世界中の中年男から嫌われるスウェーデン16歳少女グレタさんに強い味方 レオ様がサポートを宣言
レオ様がグレタさんに心強い味方に(c)leonardodicaprio
「誰か大西洋を戻るのを手伝って」
[ロンドン発]地球温暖化対策の加速を訴えて金曜日の学校ストを始め、北米経由で国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が開かれる南米チリの首都サンティアゴを目指して旅を続けていたスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさん。
サンティアゴの地下鉄運賃引き上げが反政府デモの炎をチリ全土に拡大させたため、チリ政府はCOP25の開催を断念。会議の開催地は急遽、サンティアゴからスペインの首都マドリードに移されることに。大西洋をヨットで横断してチリに向かっていたグレタさんもUターンを余儀なくされています。
グレタさんは今月1日こうツイート。「COP25がサンティアゴからマドリードに正式に移動したので助けが必要。世界の半分を旅してきたが、道を間違えました。11月中に大西洋を横断する方法を見つけなければなりません。誰か私が大西洋を渡るのを手伝ってくれると感謝します」
As #COP25 has officially been moved from Santiago to Madrid I’ll need some help.
It turns out I’ve traveled half around the world, the wrong way:)
Now I need to find a way to cross the Atlantic in November... If anyone could help me find transport I would be so grateful.
-> https://twitter.com/pespinosac/status/1190278695547809792 …
新たな開催国スペインのテレサ・リベラ・ロドリゲス環境移行相はツイートでこう応じました。
「親愛なるグレタ、あなたをマドリードに迎えられるのは素晴らしいことよ。あなたは長い旅をして、私たちが懸念を持ち、心を開いて行動を強めるのを助けてくれました。今度はあなたが大西洋を横断して戻ってくるお手伝いをしたいと思います。実現するために連絡を取りたいです」
Dear Greta, it would be great to have you here in #Madrid. You've made a long journey and help all of us to raise concern, open minds and enhance action. We would love to help you to cross the Atlantic back. Willing to get in contact to make it posible. https://twitter.com/GretaThunberg/status/1190290034131267591 …
「よくもそんなマネができるわね(How dare you!)」
グレタさんはヨットで大西洋を2週間旅したあと、9月に米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席。「私たちは大量絶滅の入り口にいるというのに、どうしておカネや永遠の経済成長というおとぎ話を語ることができるの。よくもまあそんなマネができるわね(How dare you!)」と世界中の大人に向かって啖呵を切りました。
温室効果ガスの排出を避けるため空の旅を拒否したグレタさんはヨットや電車、電気自動車でチリへの旅を続けていました。北米にヨットで渡ってからは電車と米人気俳優で元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏から借りた電気自動車で旅を続けています。
英国ではメーガン妃の38歳の誕生日を祝うためスペインのリゾート・イビサ島にヘンリー王子(王位継承順6位)とメーガン妃の2人がプライベートジェットで往復。
ダイアナ元皇太子妃と親しかった人気歌手エルトン・ジョン氏に招かれて南仏ニースの別荘で7泊した際もプライベートジェットで往復したことから「2人は環境保護を訴えているのにプライベートジェットで温室効果ガスをまき散らした。言っていることとやっていることが違う」と激しく叩かれました。
グレタさんはいくら急いでいてもメーガン妃のようにプライベートジェットを使うわけにはいきません。COP25は12月2~13日にマドリードで開催されます。まだ時間の余裕はあります。そして心強い味方が現れました。
「彼女は私たちの時代のリーダー」
気候変動対策を訴える米人気俳優レオナルド・ディカプリオ氏がグレタさんと会って、インスタグラムで「彼女は私たちの時代のリーダーです」と強調したのです。
「人類の歴史上、このような重要な瞬間に、このような変化に富んだ方法で声が世界中に広がることはほとんどありません。しかしグレタさんは私たちの時代のリーダーになりました。 歴史は私たちが今日何をしているか審判するでしょう」
「いま当たり前のことと受け止めている住みやすい地球を将来の世代も享受できることを私たちは支援しているのか。グレタさんのメッセージが、何もしないで許された時間はもう終わったのだという世界中の指導者に対する警鐘になることを願っています」
「 グレタさんをはじめ世界中の若い活動家のおかげで、私は将来について楽観的です。 グレタさんと過ごすことができて光栄です。 彼女と私は、地球のより明るい未来が確保されることを願ってお互いをサポートし合うことを約束しました」
米国やロシアなどエネルギー資源国の首脳や中年男性、右派メディアを中心に「グレタ・バッシング(叩き)」がエスカレートしています。全米310万人の購読者を誇る米紙USAトゥデーは「ネット上の嫌悪主義者はグレタを謀略説と偽の写真で攻撃している」と伝えました。
気候変動など高度に政治化された問題ではネット上の嫌がらせを使うのは常套手段。自律型プログラムを利用し実際の人になりすましてメッセージを増幅させ、歪んだ草の根コンセンサスを作り出します。温暖化対策を訴える学者や活動家はこれまでも偽ニュース攻撃の対象にされてきました。
中年男に嫌われるグレタさん
英紙フィナンシャル・タイムズのポリティカル・コメンテーター、ロバート・シュリムズリー氏は「どうして中年男性はグレタさんを嫌うのか」というコラムを執筆しました。
シュワルツェネッガー氏やディカプリオ氏、英プロデューサー、デイビッド・アッテンボロー氏、米人気俳優マーク・ラファロ氏が同じように温暖化対策を訴えてもグレタさんほど叩かれません。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や米国のドナルド・トランプ大統領もグレタさんに厳しい目を向けます。
プーチン大統領は「グレタさんに現代世界は込み入っていて複雑なことを話してやる人が誰もいない」「アフリカやアジア諸国の人々はスウェーデンのように豊かになりたいと望むが、太陽光発電で行うのか。途上国がそうした技術を利用するのは難しい」と批判しました。
トランプ大統領も地球温暖化について考え方が全く異なるグレタさんについて「彼女は明るくて素晴らしい未来を見つめるとても幸せな少女のようだ。とてもうれしい」とツイートで冷やかしました。
米エネルギー情報局によると、世界最大の産油国(日産量)は米国で約1504万バレル。3位がロシアの約1080万バレル。ワールドアトラスによると2012年時点で、石炭の産出量でも米国は世界2位の9億2200万トン、ロシアは6位の3億5480万トンです。
世界中で黄色ベスト運動が起こる
著書『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』で知られるデンマークの政治学者ビョルン・ロンボルグ氏はオーストラリアの全国紙オーストラリアンに「2050年までに温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする政策が真に追求された場合、世界中で『黄色ベスト運動』が起こるだろう」と書きます。
カーボンエコノミー(炭素経済)にどっぷり浸かる低所得層や肉体労働者にとっては「豪華ヨット」に乗って大西洋を横断したグレタさんは浮世離れした存在です。
COP25の開催国が変更されるのは初めてではありません。
もともとの開催国だったブラジルは、アマゾンの森林火災を野放しにしたと非難されたジャイル・メシアス・ボルソナロ大統領が誕生してから撤退を表明。同大統領の側近は「気候変動はドグマ(独断的な説)だ」「文化マルクス主義だ」と非難しています。
チリはセバスティアン・ピニェラ大統領が「南米のオアシス」と自画自賛するほど政治、経済が安定していました。しかし10月6日に地下鉄運賃が30ペソ(約4.4円)値上げされると発表された途端、国内の所得格差や失業、年金・保険制度、電気料金値上げ、教育制度への不満が一気に爆発しました。
チリ政府は地下鉄運賃の値上げを中止するとともにサンティアゴを含む首都圏州に緊急事態を宣言。年金・医療制度改革、最低所得の保障、電気料金の値下げ、富裕層への課税強化などの対策を発表しました。しかし混乱は収まらず、同月30日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議とCOP25の開催中止を発表しました。
こうした社会不安の連鎖にSNSが強く影響しているのは疑いようがありません。チリは日本と同じ高所得国。ブラジルは上位中所得国です。気候変動の打撃を直接受けるのは下位中所得国や低所得国です。しかし温暖化対策はエリートやリベラル、富裕層の“謀略”に過ぎないという宣伝が広がっています。
COP25がエリートや富裕層の“ドグマ”と言われないよう、温暖化対策が貧富の格差を和らげる明確なアイデアや枠組みを示す必要に迫られています。
(おわり)

