名前がわからないとお店の人も苦しい
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
うちのようなバーもそうですが、最近流行りのカウンターでみんなが会話するスナックのような「初めて行ったお店」で、お店の人や他のお客さんとすごく会話が盛り上がってしまうときってあります。
それっていい体験のようですが、実は2回目に行くのを躊躇しませんか? あれだけ会話したのにマスター、自分のことを覚えてくれてなかったらどうしようとか、常連さんや、カウンターの中の人がガラッと変わってたらどうしようとかって感じです。そういうときは、「できるだけ早めに2回目行く」というのがポイントなのですが、1ヶ月後、半年後になるともう行きづらくなります。
常連になるのが上手い人って、そういう場合、電話で「覚えてないかもしれないのですが、2ヶ月くらい前にカウンターで盛り上がった広告の仕事をしている橋本(仮)と申します。今から伺いますが、カウンターあいてますか? マスターもいらっしゃいます? じゃあ10分後くらいに到着しますので」って感じで連絡してきます。
あるいはもう少し敷居の高いお店なら、Facebookのメッセージで、「7月末の水曜日にお伺いしてカウンターで日本酒と鮎の塩焼きをいただいた橋本と申します。妻が行ってみたいと申しておりまして、カウンター、できれば7月の時と同じご主人の目の前の席を2席予約できればと思いましてご連絡さしあげました」って感じで連絡するそうです。これだと職業やアイコンの写真で顔がわかるので、店側も「ああ、あの時の人だ」って思い出してくれます。
お店側としても、突然来店されて「あれ? この方、顔知ってるんだけど、ええと、誰だっけ?」っていうの、すごく苦しいんです。できればお店の人に、「こんばんは。先日、妻と来て鳥の唐揚げが美味しくて追加した者です」とかって自己申告していただけるとすごく助かります。
どうやって顔や名前を覚えるのか?
飲食店を長く続けていると、「どうやってお客様のお顔や名前や好みを覚えていますか?」という質問をされます。実は以前もこの連載で書いたことがあるのですが、普遍的なお悩みのようで聞かれることが多い質問です。今回は改めて顔と名前の覚え方をご紹介します。ちなみに今は僕は怠惰になってしまってやっていないのですが、以前はこうしていました。
まず日誌を作ります。そして、わかれば来店した方のお名前と職業を、あとどんなものを注文してどんな会話をしたかというのを詳細に書いておきます。例えばこんな感じです。
12月4日火曜日 夕方、雨が降り出したので、今夜はヒマかなと思っていたら、スーツを着た30代半ばの男性二人組が来店。カウンター。「ネットで見た」とのこと。濃い赤ワインがお好きとのことで、南仏のシラーをすすめる。チーズをご注文。お二人で6000円。お帰りの時に「近くの不動産屋で働いているからまた来る」とのこと。背の高い方が鈴木さん。「こんど女の子と来よう」と言って笑ってた冗談好きの方が渡辺さん。
こういうのを毎日つけて、ヒマなときに「あ、そうか、渡辺さん一番最初に来たのこの時だ」って感じで、何度も何度も頭に入れます。
もし名刺をいただいたら、その瞬間に「相手のお名前を声に出して読み上げる」というのが絶対に良いとよく言われます。頭の中で読み上げるのではなく、声に出して読むという「アウトプット」が覚えるコツのようです。日誌にちょっとした会話とか雰囲気のことを書き込むのも「アウトプット」なわけです。
そしてすごくベタですが、「珍しい名字ですね」とか、「香菜さんですか。菜っぱが香るんですね」って感じで名前について少し突っ込むと、「秋田に多いんですよ」とか「母が自然が好きでつけたんです」って会話が生まれます。これが名前を覚えるきっかけになります。
名刺にはいただいた日付とその方の特徴をどんどん書き込みます。誰かの紹介であればもちろんその方のお名前も書きます。あと、これは何かで読んだ話なのですが、「脳で人を覚える場所と、エッチなことを考える場所がすぐ隣なので、エッチなことを書いておくと忘れない」そうです。ほんと失礼ですが「胸が大きい女性」とか「前がもっこりしてた男性」とかって感じです。参考まで。また、「大阪弁」とか「金髪」みたいな特徴はもちろんです。
そして名刺を見えるところに置いて、できる限り、その当日は、その方のお名前を呼ぶのが一番効果的だそうです。確かに「木村さん」って何度も呼んでいると、自分の口と頭に定着しますよね。
さて、2回目に会ったとき、やっぱり名前を失念していたりします。それを回避する有名な方法に「すいません、お名前、何でしたっけ?」って聞いて「木村です」って言ったら、「それはもちろん覚えてます。下のお名前ですよ」という逃げ方があります。あるいはビジネスマンなら自分の名刺を出して、「名刺交換、先日しましたっけ? 私、部署が変わってるかもしれないので」っていうのもあります。
でも、かなり長く営業をやられている方が仰っていましたが、正直に率直に「すいません。お顔は覚えているのですが、お名前を忘れてしまって」って伝えるのが一番だそうです。「だって林さん、そう言われて、この人失礼だなあって思ったことあります? だいたい、いやあ僕もよく忘れるんですって盛り上がりますよ。その方が正直で誠実な印象を与えられるし、『この人誰だっけ』って落ち着かない時間も省略できます」だそうです。やっぱり忘れたときはすぐに聞きましょう。
あと、SNSのアイコン、顔を出してしまうってやっぱり本当に効果的です。フリーランスの方はオススメします。店の人間とかはすごく覚えやすくて「楽」です。