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【社会】

住民怒り「ぞっとする」 飛行停止求める声 岩国米軍機 違反横行

 「ぞっとする」「あるまじき行為」。米海兵隊岩国基地所属の戦闘機部隊で、手放し操縦など悪質な規則違反が横行していた実態が明らかになった。地元の山口県岩国市民は憤りをあらわにし、米軍機の飛行停止を求める声も。昨年十二月に米軍機の墜落事故があった高知県の自治体担当者も安全性への懸念を示した。

 岩国基地は在日米軍再編に伴い、米軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機約六十機の移駐が昨年完了。極東最大級の航空基地になった。基地の監視活動を続ける元岩国市議の田村順玄(じゅんげん)さん(74)は「危険極まりない行為だ。事故につながる恐れがあり、すぐに飛行を停止すべきだ」と憤る。

 機能強化に反対してきた市民団体の顧問久米慶典(けいすけ)さん(63)は「パイロットがここまで堕落していたのは衝撃で、ぞっとする。どう再教育するか、国や市は徹底的に確認すべきだ」と訴えた。

 会社経営の男性(52)は「米軍人との交流行事を通じて市民との良い関係が築かれつつあっただけに残念だ」と話した。

 高知県では昨年十二月、室戸市沖に米軍機が墜落した。市の防災担当者は「常識の範囲としてあり得ない。人に危害を加えうる、あるまじき行為だ」と批判。県危機管理・防災課の江渕誠課長は「安全確保の徹底に努めてほしい」と話した。

◆沖縄「他に複数あるのでは」

 米軍基地が集中する沖縄では二日、「許しがたい」「他にも表に出ていない規則違反が複数あるのでは」と憤りの声が上がり、日本政府に対応を求めた。

 「米軍は事故に慣れてしまっている」。沖縄平和市民連絡会の城間勝事務局長(74)は、緊張感を欠いた米兵の訓練の実態を知り、あきれたように語った。沖縄では米軍機の部品落下などのトラブルが多発しており、「米国に物を言えない日本政府のあり方が問われている」と述べた。

 沖縄平和運動センターの大城悟事務局長(56)も「怒り心頭だ。日本政府は遺憾と言うだけでなく、飛行を停止させるなど、行動で示すべきだ」と語気を強めた。

◆日本政府も驚きと憤り

 日本政府や与野党では二日、米海兵隊岩国基地所属の戦闘機部隊で規則違反が横行していた実態に、驚きと憤りが広がった。野党幹部は国会論戦で追及する意向を示した。防衛省幹部は「初めて聞いた。米軍は『部隊単位の話』とするかもしれないが、うやむやではいけない」と強調した。

 航空自衛隊の関係者は「睡眠導入剤の成分が出たという部分が、とりわけ恐ろしい」と指摘。自民党の中谷元・元防衛相は共同通信の取材に「規律やモラルの維持に対する米側の認識が極めて甘い。さらに詳細に軍に調査、報告を求めるべきだ」と語り、事故防止に最善を尽くすべきだとした。

 立憲民主党の福山哲郎幹事長は「由々しき問題だ。米軍に猛省を求める。日本政府には米国への毅然(きぜん)とした態度を求めたい。国会で追及したい」と取材に述べた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は神奈川県海老名市で記者団に「米軍には日米地位協定で特別な地位が認められているのに、こういった状況では国民の納得が得られない」と指摘。地位協定の見直しに早急に取り組む必要性があるとした。

 日米関係に詳しい政府関係者は「米軍はすぐに事実を認めない可能性がある」と予防線を張った。

 

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