ほかにも11月は、東南アジア諸国連合(ASEAN)+3首脳会議や東アジア首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議が予定され、安倍首相と文大統領も出席する。
だが、今の状況では、日程が立て込んでいることもあって、これらの会議に合わせたタイミングでの日韓首脳会談の開催は不可能とみられる。
とはいえ12月には中国で日中韓首脳会議が開かれる。日本側も同月24日前後に、日韓首脳会談が開かれる可能性が高いとみている。
ただ、それまでに徴用工問題や輸出規制、日韓GSOMIAといった懸案を解決するめどが立たなければ、形式的な会談に終わる可能性も残されている。
それどころか、年末から年始にかけては元徴用工らへの損害賠償を命じられ、差し押さえられている日本企業の韓国内資産が現金化される可能性もあり、関係はさらに悪くなるかもしれない。
一方で、日韓関係が好転しないことを喜ぶ勢力もいる。
韓国政府は10月22日、ロシアの軍用機6機が韓国の防空識別圏に侵入したと発表したが、一部は朝鮮半島東側の鬱陵島と、日韓が領有権を争う竹島の間を飛行した。ロシアは7月にも、竹島周辺の領空を侵犯した。
こうした問題が日韓関係をぎくしゃくさせることにもなりかねない。
関係筋の1人は、「日本がロシアに抗議すれば、竹島の領有権を主張している韓国が日本に怒るという構図。日韓を離間させる狙いが含まれている」と語る。
北朝鮮が10月2日に日本海に向けて発射した潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)は、竹島周辺の、日韓が自国の排他的経済水域(EEZ)だと主張し合う係争海域のほぼど真ん中に落ちた。
北朝鮮は難航する米朝協議を受け、年明けから「新たな道」として核実験や弾道ミサイル発射実験を再開する構えも示唆しているが、対北朝鮮に対する姿勢の違いからも、日韓が再び対立色を強める懸念はなしとはいえない。
韓国政府元高官は、「韓国は李洛淵首相を派遣してまで対話を呼びかけた。日本が冷淡な反応を取り続けると、また対日強硬論が頭をもたげるのではないか」と懸念する。
「21分会談」で踏み出した「信頼関係再構築」の足元は脆弱だ。
(朝日新聞編集委員 牧野愛博)