『連続テレビ小説「なつぞら」総集編(後編)』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド)
- 千遥
- イッキュウ
- ソラ
- 家族
- 坂場
- キックジャガー
- レイ
- 大丈夫
- 泰樹
- 本当
- 魔女
- 結婚
- 北海道
- グレーテル
- ヘンゼル
- 一緒
- お姉ちゃん
- キアラ
- ママ
- 十勝
『連続テレビ小説「なつぞら」総集編(後編)』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?
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アニメーターとして活躍するなつ(広瀬すず)は、坂場(中川大志)との結婚、そして出産を経て新しい家族をつくっていく。そんな時、妹の千遥(清原果耶)が突然、現れる。
詳細情報
番組内容
なつ(広瀬すず)は、アニメーターとして数多くの作品に挑戦していく。そんな中、なつは坂場(中川大志)と結婚、出産を経て新しい家族をつくっていく。子育てと仕事に悩むなつは…。あるとき妹の千遥(清原果耶)が突然、なつの前に現れる。なつは兄の咲太郎(岡田将生)と千遥に会い…。そして自分のつくりたい作品のために東洋動画を辞めたなつは、麻子プロに入社する。その後、なつたちは北海道・十勝を訪れる。
出演者
【出演】広瀬すず,松嶋菜々子,藤木直人,岡田将生,清原果耶,中川大志,安田顕,仙道敦子,小林隆,音尾琢真,北乃きい,戸次重幸,柄本佑,吉沢亮,山田裕貴,大原櫻子,清原翔,福地桃子,比嘉愛未ほか
原作・脚本
【作】大森寿美男
音楽
【音楽】橋本由香利
昭和34年の5月です。
東洋動画入社から およそ3年。
なつは 2本の漫画映画で動画を描き
順調に その腕前も上げていました。
短編映画ですか?
(仲)長編の仕事がない時に
若手の育成を兼ねて
大体 20分弱の短編映画を
作ることになったんだ。
そこで マコちゃんに
原画を任せたいと思ってる。
是非やらせて下さい。
なっちゃんにも 思い切って
原画をやらせたいと思ってるんだ。
えっ?
もう一人 演出部の方から
つく人間もいるから
その人と3人で話し合って
進めてほしいんだ。
(ノック)
≪失礼します。
あっ。
(井戸原)そこに座って。
はい。
カチンコ君…。
(下山)マコちゃん
その呼び方は もう古い。
彼のことは
イッキュウさんって呼んであげよう。
イッキュウさん?
うん。 坂場一久でしょう?
一に久しいで イッキュウ。
どう?
そういう
くだらない話からでもいいから
3人で話し合って 何か企画を考えてよ。
(3人)はい。
そのころ 北海道で
大きな出来事が近づいていました。
あっ お義母さん 薪割りなら私が。
(照男)何してんだ? そったらこと俺が…。
(物音)
誰だ?
お姉ちゃん?
えっ 何て?
あっ いえ…。
道に迷っただけなんです。 ごめんなさい。
待って!
もしかして… 千遥ちゃん?
よく来た… よく来てくれた…。
(富士子)父さん。 千遥ちゃんよ。
お邪魔しています。
よう来たな。
いや 本当 よう来た。
なつに知らせたか?
(富士子)まだ…。
何してんだ すぐ知らせてやらんか。
なつは まだ…。
(千遥)待って下さい。
姉には どうか… 知らせないで下さい。
あっ ちょっと待って…。
姉には 会いたくないんです。
えっ…。
もしもし。
なつ… 落ち着いて聞いてね。
今 千遥ちゃんが うちに来てるんだわ。
えっ…!?
千遥ちゃんには ないしょで
なつに電話してんだわ。
どういうこと?
☎(富士子)なつには 来たことを
知らせなくてもいいって言うんだけど
そういうわけにもいかないっしょ。
千遥は 私に
会いたくないって言ってんの?
そんなわけはないと思うんだけど…。
☎(富士子)何か事情があるんだわ…。
帰れるなら 急いで帰ってきな。
うん…。
(亜矢美)あっ お帰り!
お兄ちゃんは?
うん… 連絡ついた。 すぐ帰るって。
そですか…。
とにかく よかったね!
(咲太郎)なつ!
来た 来た! お兄ちゃん!
千遥は! それで 千遥は
まだ その北海道の家にいるのか?
うん…。
あの…
突然お邪魔して すみませんでした。
そろそろ失礼します。
ちょっと待って!
すいません…。
こちらから また連絡しますから
姉には…。
☎
なつかもしれない。
えっ…。
はい。
☎(泰樹)なつか?
うん。
千遥は 今 そこにいるの?
☎(泰樹)今 代わる。
☎(千遥)もしもし…。
千遥… お姉ちゃんだよ。
お姉ちゃん?
千遥。
(千遥)お姉ちゃん。
千遥… 千遥 ごめんね…。
☎よかった…。
ねえ 千遥…
お願いだから そこで待ってて。
☎どうしても 千遥に会いたい…。
分かりました…。
私も… 会いたいです。
千遥…。
急いで なつは 十勝へと帰りました。
ただいま。 母さん!
(悠吉)いや いや いや いや…。
(菊介)なっちゃん お帰り!
ただいま。
お帰り。
じいちゃん 千遥は?
おらん。
えっ…?
おらんようになった。
どういうこと?
千遥は いないんですか? ここに。
急に いなくなってしまったの。
なしてよ!
千遥ちゃん 最初来た時
私を見てね お姉ちゃんって呼んだんだよ。
砂良さんを?
うん…。
会いたくない人なら呼ばないしょ。
どうしても会いたくて
ここまで来たってことよ。
千遥ちゃんは… いつか
なっちゃんのそばに帰ってくると思う。
あの「お姉ちゃん」っていう声は
それを望んでる声だったから。
千遥ちゃんから 手紙が来た!
えっ!?
「お姉ちゃん お兄ちゃん
急に帰ってしまってごめんなさい。
私は 子どもの頃
おばさんの家にいるのがつらくて
逃げ出しました。
お姉ちゃんや お兄ちゃんのいる
東京に行けると思ったのです。
どこかの駅で
一人の復員兵の人に助けられました。
今では 顔も思い出せないその人は…」。
(千遥)「私を自分の娘だと言って
置屋に売ったのです。
私は 今 奥原千遥ではありません。
女将さんは 私を
戦災孤児として届け出をして
自分の戸籍に
養女として迎えてくれたからです。
私は 置屋の娘になりました」。
「そんな私に 最近
結婚してほしいという人が現れました。
その時 お母さんから
兄の手紙を見せられました」。
その手紙に
お前の姉さんが住んでるっていう
北海道の住所が書いてあったんだよ。
だけどね 千遥
もし あの方と結婚するなら…。
「昔の家族とは 縁を切らなくては
ならないと言われました」。
(千遥)「私の幸せを願う
お母さんのためにも
私は 結婚をしようと思いました。
それでも 私は
最後に 北海道に行くことを
お母さんに許してもらいました」。
「もし お姉ちゃんが 今 不幸でいたなら
私は 今の幸せを投げ出してでも
助けなければならないと
そう思いました。
だけど もし幸せでいてくれたら
私は お姉ちゃんと
永遠に… 別れなくてはいけないと
そう決意しました。
その家で お姉ちゃんが
どんなふうに暮らしていたか
それを知るのに
時間はかかりませんでした」。
(千遥)「私は
お姉ちゃんの服を着て働いた時
何だか お姉ちゃんに
抱き締められて
いるような気がしました。
ここで 私まで幸せを感じて
お兄ちゃん お姉ちゃんに
会ってしまったら
別れられなくなると 怖くなったのです。
だから 私は逃げ出したのです」。
「一生 会うことは もうありません。
会えません。
どうか 皆さん お元気で。
お世話になりました。
千遥」。
(千遥)「追伸
私の記憶の中にある
お兄ちゃんとお姉ちゃんを思い出して
絵を描きました。
感謝を込めて。
ありがとう」。
(夕見子)これを 千遥ちゃんが…。
お父さんの手紙は知らないんでしょ?
えっ?
ほら あんたが そこに貼ってた
戦死したお父さんの手紙にあった絵さ。
それを知らないのに 千遥ちゃんも
同じことをしてたってことだべ?
お兄ちゃんも 東京で描いてたのさ
家族の絵を。
咲太郎さんも?
お父さんのまねして…。
あんたが絵描きになるのも
必然だったんだね。
随分 幼稚なの読んでんだ。
えっ?
あっ それ… 漫画映画の原作になるものを
探してるんだわ。
そういえば…
あんたら きょうだいって
「ヘンゼルとグレーテル」みたいだもね。
兄は 帰り道が分かるように
パンを ちぎって落としていくでしょ?
うん。
あんたら きょうだいにとって
そのパンが 絵なんだわ。
絵?
それが 自分の家に帰るための
道しるべなんだわ!
なつがやるなら これしかないべ!
私は これがいいと思うんですけど…。
「ヘンゼルとグレーテル」です。
なぜ「ヘンゼルとグレーテル」なんですか?
ヘンゼルとグレーテルは
まま母に捨てられて 道に迷い
お菓子の家を見つけたせいで
魔女に捕まってしまいます。
それで 食べられそうになっても
生きることを諦めませんでした。
何か そういう 困難と戦って生きていく
子どもの冒険を
描きたいって思ったんです。
なるほど。
面白そうですが
童話を そのまま映像にするだけなら
大した冒険にはならないと思います。
はい。
(坂場)それは これから考えましょう。
テーマさえ 明確にあれば
あとは どう面白くするか
そのアイデアを出すだけになりますから。
ちょっと待って。
やっぱり 脚本作らないつもり? えっ?
脚本を作らないとは言っていません。
脚本家を立てないと言ってるんです。
あの… 「ヘンゼルとグレーテル」でいいか
それだけでも決めない?
僕は いいと思います。
私も これをやること自体はいいです。
ありがとうございます。
ヘンゼルとグレーテルは 魔女を殺さずに
魔女から逃げ出したいんです。
逃げる?
これは 奥原さんのアイデアですが
魔女よりも
もっと悪いやつがいたらどうかと。
(堀内)魔女よりも悪いやつ?
闇の世界を支配する悪魔がいるんです。
悪魔?
森の奥に こういう高い塔が建っていて
そこに いたらどうかと。
悪魔の目的って何なんだろう?
そりゃ もちろん 魔女に代わって
子どもたち食べるんだろ?
普通に考えれば そですよね。
(神地)あ~ もう それじゃ面白くない!
オオカミは どうでしょう!?
オオカミ?
悪魔は 塔の上でオオカミを
飼っているんですよ ペットのように。
そのオオカミの餌食として
魔女は 子どもを太らせて
連れてくるように
命じられていたんです。
闇のオオカミたちです。
その前に差し出される ヘンゼル。
で どうなるの?
どうしよう?
魔女が裏切るんですよ。
えっ?
魔女が 悪魔を裏切って
グレーテルの味方になるんです! すごい!
ねえ ちょっと待ってよ!
これは短編なのよ!
そんなに 話 複雑にしてどうすんの!
季節は 初夏を迎えました。
なつたちは 「ヘンゼルとグレーテル」の
ストーリーが固まらず
生みの苦しみを味わっていました。
もう限界よ…。
あと一歩のところまで来てるんです。
結末が見えてないだけで…。
ここまで来て 結末が見えてないのが
限界だって言ってんの。
しょせん 私たちは作家じゃないのよ。
森なんですよ…。
その森で 何が起きるかです…。
♬~
ええっ!
ちょ… ちょっと ちょっと…。
う~ん…。
(坂場)どうしました?
ええっ!?
あの… うなされてたようなので
具合でも悪いのかと…。
あっ… 大丈夫です…。
ちょっと 変な夢見ただけです。
自分の魂を 木の中に込めるんだ。
その夢で 何か思いついたんです!
何を思いついたんですか?
魔女が 魔法で 森にある一本の木を
怪物に変えたらどうでしょうか!?
その怪物が
ヘンゼルとグレーテルを守るんですよ!
悪魔のオオカミたちを
やっつけるんです!
その怪物って何なんですか?
えっ 何って?
いや… 魔女が 魔法をかけただけですか?
いや あの…
その怪物が魔女なんです!
魔女の魂が 森の木に宿ったんです!
その木に守られたら
森を味方につけたことになりませんか?
あなたを信じましょう。
こういうの どうでしょう?
うん…。
うん…
いいと思います。 もっと描けますか?
はい…。
これが 最後に出てくる
木の怪物のイメージですか? はい。
よく こんなもの思いついたわね。
私の親戚が作ってる彫刻から
イメージしたんですけど。
あなたの周りには
いろんな人がいるのね。
とにかく これで
絵コンテを最後まで作ります。
はい。
よろしく。
(下山)うん…。
面白いわよ これ。
やっと やりたいことが
見えてきた気がする。
よかった…。
なつたちの短編映画が
ようやく完成に向かい
声を吹き込むアフレコの時を迎えました。
それじゃ よろしくお願いします。
「いいから
さっさと ヘンゼルを連れておいで!」。
「グレーテル 逃げよう!」。
(ヘンゼル グレーテル)「はあ はあ はあ はあ…」。
(鳴き声)
♬~
イッキュウさん。
これで満足してますか?
もっと イッキュウさんと作りたいです。
それなら 私と同じです。
短編映画を作り終えて なつたちは
しばしの休息を味わいました。
マコさん どうしたんですか?
何か 見つけました?
見つけた。
何を?
私… 結婚するの。
なっちゃんやイッキュウさんと比べると
私には 何か足りないような気がして。
それが悔しくてね。
そんなことないです!
また戻ってきたくなるような
羨ましくなるような
もっとすごい漫画映画を
これから作ってよね なっちゃん。
分かりました。
(仲)今年の1月から
テレビで放送されてることは知ってるね。
(茜 なつ)はい。
そこで うちでも
テレビ用のアニメーション
テレビ漫画を製作する
テレビ班を作ることになったんだ。
なっちゃんは 原画として
茜ちゃんは 動画として
そのテレビ班に行ってもらいたい。
もう映画には関われないんですか?
今は 東洋動画らしく
このテレビ漫画を成功させることが
何よりも先決なんだ。
坂場君は このテレビで
ようやく 演出家として
世に出られることになった。
仲さんは
あれをアニメーションだと
認めていますか?
もちろん あれは
フルアニメーションではないと思っているよ。
それを 形だけ東洋動画がまねをして
慣れてしまったら
日本のアニメーションは もう
そこから 後戻りが
できなくなるんじゃないでしょうか?
(仲)もし そうだとしても
やる価値はあると 僕は思ってるよ。
アニメーションを見る
子どもたちにとっては
フルアニメーションかどうかなんて
全く関係ないことだろ?
面白いか 面白くないか
それだけの違いだからね。
分かりました。
イッキュウさん どうしたんですか?
僕は もう…
漫画映画を作れないだろうな。
僕に対する上層部の評価が低い証拠だ…。
何を すねてるんですか!
君のことも それに
巻き込んでしまったかもしれないんです。
えっ?
それが悔しくて…。
1本くらいは 君と
長編漫画映画に挑戦してみたかった…。
この会社にいても
その可能性は もうないだろうな…。
そして 昭和40年の春を迎えました。
下山君。 君には 今度
長編映画の作画監督になってもらいたい。
原画や動画 全てを監修して
1本の作品に仕上げる
そういう責任がある者を
置こうと思ってるんだ。
そこで どんな企画をやりたいのか
演出家は 誰がいいか
それを考えて
我々に提案してくれないか。
だったら 演出は
イッキュウさん…
坂場一久君でお願いします。
彼はダメだよ。 彼には テレビを
続けてもらうことになってるんだ。
彼に チャンスを
与えてやってくれませんでしょうか?
仲さん お願いします。
失敗したら 後がないかもしれないよ。
どうしたんですか?
ちょっと…。 えっ?
長編映画を?
うん。
下山さんが 仲さんたちを
説き伏せてくれたんです。
あ そう… それは よかったですね。
もちろん 君にも テレビを抜けて
こっちの原画に
参加してもらいたいと思ってる。
そして もし…
もし この長編映画を成功させたら…
僕と!
結婚して下さい。
結婚… してくれませんか?
はい… 分かりました。
えっ… いや 本当ですか?
はい。
いや…。
映画が成功したらですよ。
それ… いる?
それから その長編漫画映画の企画は
猛烈な勢いで進んでゆきました。
(坂場)題名は まだ仮ですが
「神をつかんだ少年クリフ」です。
ある村の巨大な木に
誰にも抜けない剣が突き刺さっています。
それを ある日
一人の少年 クリフが引き抜き
村人から英雄と見なされます。
そして その村に
死神の娘であるキアラが現れます。
キアラは 父の命令で この村に
戦をもたらそうとしてるんです。
そのキアラとクリフが出会い
互いに ひかれ合うようになっていく。
戦争という運命の中で どうやって
人間が 善と悪を見極めていくか
それがテーマです。
脚本作りは遅れ 予定の8月になっても
まだ作画の作業には入れずにいました。
キアラは 戦をつかさどる神の娘で
この村に争い事をさせに来たわけですが
これだと いかにも災難をもたらしそうな
娘って感じがするじゃないですか。
どう? 何か困ってる?
仲さん…。
いえ 大丈夫です。
大丈夫ですよ。
少し内容が難しすぎないかな。
子どもたちが ついていけるかな。
大丈夫です。
ちゃんと活劇にはしますから。
アクションが面白ければ
いいというものでもないからね。
話が分かりやすければ
いいというものでもないでしょう。
そうかな。
仲さん…。
(坂場)ほかに 何か?
(仲)いや…。
生意気なようですが
好きにやらせて下さい。
責任は取りますから。
分かった。
それじゃ 成功を祈ってるよ。
何で 仲さんに
そんな失礼なこと言うんですか?
あの人に泣きついたら おしまいだよ。
永久に新しいものなんか できなくなる。
えっ…。
とにかく あなたは キアラについて
もう少し考えてみて下さい。
(坂場)違うんだ… 違うんです。
キアラのキャラクターは
こうじゃないんです!
こういう説明的で
分かりやすいキャラクターじゃないんです!
僕は もっと
アニメーターの中から湧き出てくる
そういう絵を使って
映画を作りたいんです。
早く あなたのキアラを見せて下さい。
♬~
なっちゃん。
あっ 仲さん お疲れさまでした。
なっちゃんに 頼みがあるんだけど。
頼み?
♬~
(仲)僕には分からないんだよ。
彼のやろうとしてることが
正しいのか間違ってるのか…。
自分の限界を突きつけられたみたいで
悔しいんだ…。
仲さん…。
では クリフと死神は
これでいきましょう。
(一同)はい。
奥原さん
あなたの描き直した絵はないんですか?
描けませんでした。
ある絵を見てから…。
ある絵?
これです。
これは 誰の絵ですか?
仲さんです。
仲さんが描いて 私に託してくれたんです。
(坂場)私は 今
やっとキアラに出会いました…。
ずっと これを待っていました。
参ったよな…。
俺 一瞬にして
このキアラに恋しちゃったよ。
仲さんだけが イッキュウさんの心の中を
理解していたんです。
どうしたの?
仲さん… お願いします。
仲さんの力を貸して下さい。
この作品を完成させるには
どうしても 仲さんの力が必要なんです。
どうか… キアラを描いて下さい!
いいのかい? 僕で。
仲さんにしか描けません。
お願いします。
分かった。
生意気を言って すみませんでした。
(仲)謝ることなんか何もないよ。
よし それじゃ すぐに始めようか。
はい。
その日から 徐々に ピッチを上げて
映画製作は進み始めたのでした。
そして 翌年の春は過ぎ
ようやく完成したのは夏でした。
イッキュウさんの初監督漫画映画は
大失敗しました。
(ドアが開く音)
(店員)いらっしゃいませ。
アイスコーヒーで。
(店員)かしこまりました。
お疲れさま。
映画が すごく不入りみたいだ。
みたいだね。
でも いい映画を作ったと
僕は思ってるんだ。
私も 本当に気に入ってるから。
今度は あれよりも もっと
すごいものを作ればいいじゃない。
もう作れないんだ。
会社を辞めてきた。
僕は終わった。
だから 結婚はできない。
僕のことは忘れてくれないか。
どうして?
君の才能を
誰よりも生かせる演出家になりたかった。
結局 君を幸せにする才能なんて
僕にはなかったということだ。
おかしいと思った。
えっ?
一度だって あなたに
好きだと言われたことはなかったもんね。
私は あなたの才能を
好きになったわけじゃありません!
あなたの言葉を…
生きる力を好きになったんです。
だけど あなたは違った…。
好きじゃないことを
才能のせいにしないで下さい。
そんな人とは 一緒にいたくない…。
さようなら。
♬~
なつが おかしい?
☎(亜矢美)ゆうべ帰ってきて
部屋に入ったきり
ごはんもいらないって。
(亜矢美)で 今日は 会社にも行かないの。
具合でも悪いのか?
(亜矢美)ずっと泣いてるみたい。
何だ? それは。 婚約解消ってことか!
婚約なんてしてないよ。
だけど プロポーズされたんだろ?
映画が成功したらって…。
誰か来た。
突然すみません。
何しに来たんだよ?
謝りに来ました。
帰ってくれ!
お兄ちゃん!
黙ってろ!
許してもらおうとは思っていません。
その上で もう一度
話をさせてもらいたいんです。
ゆうべ 一晩 あなたのことを思い…
あなたを失う恐怖を感じました。
あなたが… 大切なものを失う怖さを
どれほど味わってきたか…。
そのことを 一晩考えました。
たどりついた答えは…。
あなたのことが… 奥原なつのことが…
僕は
心の底から 好きだということです。
あなたのことが大好きです!
どうか… 結婚して下さい。
はい…。
喜んで。
♬~
<そして 翌年の春>
(泰樹)なつ
そったら格好で こんなとこ来るな。
汚れるべ。
じいちゃん…
長い間 お世話になりました。
ありがとうな。
ありがとうは おかしいべさ
育ててくれた じいちゃんが。
わしも お前に育ててもろた…。
たくさん…
たくさん 夢をもろた…。
じいちゃん…。
おめでとう なつ。
じいちゃん…
どうも ありがとうございました!
♬~
そして めでたく 結婚式が開かれました。
なんと 夕見子ちゃんと雪次郎君も
結婚することになったので
2組一緒に行われました。
(泣き声)
(倉田)おい 何で お前が泣いてんだ。
(門倉)あっ いや…。
<十勝に 東京から お兄ちゃんと
光子さんも来てくれました。
かなうならば
ここに千遥もいてくれたら…。
天国のお父さん お母さん
私を 生んでくれてありがとう。
なつは 今日 結婚しました>
笑顔で!
(シャッター音)
なつよ 心から おめでとう。
幸せになれよ。
それから数か月がたち
季節は また夏になりました。
2人は 西荻窪という町に
家を借りて住んでいます。
おいしそう。
はい これ弁当。
ありがとう。
ねえ また指切ったの?
うん。
気を付けてよ。
アニメーターじゃなくて よかった。
どんな仕事をしてても
そんなに指を切る人はいないから。
なつの今の仕事は
専ら テレビ漫画の原画を描くことです。
今 描いているのは「魔法少女アニー」。
キラキラバンバン キラキラアニー!
(茜)あっ。 ん?
動いた。
本当?
まるで 魔法にでもかけられたみたいよ。
子どもは考えないの?
今すぐは無理ですよ。
でも 考えてるなら早い方が…。
イッキュウさんは まだ家で
翻訳の仕事をしてるの?
はい…。 脚本の勉強にもなるって。
そして 秋も深まる頃。
(ため息)
(堀内)どうかした?
ちょっと気持ち悪くて…。
えっ! ちょっと 本当に大丈夫かい?
(荒井)どないしたんや?
何でもありません。
気分が悪いって。
ちょっと 外の空気 吸ってきます。
うん。
遅れてまうねんで。
おおっ 大丈夫か!?
大丈夫か?
ありがとうございました。
お大事に どうぞ。
今日 仕事中に貧血を起こして
倒れてしまったの…。
念のため お医者さんに診てもらったら…。
赤ちゃんが… できてた。
よかったじゃないか。
イッキュウさんは うれしいの?
うれしいよ…
君は うれしくないのか?
私は 仕事を辞めるわけにはいかないよ…。
辞めたくないよ…。
できた以上は 産まないという選択肢は
ないだろ 僕たちに。
仕事より大事ってことよね。
そうじゃない…。
産むと覚悟を決めて 仕事のことは
考えればいいと言ってるんだ。
一緒に頑張ろう。
じゃあ… 喜んでいいのね!
当たり前だ。
そして 数か月がたちました。
お久しぶり。
えっ! 本物? 本物よ。
うそ…。
お久しぶりです。
戻ってきてるなら
すぐに知らせて下さいよ!
変わってないとは言えないけど
変わらないわね あなたは。
どうぞ 入って下さい。
(坂場)あっ どうぞ。
おいしい!
私はね あの映画 とても感動したの。
えっ?
本当ですか?
だから また
自分もやりたいと思うようになったの。
うれしい!
それで 今日は
イッキュウさんを誘いに来たの。 えっ?
イッキュウさん
また アニメーションを作る気はない?
それは どういうことでしょうか?
実は 会社を興したのよ。
会社を?
そう。 アニメーションを製作する会社。
それに 下山さんも
参加してくれることになったから。
今 うちで動き出してる
テレビ漫画の企画に乗ってくれてね。
それに イッキュウさんにも
参加してもらいたいと思ってるの。
イッキュウさんが来てくれたら
心強いわ。
一緒にやらない? また。
よかったじゃない!
マコさんと また一緒に
アニメーションが作れるなんて…
こんないい話ないでしょ!
君は どうなるんだ。
えっ?
僕が 働きに出てしまったら
君は どうやって働くんだ?
本当は あなたのことも誘いたかったのよ。
マコさん。
誰よりも 真っ先に…。
うれしいです。
イッキュウさんも 現実的なことも考えて
できると思ったら来てちょうだい。
ありがとうございます。
本当に光栄です。
♬~
実は 今日… 行ってきたんだ。
どこに?
マコさんの会社だ。
それで 君に相談せず
悪いと思ったけど… 決めてきた。
マコさんのところで働くことに?
うん…。
あ… そうなんだ。
ただし 1年は待ってもらうことにした。
1年?
子どもが生まれてから1年ぐらいたてば
預けられる保育園も
見つかるかもしれない。
それまでは 僕が家にいることにするよ。
そこまで考えてくれてたんだね。
ありがとう。
そして あっという間に
なつは 臨月を迎えました。
おかしいな…。 もう これ以上
痛みの間隔が縮まらなくても
病院に行った方がいいんじゃないか?
どうしよう…。
(ブザー)
えっ? 誰だ こんな時に。
出て。
いいよ…。 早く出て!
あっ!
おはようございます。
母さん!
あっ あの…。
なつ! どしたの?
母さん 助けて…!
(坂場)どうぞ…。
あっ 父さん… じいちゃんまで!
おう…。
なつ 大丈夫か?
じいちゃん見たら…
ますます母牛になった気分だわ。
あ?
も~…。
ん~… ううっ…。
(秀子)はい もう少しよ。
フフフフ…。
えっ 何 笑ってんの?
何でもないです…。
(鳴き声)
陣痛に合わせて引くぞ。
うう~っ…。
もうすぐ もうすぐ…!
≪(産声)
おお…。
ご苦労さん…。
(秀子)元気な女の子です。
本日 私の孫が この世に誕生しました。
それから7日間
泰樹さんは 東京にとどまり
子どもの名前を考えました。
そして 付けた名前は
「優」。
今日から あなたは坂場 優です。
優が生まれて 6週間が過ぎ
なつが 職場に復帰する日が
やって来ました。
優… ママ 行ってくるからね。
♬~
おはようございます。
おっ なっちゃん お帰り! おめでとう!
(拍手と歓声)
「魔法少女アニー」は
放送も 3年目に入り
まだまだ 人気が続いていました。
なつは 原画として そこに復帰しました。
そして 昭和44年の春を迎えました。
あ…。
うん… 福祉事務所から。
どうだった?
ダメだった。 どこも落ちた。
えっ… 全部?
保育園 全部落ちたの!?
うん…。
え~…。
どうしよう…。
奥原さんには これから
作画監督をお願いしたいと思っています。
新しいテレビ漫画シリーズで
放送は 今年の秋からを予定している。
(仲)どういう企画なんですか?
企画は これだ。
「キックジャガー」?
(佐藤)キックボクシングを
題材にした漫画だ。
キックジャガーはね 孤児院の出身で
孤児たちのために戦ってるんだ。
泣ける いい話なんだ。
君なら この作品の世界観 描けるだろ。
(山川)無理なら無理だと
はっきり言ってもいいからね。
分かりました。 やらせて下さい。
なつは 優を預かってくれる人を
探すことになりました。
私はどう?
えっ?
自分の子しか育児の経験はないし
もし それで
なっちゃんが安心できるならだけど。
いや そんな…。
まあ 茜さんなら
誰よりも安心なんですけど…。
いいじゃない それが一番いいわよ!
どうか よろしくお願いします!
よろしくお願いします。
一緒に頑張ろう。
はい。
こうして 優は 茜さんに
預かってもらうことになったのです。
(優がぐずる声)
優ちゃ~ん…。
(優がぐずる声)
しかし 生まれたばかりの我が子と
一緒にいられないのは つらいことでした。
(中島)奥原さん すいません
確認お願いします。
あ… はい。
(チャイム)
あ… ごめんなさい こんな時間になって。
茜さん ごめんなさい。
いいのよ 大変なことは分かってるから。
夫婦の努力と
みんなの思いやりで
優は 大きな病気もせずに
すくすくと
育っていきました。
優は3歳から
やっと保育園に
入ることができました。
行ってきます。
行ってらっしゃい。
しかし 保育園は 夕方の6時までで…。
(茜 明子)優ちゃん。
茜さん!
なつの帰りが遅い時は
今でも 茜さんちで過ごしています。
そして 「キックジャガー」の最終回が
近づいた ある日のことでした。
キックジャガーは
子どもたちのために戦ってきたのに
テレビで 正体がばれたら
もう子どもたちには会わないんですか?
(宮田)痛ましい姿は
見せたくないでしょうよ。
キックジャガーは
孤児たちのヒーローなんだから。
ねえ 優。
うん?
もし キックジャガーに会えたら
何て言う?
キックジャガーに会えるの?
いや もしもよ…。
キックジャガーは いろんな敵と戦って
もう ボロボロに 痛い痛いになって
疲れてるでしょ。
そのキックジャガーに
何て言ってあげたい?
えっとね… もういいよって。
「もういいよ」か…。
もういいよ…。
やっぱり 子どもたちに
会いに行きましょう!
会いに行って どうするの?
素顔を明かして
負けたことを子どもたちに謝るんです。
それで 子どもたちは?
子どもたちは キックジャガーに
泣きながら こう言うんですよ。
もういいよ もう戦わなくていいよって。
いいね! 泣けるね!
でも 戦うんです。
(佐藤)えっ?
キックジャガーは その言葉を聞いて
もう一度
リングに向かう決意をするんですよ。
一人の正統派キックボクサーとして
もう一度 リングに復活するんです!
それが この物語のラストカットです。
それ いいよ!
それでいこう!
はい!
♬~(「キックジャガー」のテーマ曲)
(実況)「さあ 何をする気だ?
キックジャガー。
おっ マスクに手をかけた!
どういうことだ!?
会場から悲鳴が上がる!
なんと マスクを脱ぎ捨てた!」。
(子どもたち)「拳矢にいちゃんだ!
拳矢にいちゃん!」。
(キックジャガー)「子どもたちよ 見ろ。
俺は 戦うことをやめない」。
「頑張れ!」。
(ゴング)
「マスクを捨てて
正々堂々と 君たちに戦う姿を見せる!」。
こうして完成した「キックジャガー」は
お茶の間に 大きな感動を呼びました。
実は今 ちょっと考えてる企画があってね。
「大草原の小さな家」?
アメリカ西部の開拓時代の話だ。
それをやるには
君の力が必要だとも思ってるんだ。
面白そうだけど… 私は
東洋動画を辞めるわけにはいかないわ。
もし 辞めるとしたら…
アニメーターかも。
今は 少しでも
優のそばにいてあげたいから…。
まあ その本は置いとくから
暇があれば読んでみればいいよ。
うん…。
うん。
そのころ 十勝では
天陽君が 体調を崩し
入院していました。
(せき)
(タミ)え…。
ただいま。
(タミ)天陽!?
(靖枝)陽ちゃん! どうしたの?
(道夫)父ちゃん!
(彩子)父ちゃん!
道夫 彩子 元気にしてたか? ただいま。
お前 退院したのか?
なして連絡しないんだ。
退院は来週だよ。
早く アトリエの絵を描きたくて
抜けてきた。
ダメでしょ。 もう今すぐに戻りなさいや!
大丈夫だって。
♬~
全く しょうがないんだから…。
すまんな。
本当に無理しないで
朝になったら戻ってよ。
靖枝がいてくれるおかげで
こんなわがままが できるんだ。
わがまますぎるわ。
(靖枝)したら 本当に ほどほどにしてよ。
大事な体なんだから。
もう行っちゃうのかい?
えっ?
ここにいろよ。
えっ?
えっ いや ちょっ ちょっと…
ちょっと 陽ちゃん!
ねえ 絵の具! 絵の具ついちゃう…。
早く治してよ。
うん ありがとう。
靖枝… 起きれ もう朝だ。
あ… 絵は出来たの?
出来た。
♬~
(靖枝)あ…。
あっ 大変! 病院に早く戻らなくちゃ…。
大丈夫だ。
戻る前に 畑を見てくる。
私も行く。
靖枝は いいから。
もうじき おやじが搾乳に来る。
それから… おふくろと子どもたちを
よろしく頼む。
陽ちゃん…。
♬~
あったかいな…。
♬~
(陽平)なっちゃん…
落ち着いて聞いてくれるか。
天陽が 死んだんだ。
今朝早くに 亡くなったって…。
何を言ってるんですか?
僕も まだ信じられないんだけど
どうも うそじゃないみたいだ…。
なつは なんとか 仕事に区切りをつけ
十勝に帰りました。
♬~
あっ ママ ほんものだ!
え…?
ほんもののお馬さんがいるよ!
どうして これが本物だと思ったの?
動かないのに…。
だって…
絵を動かすのは ママのお仕事でしょ?
ママ 泣かないで…。
ママ…。
(天陽)<どうしたんだよ? なっちゃん>
どうしたは そっちでしょや…。
<アニメーターをやめたいって
悩んでるのか?
それなら 答えは もう出てるだろう。
優ちゃんが君の答えだろ? 今は>
優が…?
<絵を動かすのが 君の仕事だって
優ちゃんに言われたんだろ?
それで十分でないかい>
だって 今のなっちゃんを動かしてるのは
優ちゃんだろ?
なっちゃんは
ここを旅立った あの日から
ずっと… 俺との約束を守ってくれたべさ。
[ 回想 ] (天陽)なっちゃん…
どこにいたって 俺と なっちゃんは
何もない 広いキャンバスの中で
つながっていられる。
頑張れ!
頑張ってこい なっちゃん。
♬~
ありがとう… 天陽君。
その帰り道 なつは
雪月に立ち寄りました。
(雪之助)亡くなる前の天陽君に
頼んでたんだわ。
この店の…
包装紙を描いてくんないかって。
(雪之助)すばらしいな…。
この女の子はさ
ひょっとして なっちゃんかい?
(天陽)なっちゃんみたいな人が
この十勝には
いや 北海道には たくさんいるでしょう。
うん。
自然に 開拓者精神を受け継いで
たくましく生きてる人が…。
そだね…。
僕の十勝も そういうなっちゃんから
始まってるんですよ。
(雪之助)これは
そのころの なっちゃんなんだね…。
雪月のお菓子が
たくさんの人を喜ばせるように
今のなっちゃんも たくさんの人を
喜ばせなくちゃならないでしょ。
天陽君は 子どもの頃の思いを
ず~っと大切にしてたんだね。
その夜 なつは「大草原の小さな家」を
優に読んであげました。
ママ! ママ!
ママ すごい!
えっ?
これ ママが描いたんでしょ?
昨日のお話でしょ? これ。
優ちゃん これ見たいよ ママ!
見たいの?
見たい!
☎
はい もしもし 坂場です。
あっ 私。
どうしたの?
☎あの企画 まだ動いてない?
「大草原の小さな家」。
ああ… まだ企画書も出来てないよ。
私に やらせてほしいの。
☎今すぐは無理だけど…。
分かってる。 慌てなくてもいい。
☎(坂場)あとは 帰ってから話そう。
うん…。
大丈夫そうだな?
うん… じゃあね。 行ってらっしゃい。
行ってきます。
その夜 イッキュウさんは
「大草原の小さな家」の企画書を
書き上げました。
これを天陽君が?
うん。
この少女は…。
それを描いてみたくなったの。
これが企画書だ。
舞台は日本 北海道にする。
北海道の開拓者の
家族の話にするってこと?
そう。 この日本にも ささやかな日常を
一生懸命に生きている
開拓者たちがいることを
その作品を通して描きたいんだ。
是非 やってみたい…。
この絵を 君が受け継ぐんだ。
こうして なつは
18年間勤めた東洋動画に別れを告げ
自分の追い求める世界へと
突き進むことになったのです。
(坂場)それでは 企画を説明します。
え~ タイトルは
「大草原の少女ソラ」で
いきたいと思います。
舞台は 日本の北海道でも
作品自体は どこの国で見られても
リアリティーを感じてもらえるような
開拓者の家族の日常を
描きたいと思っています。
必ず いい作品にしましょう!
(一同)はい!
なつたちは
開拓者家族の暮らしを取材するため
北海道の十勝にやって来ました。
それでね じいちゃん
じいちゃんが この十勝に
やって来た頃の話を聞かせてほしいの。
それを テレビ漫画にしたいんだって。
泰樹さんは どうして
北海道に渡っていらしたんですか?
わしには… 親が おらんかったんじゃ。
えっ?
幼い頃に亡くしたんじゃ 2人とも…。
それで どうしたの?
親戚の農家に…
そのうちの養子になったんじゃ。
働かなけりゃ…
ただのやっかい者じゃった。
それで 北海道に渡ってきたの?
初めから この音問別に
入植されたんですか?
いやいや 初めは もっと帯広に近い
十勝川のほとりじゃった。 うん。
移住したんだもね。
(坂場)何があったんですか?
十勝川が氾濫したのさ。
大洪水になってね。
家も畑も牛舎も流されて…。
家族と馬が助かっただけ
よかったんじゃ…。
開拓者にとって 一番の心の支えは
やはり 家族だったんでしょうか?
(泰樹)家族に限らんかもしれん。
誰もが支え合って
それで 開拓者は強くなったんじゃ。
♬~
[ 回想 ] 私を ここで働かせて下さい。
それでこそ赤の他人じゃ。 明日から
夜明けとともに起きて働け。 はい!
(泰樹)
お前には もう そばに 家族はおらん。
だが わしらがおる。
お前は 堂々としてろ。
堂々と ここで生きろ。
優ちゃん ちょっと この辺 走ってみてよ。
うん!
(鳴き声)
(坂場 なつ)優!
優!
お~ お~。
はい はい 大丈夫よ…。
なつよ
どうやら イッキュウさんたちにも
何か届いたようだぞ。
東京に戻った なつは
主人公 ソラのキャラクター作りに
取りかかりました。
(神地)お~ かわいいじゃない!
これなら かわいいだけじゃなくて
野性味も感じられるわよ。
女の子らしいけど
決して弱い子には見えないと思う。
どう?
この子の日常なら 見たくなります。
主人公の活躍よりも
生きる力そのものを描きたいんだから。
今度の物語だけど…。
本当に 僕は 君の実体験と重ねるように
描いてもいいと思ってるんだ。 えっ…。
そうしなければ
君と作る意味がないとも思ってる。
具体的に どうするの?
うん…。
新しい登場人物を作る。
どんな?
子どもの頃の君であり 泰樹さんでもある。
それに…
千遥ちゃんでもあるかもしれない。
千遥も?
うん。
いつかは 君と千遥ちゃんが
また 家族として結ばれることを信じて…。
それを描きたい。
早速 なつと イッキュウさんは
絵コンテ作りに取りかかりました。
それでは ざっと
1話目のストーリーを説明します。
一家が旅をしています。
荷物を荷馬車に積み 荒野を走るのは
父さんと母さんと妹
そして 主人公のソラ。
住んでいた場所を 洪水で流され
新天地を求めていました。
その旅の途中
川に流されている少年を発見します。
それに気付くのが ソラ。
少年は ソラの機転と
その家族によって救われるんです。
少年の名は レイです。
レイの家族は
洪水によって流されていました。
孤児となったレイは
ソラたち家族と一緒に
新天地へ向かって 旅をすることになる。
ソラとレイ この2人の成長を通して
開拓者家族の物語を描きたいんです。
こうして 放送日は
刻一刻と迫ってきました。
(下山)これ どうかな?
(笑い声)
面白いです。
よし! ハハハハ…。
(なつ 優)戻りました。
お疲れさま。 あっ 待ってました。
作業は連日連夜 ほぼ休みなく続きました。
(石沢)はい。
はい よいしょ…。
♬~
♬「まぶしい大地に広がる空」
♬「昨日の涙と 明日の笑顔は きっと友達」
♬~
♬「ラララ ラララ」
♬「ラララ ラララ」
(ソラ)「父さん あと どのくらい?」。
(父さん)「もう少し上流に行くと
町が見えてくるはずだ」。
あっ
ひいじいちゃん そっくり。
(ソラ)「あそこ!
生きてる! 生きてるわ 父さん!
助けを呼んでる!
早く! 早く助けなきゃ 父さん!」。
一緒に行きましょう。
(レイ)父さんも母さんも死んだんだ…。
もう誰もいないんだ…。
君には 僕の気持ちなんて分からないよ!
あなたの気持ちは分からないけど
でも あなたが
悲しいことだけは分かるわ!
(鳴き声)
うわっ!
こっちだ ソラ!
(ソラ)牛は おとなしいはずなのに!
(テレビ・ソラ)「牛を引き付けるから
犬を追い払って!」。
ソラ!
お~!
お~ お~。
よしよし 怖かったよね… もう大丈夫。
野犬は レイが追い払ってくれたよ。
うわ…!
(テレビ・ソラ)「この子は レイに
お礼を言ってるんだわ!」。
(笑い声)
(鳴き声)
優 どうだった?
面白かった!
レイも 家族になれるといいね。
そうだね。
やった~ ハハ…。
(麻子)これ 見て 見て!
視聴者からですか?
そう。
(下山)えっ 子どもからですか?
子どもからのもあるけど
ほとんどが親からよ。
「子どもに
こういうものを見せたかった」って。
頑張りましょう!
うん。
それは ある日曜日のことでした。
(麻子)あ~ ごめん ごめん…!
ありがとう。
ちょっと待って! もしかして
ここが 何を作ってるところか知ってる?
ソラ?
ここ 見に来たの?
はい… ソラが大好きです。
これね セル画っていうんだけど
持ってく?
えっ いいんですか? わあ!
一人で来たの?
お母さんと。
えっ?
やだ 私 勝手に連れてきちゃった…。
お名前は?
杉山千夏です。
(桃代)ちなつ?
何だ 小さい なっちゃんじゃない。
どういう字 書くの?
千の夏です。
ふ~ん…。
(麻子)これからも ソラを応援してね。
はい! ありがとうございました。
♬~
千遥!
千遥だよね?
来てくれたの?
突然お邪魔して すみませんでした。
うれしい…。
来てくれて ありがとう。
娘が ソラのファンなんです。
毎週 楽しみにしてて。
娘には 何も話していません。
あなたのことを知らないんです。
分かった。
あ… 私の夫と娘です。
娘の名前は 優。
夫は 坂場一久といって
ソラの演出をしてます。
いつも拝見しています。
(坂場)ありがとうございます。
失礼します。
ちょっと待って!
今 どこにいるの?
神楽坂で
杉の子という料理屋をしています。
神楽坂の…。
もし よかったら…
お客様として いらして下さい。
行く! 必ず行く…。
それじゃ さようなら。
さようなら…。
次の土曜日 なつは 咲太郎たちと一緒に
千遥の店へ向かいました。
(孝子)いらっしゃいませ。
予約した奥原です。
(孝子)お待ちしておりました。
いらっしゃいませ。
お兄ちゃん!
千遥。
あの カウンターでもいいですか?
どうぞ。
(孝子)ご注文は?
料理は お任せします。
はい。
女将さんが 料理を作るんですか?
私は 料理人ですから。
何か お好みはございますか?
それなら… 天丼が食べたいです。
天丼ですか?
それが どうしても食べたくて…。
分かりました。
(上田)皆さん お友達ですか?
いえ 私たちは
こう見えて家族なんですよ。
ご家族ですか? いいですね。
♬~
お待たせしました。 天丼です。
おいしい…。
(信哉)うん 本当においしい…。
(明美)おいしいです!
(千遥)ありがとうございます。
これだよ…。
何か ございましたか?
戦死した父が
昔 作ってくれた天丼と同じ味なんです。
間違いなく… この味だ。
♬~
違う…。 お母さんだよ…。
空襲で死んだお母さんが…
いつも作ってくれてたんだよ 天丼は…!
お父さんが揚げた天ぷらを
いつも 横で働いてたお母さんが
だしをとって タレを作って…。
はい お待ち遠さま。
女将さんが
それを作ってた母に似てたから…。
それで思い出したのかもしれません。
そうかもしれない…。
なつよ 咲太郎よ…。
父さんと母さんは ずっと
この時を待っていたんだ。
(一同)ごちそうさまでした。
ありがとうございました。
(孝子)ありがとうございました。
♬~
これで ようやく 私の手紙が
3人の子どもたちに届いた。
ありがとう。
千夏ちゃん!
こんにちは。
こんにちは…。
千遥…。
何でも話して。
私は 18の時に
神楽坂の杉乃屋という料亭に
嫁いだんです。
政治家が使うような立派な料亭です。
そこの次男に 結婚を申し込まれたんです。
でも… 今は 一緒にいないんです。
別に 女の人と暮らしがあるみたいで…。
ずっと我慢してたの?
私は… 自分の過去を隠して結婚したのよ。
だけど…
千夏にまで うそをついて生きるのは
もう嫌なんです…。
本当のことを話して
あの人と別れようと思います。
分かった…。
また… 家族になってくれる?
当たり前じゃない!
お姉ちゃん…。
千遥は もう… 自由になっていい。
堂々と生きていい。
ありがとう…。
昭和50年4月 優は小学校に入学しました。
(坂場)これが レイが父さんに
夢を語るシーンの絵コンテです。
場所は ソラとレイが
風の丘と呼んでいる丘で
そこで 星を見ながら
語るようにしたいんです。
<レイが 父さんに夢を語るシーンか…>
♬~
イッキュウさん。
うん?
この絵コンテだけど
星を見ながら話すのはいいけど
やっぱり 最後は夜明けにしない?
夜明け?
そう。
話し終えた2人に 朝日が昇ってくるの。
牛飼いの生活は 太陽と共にあるでしょ。
その始まりを示す朝日の中でなら
父さんと レイの別れる決心も
もっと 希望に満ちたものになると思う。
開拓者を励ます朝日か… いいと思う!
それなら もっと
風の丘であることも生かせるな。
風と光で 夜明けのにおいを出そう。
ちょっと 変えるなら すぐに動いてよ。
もう時間ないんだから。 分かりました。
なつたちは
ロケハンで出会った 十勝の人々や
風景を思い出しながら
開拓者の物語を描いてゆきました。
[ 回想 ] じいちゃんが 一人で北海道に来て
開拓したみたいに…。
私も 挑戦したい。
よく言った。
それでこそ わしの孫じゃ!
行ってこい。 東京を耕してこい!
開拓してこい!
そして そのシーンが放送される日を
迎えました。
(テレビ・レイ)
「父さん 僕は 牛や馬を助けたい。
命を救いたい。
そのために 勉強したいんだ」。
そのためには
遠くの街に行かなくちゃいけない。
ごめん…
僕は どうしても 獣医になりたいんだ。
レイ…
あの ひときわ輝いている星を見ろ。
あれは 明けの明星だ。
この辺りでは 古くから
朝の口にいる神と呼ばれている。
お前は 今 あの神様に誓ったんだ。
よく言った。 それでこそ 私の息子だ。
父さん…。
行ってこい レイ…。
お前がいなくとも
俺が この牧場を守る。
お前は お前の夢を守れ。
父さん!
(泣き声)
(風の音)
♬~
なつよ どうやら
風は ここまで吹いたようだ。
その翌日 泰樹さんは
久しぶりに遠出をしたようです。
♬~
はああ… とうとう
私に会いたくなったのかい? (泰樹)は?
私が恋しくなったってことは
いよいよ お迎えが近いね。
あんたは 死神かい。
天使だべさ ハハハ…。
大丈夫 あんたは天国だ。 安心しなさいや。
あんた… なつのテレビ見たか?
ああ 漫画かい? そりゃ見てるさ。
昨日 見たか?
昨日? ああ。
朝日を思い出したんじゃ。
朝日?
ああ…。
何度も見た ああいう朝日を…
開拓してる頃にな。
この土地は捨てよう… そう思っても
朝日を見ると 気力が湧いてきた…。
ここで諦めるなって… 励まされた。
へえ~。
そういう朝日を なつが見してくれた…。
夜明けに励まされるってことは
何度もあったね。
なつは… そういうものを作ってるんじゃ。
なつたちは 夏休みに
十勝へやって来ました。
(雷鳴)
その晩は 嵐になりました。
♬~
あっ 父さん 停電だわ。
何時じゃ?
もうすぐ7時です。
おお 照男。
参ったわ 停電だ。
電気がなければ ミルカーが使えないべ。
牛乳を冷やす バルククーラーもだ。
(剛男)全部 電気頼みだからな。
おはよう。
おはようございます。
(一同)おはよう。
(泰樹)牛は?
菊介さんと砂良が見てるわ。
(鳴き声)
牛が鳴いてるべ。
えっ?
牛が鳴いてるのが聞こえんのか!
じいちゃん…。
すぐ牛舎行け! 牛 放っておくな!
分かった。
分娩間もない牛から搾り始めてます。
うん。
あと 乳房炎に
かかったことのある牛もいれば
先に搾った方がいいと思う。
そうだな。
♬~
嵐が去った翌日
なつは 泰樹さんと一緒に
天陽君の畑に向かいました。
泰樹さん! なつさんも!
こんにちは。
来てくれたんですか。
ああ。
大変でしたね。
(靖枝)はい。
(泰樹)わしらも手伝う。
手伝います。
なつ。
うん?
わしが死んでも 悲しむ必要はない。
じいちゃん… 何言ってんの。
天陽と同じじゃ。
わしの魂も この大地に
しみ込ませておく。
寂しくなったら いつでも帰ってこい。
お前は 大地を踏み締めて
歩いていけば それでいい。
分かった。
しかし よくやったな なつ。
えっ?
お前は よく 東京を耕した。
いつでも 東京 帰れ。
わしは いつでも お前と共におる。
じいちゃん…
大好き。
おじいちゃん 大好き。
えっ? おおっ…。
あっ ちょっと…!
ちょっと じいちゃん!
おお…。
じいちゃん… じいちゃん 大丈夫?
(笑い声)
♬~
これからも 一コマ一コマ
アニメーションみたいに
家族の夢を描いていきましょう。
また大変なことが
待ってるかもしれないけど。
それでも また始めましょう。
うん。
それは ダメ!
優ちゃんも!
じゃ
行こうか。
♬~
♬~
日本のアニメーションが
世界に誇れるほど大きく成長していくのは
これからなのです。
その未来に向かえよ なつよ。