失業してアメリカ自然史博物館の夜間警備員となった男ラリー。
しかしラリーのかわりに老警備員3人が退職させられていた。
しかもその博物館は夜になると展示物が勝手に動きまわり……
2006年の米国映画。ひとつの巨大博物館を舞台に、VFXを多用したアクションコメディが展開される。
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シリーズ映画化もされた人気作で、レプリカの質感で動きまわる展示物などの映像はよくできているが、残念ながら世界観に乗ることができなかった。
主人公の行動がコメディにしても場当たり的すぎるのはまだいい。気になったのは、そのように主人公の視野がせまいまま物語が終始終わって、主人公以外の弱者が軽視されて終わったところだ。
老警備員が博物館から盗みをはたらくのは犯罪として批判されるべきだし、現場で主人公と敵対するのは理解できるとして、そのように追いこんだ博物館の経営者に根本的な問題があるはずだ。なのにラリーが警備員をつづけられる結末のため、博物館の経営も大成功して終わってしまった。
博物館という、その社会の価値観がむきだしになる舞台において、米国の古典的なマジョリティを慰撫する描写ばかりなのも見ていてつらかった。
主人公を助けるルーズベルト大統領はアメリカ先住民の少女展示物に恋をしているし、南北戦争のミニチュア展示物は主人公にさとされて和解する。エジプトやインカの展示物も登場しながら、先の先住民少女もふくめて欧米に収奪された歴史は言及されない。
火を発見したネアンデルタール人の展示物が、当時としてはきわめて先進的な存在だったはずなのに、放火したがる愚者のように行動したのも残念だった。そこは古き人類が主人公より最新機器を見事に活用して笑わせるところではないのか。
せっかく展示物が動いて自分の言葉で話せる設定なのだから、博物館の説明の古い誤りを指摘したり、帝国主義的な欺瞞性を批判するような展開を見たかった。