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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

「億劫なんて言葉つかうなよ!」

(小田和正さんが吉田拓郎さんに贈った言葉です)

 小田和正、吉田拓郎と聞いてピンとくる読者の方多くは、60歳前後の年齢だと思います。おふたりとも、ある時代の象徴的スーパーアーティストでした。「僕の髪が肩までのびて 君と同じになったら 約束どおり 町の教会で結婚しようよ」という吉田拓郎さんの歌詞は社会現象になったほどです。当時私が勤めていた会社の上司が「日本男子もおしまいだ」とつぶやいたのを覚えています。男子の長髪は新しい時代の夜明けを象徴しているかのようでした。

 その時代や、おふたりに関心がない方は、つまらないかもしれませんが、私はこのおふたりの対談番組を見て、高齢者の健康管理におけるメンタリティーという視点で大変参考になりました。

 おふたりともあと数年で70歳になられるそうです。特に拓郎さんは大病を克服されていますし、元オフコースというグループのボーカルだった小田和正さんは、喉の管理と、ジョギングやジムでの体力アップを怠らないというストイックな努力の毎日だそうです。


 吉田拓郎さんはご自身を「オレみたいに格好いいヤツは、あんときは周りにいなかったからね」と堂々とおっしゃる。一方、小田和正さんはデビュー後、まったく売れなかったと振り返っておられました。吉田拓郎さんが「なんの苦労もなくスラスラ詩も曲も湧き出てきてたのにさ、最近は全然ダメよ、あーでもないこーでもないと、のたうちまわっても、なんも作れない」と言えば小田和正さんが「オレは昔からそうだったから」と返される。すると「うそつけぇ、ヒットしてた曲なんか、ためらいもなくスッと出てきてただろ?」と拓郎さんにつっこまれ「そう言われればそうかな」と小田さん。

 オレの他にスターはいないと思っていたころ小田和正が登場し、それ以後、若い時代に自分が追い抜かれていくのを経験したと吉田拓郎さんが語ると、小田和正さんが「ライバルに追い抜かれたとかじゃなくてさ、音楽業界が変わったんだよ」と一言。まるで今の日本の音楽業界が風前のともしびのようにおっしゃるのです。すると拓郎さんが「坂本九さんの『上を向いて歩こう』が、アメリカで『スキヤキ』とか名前変えられてさ、ビルボードの1位になったとき、オレ、バンザイしたくなるほどうれしかったんだ。やったぜーってね、けど、あれから日本人さっぱりダメだよね、どうよ?」ともちかけると、小田さんはあくまでも冷静に「日本人はマーケットがビルボードよりオリコンなんですよ」と。「悲しくない?」の拓郎さんに、「日本人に受ける曲をめざしていると思えばいいんじゃない?」と小田さん。「これから70になるまでにどんなことやりたい?」と拓郎さんが誘えば「そういう考え方ないから」と小田さん。


 吉田拓郎さんは最近ボイストレーニングを始めたそうです。

 「拓郎がボイストレーニング通ってさ、なんかみっともないとか最初思ってたんだけど、これがやると上の“G”まで出るんだよね」と言ったとたんに小田さんが笑顔になった。「そういうの、いいじゃない、今から何かやるってのが」と急に積極的になる小田和正さん。ところが拓郎さんが「でもさ、億劫おっくうなんだよこれが、今更ボイストレーニングかよ~ってさ」とちょっと格好つけた風に発言した途端、小田さんから「億劫なんて言葉つかうなよ、そんなこと言っちゃだめだよここで。億劫なんて言わないで自分が今できることをやるのがいいんだよ」とたしなめるようなコメントをすると、すかさず、「さすがは小田和正、家帰ってカミさんから小田さんやっぱりいいこと言うわねって、ぜってぇ言われる」と2人して大笑い。

 お互いがんばりましょうと、握手をして番組は終了しましたが、億劫なんて言葉を使っちゃいけない、それより何を今やっているかが大事だと、終始おとなしい小田さんの一言に納得した吉田拓郎さん。性格の違うおふたりが、一緒に生きていると思っているおふたりのファンの皆さんをひっぱっていくんでしょう。

 「CDも売れなくなってしまってるし」と言った小田さんの言葉を思い出して、小田和正さんのCDを買いに行きました。次のカラオケパーティーまでこれから練習です。

石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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5件 のコメント

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