日本経済はどんな病気にかかっているのか

政府の成長戦略は「やった振り」で終わる?

よりよい処方箋は、正しい診断結果から生まれるはずだ(写真:HM/PIXTA)

マイケル・ムーア監督の『華氏119』が、ネット配信されるようになって数カ月、ちょっと時間ができたので眺めてみた。噂どおり、この映画は、現大統領への批判とは違い、なぜ、現大統領のような人が選ばれるのかを問う、一種の「民主主義論」として作られていた。

日本の経済パフォーマンス

『華氏119』で、アメリカの人たちの日々の生活への不満の様子を見ながら、どうしても頭をよぎるグラフがあった。

これは、BIS (国際決済銀行)が作ってくれている、日本とアメリカの経済パフォーマンスの比較図である。青と緑はアメリカ、赤とオレンジは日本、そして実線は1人当たり実質GDP(国内総生産)、破線は生産年齢人口1人当たり実質GDPを示している。

福澤諭吉は『文明論之概略』の中で、政府は、「事物の順序を司どりて現在の処置を施し」と書いて、政治は「現在」、当面の問題を処理することと論じているが、「学者は、前後に注意して未来を謀り」と書いているように、学者の視界のタイムスパンは、政治よりも長い……いや実際、随分と長い。

そして、図のようにかなり長いタイムスパンである1980年から今までの、人口1人当たり実質GDP、生産年齢人口1人当たり実質GDPを眺めてみると、アメリカと比べて、日本はけっこうがんばっているように見える。

生産年齢人口1人当たり実質GDPのほうが1人当たり実質GDPよりもがんばっているように見えるのは、生産年齢人口の減少幅が総人口よりも大きいからである。次を見てもらいたい――生産年齢人口は国際標準(15~64歳)ではなく20~64歳でとっている。

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  • 流されないロスジェネa12a7d05d99c
    人口減少、地域消滅時代を迎えているのに、高度成長期を忘れられず景気拡大路線を続け、費用対効果を考えず地方へのばらまきを続け、選挙で当選することしか考えていない政府与党こそが1番の病気の元だよ。
    up157
    down34
    2019/10/31 05:37
  • 😎89243b34c9b4
    日本経済はどんな病気にかかっているのか?というメタファーで問いかけられれば、「活力の減衰」が挙げられますね。また、宮台真司氏の言葉を借りれば、「社会に寛容さがなくなり、闊達な空気が失われている」ともいえます

    途上国の中心地や開発が盛んな都市を歩けば、すぐに気が付きますが。活気があります。とても活気があります。著者は家電量販店の例で説明されていますが、途上国の購買意欲は真逆でこれもあれも欲しいと爆買まで始める様相です

    また消費増税は、逆進性の問題が解決できないので経済成長が0%程度で推移すると見込まれる社会では格差が広がり、やってはいけない愚策です

    購買意欲の低い、黒田氏の言うデフレマインドが蔓延している国で、どんどん増税を行えば、カタストロフィックな経済の崩壊ではなく活力・購買意欲がどんどん減衰するでしょう。デフレマインド再来です

    経済成長前提の社会保障モデルは既に絵に書いた餅です
    up121
    down21
    2019/10/31 05:48
  • 名無し13bf7da736bf4
    生活が便利になり、質も随分と上がっている割に、一概に幸福度は上がっていないのが日本社会のサムいところですよね。心の充実はどんどん失われているのではないか。
    必要以上の飽和は何も生まないと思います。田舎ですが、若い女性でも、譲らない、割り込むなど、マナーが悪い人も見受けられ、余裕がない。自分のことしか考えていない割に、人の目を気にする人が増えた。マイペースでない。思い遣りがなく、人を下に見る癖がある人は、自分が同じことをされることにも敏感で、人の目を気にするため、流されやすいのです。であるのに自分本位で、常に誰かの下か上かを気にする。そういうことにとらわれていては、幸せなはずもなく、自分が下だと感じないように充実感を求めるが、冒頭のように、生活の質自体は誰もが上がっているのに、充実を感じづらくなる。欲が尽きない状態。目先の充実にとらわれ、努力を怠る。今の日本はまさにそういう状態だと思います。
    up81
    down33
    2019/10/31 07:14
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