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 金持ちの娯楽か、万人が楽しむスポーツか。ゴルフをめぐるそんな価値観のせめぎ合いが、永田町を舞台に熱を帯び始めた。俎上(そじょう)に載せられているのは「ゴルファーへの課税」である。

 省庁が来年度予算の概算要求をまとめる8月下旬、スポーツ庁次長や日本ゴルフ協会幹部らが衆院議員会館の一室を訪れた。

 「何とか一歩進めるため、今年はこの案でお願いできませんか」。硬い表情で頭を下げる次長らの予想外の言葉に、超党派ゴルフ議員連盟会長の衛藤征士郎・元衆院副議長(78)は一瞬、言葉を失った。

 次長らが持参したのは、ゴルフ場利用税をめぐる新提案だった。ゴルファーが1日最大1200円をプレー代に含めて納める同税の廃止は、ゴルフの裾野を広げたい同庁や業界団体、議連の宿願だった。だが、次長らはこの日、廃止から大きく後退する「減税」で妥協する案を示したのだ。

 減税案は、課税対象がいまの18~69歳から30~64歳に狭められていた。東京五輪を追い風にしようと、五輪出場選手らを非課税とする措置も盛り込まれた。約130億円の減収は、消費税率の引き上げによる増収で穴埋めすることも念頭に置かれていた。

 衛藤氏は、年末の税制改正論議で例年通り廃止を求めるつもりだったが、そこに勝算があるわけではなかった。「分かった。廃止方針を優先するが、減税も可能と訴えていく」。議連会長として、減税案を容認する腹を固めた。

 折しも8月には女子ゴルフの渋野日向子選手(20)が全英女子オープンで優勝し、42年ぶりに海外メジャーを制したばかり。若手の台頭などでゴルフへの注目は高まり、業界にとって勝負に出る地合いは悪くなかった。20年にわたり続いてきた同税をめぐる攻防は、新たな局面に突入することになった。

安倍首相も問題視 それでも廃止論はね返してきた税調

 プレーするだけで税をとられるゴルフは、スポーツの中で異色の存在だ。用具やプレーに多額の費用がかかり、経済的に余裕のある層が楽しむ金持ちの娯楽――。そんな見方から戦後、マージャンやパチンコと同じ扱いを受け、娯楽施設利用税の対象とされてきた。

 1989年に消費税3%が導入されると、政府は「消費税との二重取りになる」と娯楽施設利用税を廃止した。ところが、ここでもゴルフは特別扱いされ、新たに利用税が設けられた。「愛好家には税負担の余裕がある」「ゴルフ場周辺の道路整備にもお金がかかる」。そんな理由が掲げられた。

 旧文部省が初めて廃止を求めたのは2000年。大衆化を名目に、「ゴルフにのみプレーに税金をかけるのは不公平」と訴えた。その主張を後押ししてきたのが、56人が参加する超党派議連だ。名誉会長には麻生太郎財務相、副会長には立憲民主党安住淳国対委員長らが名を連ね、「スポーツに税金をかけるなんて国家の恥だ」(衛藤氏)と断じた。

 そもそも政界にゴルフ愛好者は…

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