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【社説】

APEC断念 米中の行方が心配だ

 チリで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)が中止となった。米中首脳会談による貿易対立終結の期待が高まっていたが不透明になった。会談実現に向けた調整を強く促したい。

 チリでは経済格差を背景としたデモが激化している。閣僚も多数辞任するなど混乱は拍車がかかっており、要人の安全確保の観点から開催断念はやむを得ない判断だろう。

 APECでは、貿易をめぐり鋭く対立する米中首脳が会う予定になっていた。両国は十月十一日の協議で部分的に合意。トランプ大統領と習近平国家主席の会談で合意文書の署名が図られる可能性が高かった。期待が大きかっただけに、堅調だった株式や為替など金融市場への影響が心配だ。

 今回の部分合意では、中国が米農産品の購入を大幅に増やすことや、知的財産権保護をめぐり中国側が規制強化に乗り出すことなどが含まれていた。ただ米国が最も強く批判する企業への助成措置については合意されていなかった。

 しかし、米中の関税合戦の影響で世界経済が減速する中、部分的であっても首脳同士が合意すれば、流れが好転する大きな節目になるとみられていた。実際、一連の動きを踏まえ米国は十五日に計画していた追加関税引き上げを見送っていた。

 今後、譲歩を迫られる中国側が、APEC開催断念を利用する形で首脳会談に応じなかった場合、関税合戦が再開する恐れは強い。米国側はいずれのケースでも会談を開く方針を打ち出している。ここは場所などを調整した上で、なるべく早いタイミングで会談を行うよう両首脳に強く要望したい。

 このままAPECが開けなかった場合、一九九三年の会議発足以来、初の事態となる。主要各国が参加する国際会議は利害対立から意見調整が難しい。だが全体会合でグローバルな課題について意識共有はでき、そのこと自体が大きなメッセージとなる。

 さらに各国首脳が一堂に会するため毎回活発なトップ同士の二国間協議が行われる。今回も米中のほか日米、日中、立ち話程度の接触であれば日韓さえ視野に入っていた。

 首脳同士の直接交流は複雑に絡み合う外交対立が解ける糸口になる。参加各国には代替地で開催できないかぜひ検討してもらいたい。同時に日本はそれを引き受ける気構えを持ってほしい。  

 

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