ビートルズ以外も存在しない世界
自分以外の人間が「ザ・ビートルズ」の存在を知らない世界の話。
映画イエスタデイは設定からしてワクワクした。
世界中の誰もが知っている音楽が存在しない世界。その世界はどうなっているのか。
細かいことを指摘するならば、脚本の詰めが甘い部分やツッコミどころもあった。
それでもこの映画を観た自分は良い映画だと思った。ザ・ビートルズへの愛や音楽への愛を感じたから。
ザ・ビートルズ以外にも存在が消されたものもある。映画の中ではオアシスも存在しないことになっていた。
オアシスはザ・ビートルズから多大な影響を受けている。それは本人達も公表していることで、自ら「俺らはネクストビートルズだ」と発言したこともある。
ザ・ビートルズから影響を受けた音楽はザ・ビートルズがいなければ生まれなかった。そのため映画の世界ではオアシスも存在しないということなのだろう。
ザ・ビートルズに影響を受けたバンドやアーティストはたくさんいる。つまりオアシス以外にも存在しないことになったアーティストはいるはずだ。
ザ・ビートルズの出身国イギリスのアーティストだけでなく、日本のアーティストも。
チューリップ、消滅
『青春の影』や『心の旅』などの名曲を生み出したチューリップ。
ザ・ビートルズに多大な影響を受けているバンド。『青春の影』の演奏は『Let It Be』をイメージして、日本のポップスとして昇華しているように思う。
コーラスワークや演奏面でも強い影響を感じる。きっとザ・ビートルズがいたからこそ生まれた音楽だと思う。
つまり、チューリップも消滅する。
奥田民生、ユニコーン、PUFFY、消滅
奥田民生もザ・ビートルズの影響を受けている。
「And I Love Car 」というザ・ビートルズの「And I Love Her」のタイトルをパロディした楽曲もある。
ユニコーン時代には「I'm A Loser」とザ・ビートルズと同じタイトルの楽曲をデビュー曲として発表した。
つまり奥田民生もユニコーンも消滅する。
ついでに奥田民生が楽曲提供しザ・ビートルズのオマージュを盛り沢山に詰め込んだ「これが私の生きる道」を歌っているPUFFYも消滅する。
大げさに言うのならばきっとそう言うことなんだろう。
斉藤和義、消滅
奥田民生だけでなく日本のロック&ポップスに大きな影響を与えたベテランは他にも消滅する。
「僕の見たビートルズはTVの中」という曲でデビューした斉藤和義。存在しないバンドをテレビで観ることはできないので、この曲が生まれることもない。
短くなるスカートは良いとしても僕の見た斉藤和義は消滅。
真心ブラザーズ、消滅
ビートルズ関連のタイトル曲を出しているアーティストは他にもいる。
真心ブラザーズには「拝啓、ジョン・レノン」という楽曲がある。ジョン・レノンへの愛を捻くれた視点で歌っている名曲。
ジョン・レノンがミュージシャンとして存在しない世界ではこの曲も存在しない。つまり真心ブラザーズも消滅。
それでも素晴らしきこの世界と思えるだろうか。
ミスチル、消滅
歌詞の中にザ・ビートルズに関連のワードを出しているアーティストもいる。
Mr.Childrenもザ・ビートルズに影響を受けているバンドであり、歌詞に関連するワードを入れている。
lookin' for love 今建ち並ぶ街の中で
口ずさむ「ticket to ride 」
あきれるくらい君へのメロディー
「CROSS ROAD」ではこのように歌っている。「ticket to ride 」はザ・ビートルズの曲名。つまりこの曲も生まれることはなかった。
ミスチルは「ticket to ride」が大好きな曲なのだろう。「名もなき詩」では曲始まりのドラムのリズムパターンを「ticket to ride」から引用している。
ミスチルの代表曲の1つである「Tomorrow Never Knows」はザ・ビートルズにも同名のタイトルがある。おそらくタイトルを引用したのだろう。
ということで、ミスチル、消滅。
ザ・ビートルズもミスチルも存在しない。彼らに会うことのできない時間が果てしなく続くイノセントワールド。
RADWIMPSも[ALEXANDROS]も消滅
ザ・ビートルズに直接影響を受けていないとしても、間接的に影響を受けたアーティストもいる。
オアシスから影響を受けたRADWIMPSや[ALEXANDROS]も消滅する。
RADWIMPSのフロントマンである野田洋次郎はオアシスがいなければ音楽の道を志さなかったかもしれない。
野田洋次郎が初めてギターで弾いた曲はオアシスの楽曲。オアシスの楽曲でギターを練習しコードを覚えた。
ライブでもオアシスの楽曲をカバーしたこともあるし、影響を受けたことも公言している。
ザ・ビートルズがいなければオアシスも存在しないのでRADWIMPSも存在しない。この世界でのラッドは全然全部なくなってチリヂリになり消滅。
[ALEXANDROS]もフロントマンの川上洋平がオアシスからの強い影響を公言している。ライブでオアシスの楽曲をカバーしたこともある。
川上洋平はオアシス関連のトークショーに出演した際にオアシスのアルバム「モーニング・グローリー」を生涯のベストアルバムだと発言していた。
つまり彷徨って途方に暮れたって[ALEXANDROS]は消滅する。
そういえば藤原さくらもポール・マッカートニーを敬愛している。藤原さくらも消滅するはずだが、彼女は可愛いので消滅させたくない。
藤原さくらは消滅しない。彼女とは歳をとっても皺になっても一緒にいたい。
ザ・ビートルズ以降の音楽、全て消滅
映画イエスタデイの公式サイトには映画の感想やザ・ビートルズへの想いについてミュージシャンや音楽関係者からのコメントが寄せられているページがある。
■佐藤拓也(androp)
■渋谷陽一(rockin’on代表)
■曽我部恵一(サニーデイサービス)
■ダイアモンド☆ユカイ(シンガー)
■田中和将 (GRAPEVINE)
■ホリエアツシ(ストレイテナー)
■光村龍哉(NICO Touches the Walls)
■山内総一郎(フジファブリック)
コメントを寄せたミュージシャンと彼らの所属バンド、全て消滅。渋谷陽一も消滅するのでロッキング・オンも消滅。
そういえばROCK IN JAPAN FESTIVALの終演後のBGMはザ・ビートルズの「HERE COMES THE SUN」だ。日本最大の音楽フェス、消滅。
日本を代表するミュージシャンや日本の音楽シーンに影響力を持つアーティストや人物が大量に消滅してしまった。悲しい。
そして、気付く。
ロックやポップスをやっていてザ・ビートルズから影響を受けていないミュージシャンはいないのではないだろうかと。
奥田民生やミスチルのように直接ザ・ビートルズに影響を受けたアーティストもいる。RADWIMPSのように間接的に影響を受けたアーティストもいる。
彼らは日本を代表するミュージシャンであり、大きな影響力があり多くのフォロワーを生み出した日本のミュージシャン。
民生やミスチルから影響を受けた中堅アーティストはたくさんいる。ラッドから影響を受けた若手バンドも少なくない。
ザ・ビートルズ以降に登場したミュージシャンのルーツを辿ると、直接ではなくとも間接的に全員が影響を受けているはすだ。
世界中からザ・ビートルズ以降に生まれた音楽は全て消滅してしまうのではないだろうか。ザ・ビートルズはそれほどのモンスターバンドであり偉大な存在なのだ。
ザ・ビートルズが居ないだけでも最悪なのに、そんな世界は最悪だ。
でも、もしかしたら他のバンドが世界を変えるような音楽を鳴らしていたのかもしれない。その世界ではザ・ビートルズの存在した世界とは全く違う音楽が人々に聴かれているのかもしれない。
それはそれで面白いかもしれない。
ザ・ビートルズが居ない世界でも、あるがままに音楽は鳴っているのかもしれない。Let it be。
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