秋は里芋がおいしくなる季節。里芋は包丁で皮を剥いたり、下茹でしたり……と一見すると面倒そうに思える(そして実際に手間がかかる)食材ですが、今回はその手間を思い切り省いた効率的なレシピです。
里芋にはガラクタンやムチンという食物繊維に由来するヌメリがあり、昔は皮を剥いて、塩などで揉み、それを下茹でしてから使うのが普通でしたが、あたらしい調理法ではそのまま茹でてしまいます。皮を剥く手間や下茹での工程を省くことで、味も良くなるので一石二鳥です。煮た里芋はそのまま保存もできますし、揚げるという一工程を足すと、ビールのつまみにぴったりの料理になります。
里芋の唐揚げ
里芋…350g~400g
片栗粉…適量
〈煮汁〉
出汁…500cc
醤油…大さじ1+1/2
砂糖…小さじ1
又は
水…500cc
白だし…大さじ2+1/2(七福醸造製を使用)
砂糖…小さじ1
又は
水…500cc
顆粒だし…4g(味の素『ほんだし®』使用)
醤油…大さじ1
砂糖…小さじ1
1.里芋は泥を洗い落とす。鍋に里芋、しっかりと浸るくらいの量の水を入れて強火にかけ、沸騰したら弱火に落とし、10分加熱する。
2.ザルなどにあけて水を切り、冷水をかけて粗熱をとる。里芋の上下(料理用語で天地と言います)を包丁で切り落とし、手で皮を剥く。皮が残っている部分は包丁で削るようにして切り落とす。
3.鍋に2の里芋と煮汁を入れて、強火にかけ、沸騰したら弱火に落とし、落し蓋をして15分間煮る。火を止めて冷ます。(この状態で冷蔵庫で3〜4日保存できます)
4.フライパンに油を1cmほど注ぎ、中火にかけて160℃〜170℃になるまで温めておく。煮汁を切った里芋の表面に片栗粉をまぶし、余分な粉を手ではたいたものを揚げ油に入れる。里芋がすべて入ったら火を弱火に落とし、揚げていく。表面がうっすらと色づき、カリッとしたら揚げ上がり。
里芋料理の今、昔
里芋は昨今、家庭の食卓に登場する機会が減っているかもしれません。その最大の要因は皮を剥く手間。皮むきの冷凍品もありますが、残念ながら味はやや落ちるようです。
さらに里芋にはぬめりがあり、調味料が浸透するのを妨げるとして、下茹でし、水にさらし、ぬめりを取り除いてから改めて煮るのが常識とされてきました。皮を剥いた里芋を塩もみし、さらに下茹でする湯に酢やミョウバンを入れて、白く煮上げるレシピもあります。
特別な日でもない限り、これらの工程を踏む必要はないと思います。下茹ですることで、里芋らしい香りが失われてしまいますし、そもそも最近の里芋はヌメリが少ない品種が主流になっているからです。
次に下茹でするときに酢やミョウバンを加える場合について考えますが、これらを使うと白く仕上がりものの、里芋がほっくり感を失って固くなります。見た目を良くするために、美味しくなくなっては意味がありません。
これは僕の推測ですが、そもそも里芋のヌメリをとるのは、煮立つと吹きこぼれるからではないでしょうか。つまり、昔の火力調整できない薪の時代には、ヌメリをとる工程が重要だったかもしれませんが、現在の必要性は薄い、と考えられます。
今回は里芋はまるごと茹でて、水で冷やしています。まるごと茹でれば味も香りも抜けませんし、手で簡単に皮が剥けるからです。
それを煮汁で炊いていきますが、今回は3パターンのレシピを出しています。昆布+鰹節でとった出汁を使ったもの、市販の白だしを使ったもの、顆粒だしのものです。
昆布+鰹節でとった出汁は本連載の『おいしい料理の要“出汁づくり”の秘訣』を参照してください。手作りの出汁を使うと、すっきりした味に仕上がります。
次に紹介するのは白だしを使ったパターンです。
白だしは白醤油や薄口醤油に出汁やみりん、塩などを加えた合わせ調味料で、濃縮めんつゆと同様に希釈して使います。色は薄いですが、しっかりと塩味は効いています。白だしは素材の色が生かせるのがメリット。最近は海外のシェフのあいだでも広く使われています。
最後は顆粒だしです。顆粒だしはこの連載ではじめて登場しますが、鰹節や昆布エキスなどの風味原料にデキストリンや糖分、食塩、酵母エキスを添加したもので、味の素やリケンなど複数のメーカーが販売しています。今回は最も一般的という理由で『ほんだし®』を使用しましたが、好みの商品を使うといいでしょう。ただ、顆粒だしには塩がすでに添加されているので、味付けには注意が必要です。
白だしや顆粒だしの魅力はその手軽さ。単独で煮物にする場合には手作り出汁に味は劣りますが、唐揚げの場合は後から揚げてしまうので、どのパターンでも遜色はありません。状況に応じて、適宜使い分けるといいでしょう。