「ジョーカー」アカデミー賞をはばむ2つの壁
最大のライバルはデ・ニーロ&ヒトラー映画
映画『ジョーカー』が、相変わらず数々の疑問を投げかけている。主人公の最後のセリフは何を意味するのか、トッド・フィリップス監督が言ったように続編は本当にないのかなどに加え、はたしてこれがアカデミー賞にたどり着くのかどうかもまた、ファンにとっては大きな謎だ。
日本版のポスターには、「アカデミー賞は確実だ」という批評家のコメントが堂々と使われていたりするが、そう言い切ってしまうのはまだ気が早い。ヴェネツィア国際映画祭では最高賞にあたる金獅子賞を取ったし、主人公アーサーを演じたホアキン・フェニックスの演技には大絶賛が寄せられている。複数部門で受賞候補に挙がることはほぼ疑いないものの、作品賞や主演男優賞の受賞となると、いくつかハードルがある。
アメコミ映画は作品賞を取りづらい
第一に、本作がアメコミのキャラクターに基づくものであること。アメコミ映画としては、今年度、『ブラックパンサー』が初めて作品部門に候補入りをしたが、結局、受賞からは最も遠い候補のままで終わった。
過去にはクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』も、評価が高かったのに作品部門には候補入りをしていない。そのことについては批評家やファンから批判の声が上がり、それが作品部門の候補枠をそれまでの5作品から最大10作品まで拡大することにつながったのだが、その後もアメコミ映画の受賞例は1度もないままだ。
ただし、『ジョーカー』が典型的なアメコミ映画でないのは、見た人なら誰もがわかること。フィリップス監督は、この映画を作るうえで、原作コミックからアイデアを引き出すことをしておらず、早い時期に行ったイギリスの雑誌に対するインタビューでは、「『バットマン』とはいっさい関係ない」とまで言っている。