ヨーロッパの道徳は「容赦ない社会」が生んだ

「平等」も「人権」も、次善の策にすぎない

年末年始に別宅のあるウィーンを訪れた際、ヨーロッパ社会の「容赦のなさ」を実感しました (写真:ごと / PIXTA)

みなさま、たいへんおそまきながら、あけましておめでとうございます。

今年のお正月はウィーンで迎えました(そのために12月はこの連載もお休み)。家内がウィーンに小さいアパートを借りていて、そこで年に数度「お茶」を教えているのですが、そこに滞在。会社の休みにペルー、チリ、イースター島に旅行していた息子もブエノスアイレスから合流して、家族で簡素なウィーンのお正月を迎えました。こうして、わが家は、親子3人別々の国にいることが多い「国際別居家族」というわけです。

37年前、「悲壮な決意」で迎えた新年の記憶

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大みそかは、わが家からタクシーで10分のところにあるウィーン市街が一望できる高台に登り、そこでカウントダウン。午前零時とともに何千発もの花火が打ち上げられ、ウィーンは光の渦に包まれました。

お正月、家内はドナウ川沿いの仏教寺院でお茶会。私は出席しなかったけれど、朝、荷物を運ぶのを手伝ったとき、ウィーン中心街から外れたそのドナウ川沿いは一面の雪景色であって、そこに白鳥が数羽浮かんでいる。白いパゴダ(仏舎利塔)とともにまさに絵のような景色であり、タクシーの運転手も“Wie romantisch!”(なんてロマンチックなんだ!)とおもわず叫んでシャッターを切るほど。

こうして、6年ぶりにウィーンで迎える新年ですが、37年3カ月前に(無謀にも)33歳でウィーン大学に私費留学し、初めてのクリスマスを迎えたころを思い出しました。当時は華やかなクリスマスのイルミネーションに飾られた街々を、悲壮な決意に身を固くしてふらふら歩き回っていましたが、幸いにも沈没せずに4年半後に帰国。東大の助手を皮切りに25年間の大学勤めを終えて「哲学塾」を開き、はや9年、哲学に絡めとられた生活は、古希を過ぎた今でも続いています。

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  • 中村勘三郎曰く「型があるのが型破り」b4488dc9f2c4
    例えば。
    日本語話者が「よい」と表音して済ませているモノ/コトも、漢字表記すると「善い」「好い」に区別でき、それぞれに対義語は「悪い」「嫌い」だったりする。いちばん困ることは「善い」とは異なる「良い」の対義語も「悪い」という言葉を使ってしまう。
    ナニゴトを語る際に、ある論者からして道徳的に「善い=悪くない」が社会的には「良くない=悪い」だったりする場合、関わる論者それぞれが「よい」の定義を道徳的なのか社会的なのか、キチンと区別をしていないので他人からすると議論が混乱しているように聞こえる。
    このあたり、修辞・論理・文法をおさえた折り目正しいコトバを使う訓練は初等教育の時代から順を追って行なうべきなのだが、端折ったコトバを使うほうが「モノのわかった人」となってしまいがちである。
    わかりやすいコトバとはしょったコトバも、混同してはならない。
    up24
    down4
    2017/1/26 09:19
  • NO NAMEb795a032eb68
    是非しつこく取り上げてください(笑)
    正直、哲学は詳しくないし、難しいと感じました。
    しかし、とても興味深く、的を得た内容であると思いました。
    このことに気がつくのはなかなか容易ではないと思いますが、私も若輩者ながら同意させていただきたいと思います。
    up15
    down1
    2017/1/26 17:32
  • NO NAMEecd7d0d0de34
    >「振り込め詐欺」が成立する余地もないようです

    イギリスでは銀行員のふりして口座情報を聞き出す詐欺で何百億円も被害が出ているってBBCが一昨年言ってたなあ。(一部はイスラム過激派に流れていたらしい)

    英国人は大陸人よりお人よしなのか。
    up14
    down5
    2017/1/26 11:32
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