撮影:石橋俊治

「嫌な思いをするかもしれん」──それでもテツandトモ・テツは“一発屋”を子に伏せない

11/2(土) 9:13 配信

筆者の職業は、漫才師。コンビ名を髭男爵という。2008年に“まあまあ”売れたが、現状はさっぱりの一発屋。と同時に、この春、小学校に上がった長女と、今年6月に生まれた次女の父親でもある。今のところ、僕は長女に自分の本当の職業を教えてはいない。理由は一発屋である。別に恥じているわけではないが、「負け」や「失敗」といった苦み成分を含んだこの言葉に、まだ人生が始まったばかりの娘を触れさせたくないのだ。今回、3人の子を持つテツ(テツandトモ)を訪ね、他の一発屋パパがどんな子育てをしているのか聞いた。「一発屋は育休」「”一発”はプライド」など、筆者とは違う子育て論がそこにあった。(取材・文:山田ルイ53世/撮影:石橋俊治/Yahoo!ニュース 特集編集部)

テツ一家に迫る“2020年問題”

「もう大変! 全員一気にボーンと……」

とため息をつくのは、お笑いコンビ「テツandトモ」の赤ジャージ担当、テツこと、中本哲也。
目下、彼の一番の悩みは、2020年のこと。
といっても、東京オリンピック・パラリンピックとは全く関係がない。

「ランドセルは用意せないかんわ、中学の制服でしょ、あと高校は……」

中学3年生の長男を筆頭に、小6の長女、幼稚園年長の次男と、2男1女の父親でもあるテツ。
来年、その全員の進学が“重なった”というのだ。

もはや、皆既日食。
この際、月食でも惑星直列でも何でもいいが、とにかく天体ショー級の一大事である。
今春、長女の小学校入学を経験した筆者としては、
(“あれ”の×3か……)
とゾッとしたが、半面、彼の元を訪れた理由もその辺りにあった。

何しろ、子どもが3人。
とりわけ、興味を引かれるのが、
「もう、受験ですよ……」
とテツも感慨深げな、長男の存在である。

来年、高校生となる息子が、親の仕事について何も知らぬというのは考え難い。
「パパが一発屋」という事実が、彼や弟妹にもたらした葛藤や苦悩。
父はどう隠し、どう露見し、どう今に至ったのか。
この家族には、筆者が追い求めた問いの答え、目指すべき未来像があるに違いない。

テツandトモ。1998年コンビ結成。「なんでだろう」が2003年新語流行語大賞、年間大賞を受賞。同年、NHK「紅白歌合戦」に白組歌手として出場。今年7月には初の絵本「なんでだろう」を発売。10月にはアルバム「テツandトモの 元気になれるの なんでだろう?」をリリース。現在テレビ出演のほか、全国各地でお笑いと歌のステージを展開。

息子がネタ完コピ「なんでだろう」

そんな期待に胸を膨らませていたのだが、
「(子どもたちは)もう小さいころから、普通に『なんでだろう♪』をやってて……」
と事もなげなテツに、さっそく出ばなをくじかれた。

(“小さいころから”? “普通に”?……ん?)

戸惑う筆者を横目に、
「2年くらい前、『今からショーをやるから見てほしい!』って長女がカーテンをパッとやったら、『なんでだろう~♪ なんでだろう~♪』って次男が飛び出してきて……」
と末っ子がテツトモのネタ、「うちの父さん寝てるのに、テレビ消そうとすると『見てるんだよ!』っていうのなんでだろ~♪」を“完コピ”してみせたエピソードを披露。

「マネしてくれて、すごくうれしかった!」
とご満悦だが、
(いや、ちょっと待って!?)
……状況がうまくのみ込めない。

とにかく一つひとつさかのぼるしかないだろう。

気を取り直し、
「父親がテレビに出てる、『なんでだろう♪』の人という認識は(どの子にも)あったと思う」
というテツの言葉に耳を傾けたが、いまさら驚きはない。

“完コピ”できるのだから、“知っていた”のは当たり前。
肝心なのは、その前段……なぜ“知っていた”のか、すなわち、なぜ“バレた”のかだが、

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