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【社会】

英語民間試験 見送り 憤り、戸惑い 高2「振り回された」

大学入試への英語民間試験導入を巡る問題で開かれた野党集会で、「延期ではなく中止を」と訴える高校生(右手前)=国会で、いずれも1日

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 大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストの目玉の一つだった英語民間検定試験の導入が見送りとなった。早くから制度を問題視してきた大学教授らは、導入をゴリ押ししてきた政府の遅すぎる決断を厳しく批判。これまで振り回されてきた高校生からは憤りの一方で、問題がある制度が延期されたことに安堵(あんど)の声が漏れた。民間試験を実施する企業や団体は慌ただしく対応に追われた。 (小倉貞俊、柏崎智子、安藤淳)

 「朝のニュースで知り、驚いた。大勢の高校生や野党議員が働き掛けたおかげです」。千葉県印西市の県立高校二年、国武悠人さん(17)はこう話す。

 格差助長などが懸念される民間試験に反対し、先月は野党の文部科学省ヒアリングに参加。導入延期にひと安心だが、「振り回されてきた」との思いも強い。「生徒のためになっていない教育制度といい、文科相の『身の丈』発言といい、不信感がある。延期でなく中止にすべきです」と怒りをにじませる。

 東京都世田谷区の私立高校二年女子(17)は導入見送りを喜びつつ、「経済格差などについて高校生が上げてきた不安の声も聞かず、大人たちの一方的な都合で進められたのは残念です」と語気を強めた。

 神奈川県平塚市の私立高校二年男子(16)は「いつから何をすればいいのか、どの検定試験を選べばいいのか。ネットや友人の間で情報が錯綜(さくそう)し、その収集に時間を費やしてしまった」と困惑。「無駄になった時間はもっと有効に使えたはず」と話した。

 私立和光高校(東京都町田市)のブログで民間試験への疑問を訴えた橋本暁校長(52)は「問題点は最初から分かっていたはずで(見送りは)何を今さらという思い。延期を機に、生徒本位の試験になるようしっかり検討してほしい」とした。

◆教授ら 記述式導入「共通テストも延期を」

記者会見する「入試改革を考える会」の大内裕和代表(右)と吉田弘幸さん=東京・霞が関の文科省で

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 一日、「入試改革を考える会」の大学教授らが「共通テスト自体も延期するべきだ」と声明を発表し、文部科学省へ提出した。代表の大内裕和・中京大教授は「公平・公正性など多くの問題をはらんでいる。民間試験が延期されてよかったが、それで終わりにしてはいけない」と訴えた。

 共通テストは現行の大学入試センター試験の後継で、英語民間試験の導入のほか、国語と数学で記述式の問題を出題することが目玉。しかし、機械で処理できるマークシートと違い、約五十万人の記述解答を短期間に採点するのはセンターでは無理だとし、民間企業に委託している。

 同会は記者会見し、予備校講師の吉田弘幸さんは「共通テストの規模で記述式を入れるのは無謀。英語民間検定試験が破綻したのは、民間業者に丸投げして文科省のコントロールが利かなかったから。同じことが起きる」と批判した。

 英語民間試験の延期決定について、英文学が専門の阿部公彦東京大教授は「だれが見てもおかしい制度をここまで引っ張ったのは、民間試験ありきだったから。教育の利権や市場化の流れがある。国が責任を持たないと、受験生でなく業者ファーストになる。なぜこの失敗が起きたのか検証してほしい」と語った。

◆業者ら「準備が…」

 英語民間試験を実施する企業や団体は、突然の導入見送りで対応に追われた。いち早く受験予約を開始していた日本英語検定協会(英検)の担当者は「文科省から説明を聞いた上で対応を協議したい」としつつ、「文科省には受験生が戸惑わないよう対応してもらいたい」と注文。同協会は、入試の参加条件に合わせるため、新しいテスト方式も開発していた。

 ベネッセコーポレーションは「2020年度の開始に向け準備を進めてきたので、非常に残念」、TOEFLの作成団体の米ETSは「現状の議論を注視しつつ、生徒の英語力向上に日本が尽力することを引き続き支援する」とコメントを発表した。

 受験者増を見込み、試験日や会場、試験官を増やす対策をしているところが多く、ある団体は「いろいろ意見はあると思うが、こちらは準備を含め、すでに手順を踏み、手続きしてきている」と不満げに語った。

 別の団体によると、文科省から連絡が来たのは、萩生田光一文科相が閣議後会見で発表した後。担当者は「来週正式な説明をするというので、それを受けて今後の対応を検討したい」と困惑気味に話した。

 

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