躾名目の暴力
が紹介されています。
「先生の声掛けがいつもと違う」という違和感は大事だと思いました。
顔見知りからの被害は、知らない人からよりも多いと言われます。
子どもに性被害を打ち明けられたとき
子どもが思い切って打ち明けても、親が動揺して子を叱るようなことを言ってしまいがちです。「よく話せたね」「話してくれてありがとう」と言えるようにしたいと思います。
「嫌なことをされたら、秘密と言われても秘密にしなくていい」
と教えることも大事。「嫌だ」と言う、信頼できる人に伝える。
性暴力ではない虐待についても紹介されています。
- 子どもへの性暴力防止を考えると、どうしても子どもの権利にたどり着きます。
性暴力から身を守るためには「自分の心と体は自分のもの」が初歩ですが、「日頃世話になっている親・親戚・先生から『秘密だよ』と嫌なことをされたら、秘密にする必要はない。嫌だったらNoと言おう」と教えるのは、子どもの権利を教えるということですよね。 - 個々の性暴力だとか虐待事案について世論は怒り叩きますけど、子どもの権利を守らなければならないという話になると、皆途端に引いていくというか、文句を言い始めるのはなんなんでしょう。日本社会は、未成年者の人権を制限しないと安定しない構造なんでしょうか。
- 自分の個人的な怒りを加害者叩きで晴らしているだけの人もたくさんいますね…
性犯罪も虐待もスクールハラスメントも子供の人権の問題だと認識しています。 - 躾を名目にした暴力の部分、呼吸するようにやってる親御さんたくさんいると思います。批判的なことを言ったとしても「そんな綺麗事では子育てできない」となってしまうので難しいところです。
- 「子どもが受けた性被害を、親としてどう受け止めたらいいのか」はとても大事な問題ですね。なんの心の準備もしていないと、動揺して「どうして」「なんで」と逆に追い詰めてしまうこともありうる。
4. 『いいタッチわるいタッチ(だいじょうぶの絵本)』
いいタッチわるいタッチ (だいじょうぶの絵本) | カーリル
常に初歩的な内容、初めの一歩で、未就学児向けです。
水着で隠れる場所は、自分だけの大切な場所。触って良いのは自分だけ。(プライベートゾーン)
大切な場所は、自分で洗おう。
「触られた時に気持ちがよくても、心が変だと思ったら、誰かにすぐに話して。」
友だちのキックやパンチ、押したりつねったり、耳を引っ張ったり、お兄ちゃんがくすぐってやめてくれないのも、わるいタッチ。
自分の心と自分の体は、自分のものです。
全部ひらがな表記で、幼児向け。小学校ではプールの授業があるので、就学前に教えておきたい基礎知識だと思います。
「いいタッチわるいタッチ」の概念は基礎中の基礎であるらしく、『「いや!」というよ! 』の中にも出てきます。
- 「いいタッチわるいタッチ」幼稚園保育園で読み聞かせしてほしいですね。
- ジャレてるつもりのちょっかいも、相手が嫌だと思えば悪いタッチになる。
- これは小さいときから教えておきたいし保育の場でも共通認識になっていてほしいです。
- 改めて息子に言い聞かせたいことでもあります。
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教師たちにも、「わるいタッチ」は許されないという認識が欠けている。そもそも、学校関係者にはこの「自分の心は自分のもの、自分の体も自分のもの」という認識があるか?児童生徒にそう教える気があるか?
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児童生徒が「自分の心は自分のもの、自分の体も自分のもの」という考えをしっかり持つようになり、それが当たり前と教師が認識していたら、危険な組体操や細かすぎる校則を強要することは初めからできないはず。
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「いいタッチわるいタッチ」は、ソーシャルスキルの第一歩だと思います。性教育はソーシャルスキルと密接に関係しています。