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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

アベノミクス・駆け込みなければマイナス成長

2019年11月03日 | 経済(主なもの)
 9月の経済指標が出て、7-9月期の成長率が展望できるようになったが、増税前の駆け込みを除けば、外需が弱いこともあって、基調はマイナス成長の様相を呈している。そこへ消費増税で内需圧殺に動き、天災も重なっており、10-12月期は、反動減だけでなく、深刻な事態になりそうだ。民需が崩れる中、外需は低迷、景気後退は雇用にまで及び、三度、やらずもがなの消費増税の災厄に見舞われる。そして、今回も経済対策がバラまかれ、「成長力」の強化が試みられることになる。

………
 9月鉱工業出荷の資本財(除く輸送機械)は、前月比+8.9の異様な増加を見せた。7,8月平均は前期を下回る水準にあったのに、9月が加わったことで、7-9月期の前期比は+3.0に伸びた。これは設備投資を示すものなので、おそらく、GDPの設備投資は4-6月期を超える好調ぶりを示すことになろう。もちろん、9月の異様な伸びは、前回の増税時にも見られた駆け込みと考えられ、これがなければ、前期を下回るマイナスの様相にある。

 設備投資については、もう一つの柱である企業の建設投資も、全産業活動指数を見る限り、既にピークアウトしていて、非製造業での設備投資も頼りにならず、ソフトウェアや研究・開発が堅調にあるとしても支え切れない。今後の資本財(除く輸送機械)は、生産予測は上振れしているものの、前回増税時と同様、2,3か月は反動減が出ると思われ、むしろ、成長の足を引っ張ることになろう。

 消費に関しては、9月に大きな駆け込みがあったことは、言うまでもない。そのため、7-9月期は、高い伸びになって、GDPを上ブレさせることになる。しかし、内閣府・消費総合指数、日銀・消費活動指数ともに、7,8月平均の前期比はマイナスであり、9月の高い伸びによって、7-9月期が大きめのプラスになったとしても、消費の基調は、増税前にして、マイナス圏内にあると考えるべきであろう。

 こうして、設備投資と消費という内需の柱がマイナスの様相にあり、7-9月期の外需が、韓国からのインバウンドの減少が響いて、ニッセイ研の斎藤太郎さん、第一生命研の新家義貴さんともに、マイナス寄与という予想になっていることを踏まえれば、駆け込みを除く日本経済の実態は、マイナス成長であると見ざるを得ない。そこへ消費増税をして、デフレ圧力を加えるのだから、深刻な事態になると考えるのが当然なのである。

 雇用については、9月の労働力調査で、とうとう失業率が上昇するに至った。+0.2の2.4%である。特に、男性の雇用者の-33万人が大きい。既に、男性の就業者は今年の初めから頭打ち状態になっていたが、雇用者も停滞に入ったようである。9月の新規求人倍率は2.28倍と、前月比-0.17となった。2.2倍台は2年ぶりの低水準である。これにより、7-9月期の新規求人倍率は、2四半期連続の低下となった。

 産業別の求人を見ると、多くの産業で求人増加数の前年比がマイナスなのだから、当然であり、とりわけ、製造業、卸・小売業、その他サービス業での減少が目立つ。増えているのは、医療・福祉と建設業であり、ある意味、財政の緊縮の緩い部分でのみ、雇用が増していることになる。10月の消費者態度指数では、雇用環境のみが下がり続けており、アベノミクスで初の40台割れが目前だ。ここまで悪化は放置されてきたのである。

(図)


………
 日本のいつもの経済運営ではあるが、緊縮で景気を悪くして対策を打つくらいなら、初めから緊縮をしなければ良い。消費を圧殺した上で、強化される「成長力」とは、一体、何のためにするものなのか。少なくとも、国民生活を豊かにするものではない。そもそも、投資だけを高めることはマクロ経済では不自然だし、無理に高めたところで、経済を不安定するだけだ。そんな賽の河原で石を積むようなことを、ミクロと同じと信じて、犠牲を払い続けてきた。緊縮を緩めて対策を避ける無難な道は、かくも取るべくもないのか。


(今日までの日経)
 製造業、下方修正相次ぐ。減税措置でも新車販売24%減 10月。成長強化・防災で経済対策 首相、策定指示へ。日本化しないドイツの幸運。

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1 コメント

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男性雇用者数の変化 (平家)
2019-11-03 11:37:11
景気に遅れて変化する傾向のある雇用の拡大の頭打ちは警戒すべきだと思います。ただ、私の読み間違いでなければ調査では男子雇用者数は3万人増加しています。正規は減っていますが。

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