敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。今回お話を伺ったのは、株式会社ZUU代表取締役の冨田和成(とみた・かずまさ)さんです。
株式会社ZUUは、金融経済メディア「ZUU online」を含む資産運用の総合プラットフォーム運営、フィンテック化の推進支援や、企業に対して「鬼速PDCAシステム」を導入するためのエンジニアリング事業を展開。
一橋大学在学中にIT分野で企業し、卒業後は野村証券株式会社に入社。現在は代表取締役として活躍する冨田さんの仕事術とは。さらに新著『資本主義ハック』の執筆時のエピソードも伺ってきました。
自宅から会社まで徒歩5分はポリシー。アウトプット系の仕事は朝に片づける
――1日の働き方について教えてください
6時か6時半に起床して、7時半出社。自宅から会社までは徒歩5分以内です。出勤時間を短くするというのは、ずっとポリシーとしてあります。
8時半くらいまではメールを確認したり、頭を使うアウトプット系の処理をしたり。午前中のもっともパフォーマンスの高い時間帯にまとまった時間をとるようにしています。
そのあと日中は、ほぼ社内外でのミーティングがびっしり入っています。ランチは打ち合わせがてら食べることもありますね。また、この1年間、会社の社員数が倍以上になるペースで成長しています。その採用面談の時間も多いですね。
夜の時間は、社内や、打ち合わせのあった場所の近くのホテルなどにこもって仕事をすることもあります。帰宅は、だいたい22時か23時。6時間は睡眠にあてているので24時間働いているとは言えないかもしれませんが、私は基本的に365日働いています。
誰よりもマインドマップを使いこなす。時短になる音声メディアも駆使
――自身の仕事に欠かせないツールやアプリはなんですか?
まず、マインドマップ。言い過ぎかもしれないけど、誰よりも使い込んでいると思います。思考の発散、ものごとの整理に欠かせません。立場上、仕事の戦略を考えるときにも使っています。
アイデアは、何人かでブレストしてぶつけ合うことで新しい発見があります。マインドマップは「ひとりでブレストをやっている」ようなイメージ。もちろん、オンラインでチームメンバーと共有してミーティングに使うことも多いです。
マインドマップのコツは、1カ所で思考が止まっても、やり続けること。例えばある戦略について考えていて、思考の「枝」が行き詰まったとします。そこで悩んで手を止めてはダメで、まったく関係なくてもいいから、「枝」を拡散できるところを見つけて考え続ける。これが1つ目です。
2つ目は、手が止まったらリサーチをしてみること。外部からヒントを得て、拡散していくんです。別のことを考えている間に、もとの思考のヒントになったりリサーチしている間にアイデアが浮かんだりします。
マインドマップはアイデアを拡散していくその見た目が脳の構造に似ていて、だから思考が定着しやすいとも言われています。
欠かせないツールとして紹介したいものがもうひとつ。「ここまでやってるんだ」って人からよく言われるのは、Kindleの読み上げ機能を使った読書です。だいたい2倍速くらいにして聞いています。単純作業をしているときや移動中にも、密度の濃い本からの情報を耳からインプットできますよ。
本を執筆するときにはワードの文章をMP3にして、Audipo(オーディポ)という音楽プレーヤーアプリで聞いて校正することもあります。自分で書いた文章だと2.5倍速くらいでも大丈夫。本を「聞く」ということであれば、Audible(オーディブル)もすごく使っています。もう100冊以上は聞いたんじゃないかな。耳からインプットするのは、情報の全体像をつかむには便利です。目を休めたいときにもね。
人への評価には必ず期待値が含まれる。「伸びしろ」をうまく伝えることが大切
――仕事のパフォーマンスを上げるための方法を教えてください。
企業のPER(株価収益率、「Price Earnings Ratio」の略)が期待値で決まるのと同様に、個人の期待値を上げることです。これは見せ方次第な部分があるので、どんな人にもチャンスが巡ってくる可能性がある。
例えば、何の実績も残していないのに評価されている同僚がいたら「おかしい」って思うかもしれません。だけど、人への評価には必ず期待値が含まれています。それが資本主義というゲームのルールです。
例えば、私は前職時代「海外のビジネススクールで学びたい」と考えていました。そこでビジネス留学するために英語の学習を始めたのですが、ライバルと比べて、スタート時の私の点数は圧倒的に低かった。
そこでその時点の点数ではなく、勉強を始めたときからの「伸びしろ」で評価してもらおうと考えました。TOEICやTOEFLの点数を、言われてもないのに時系列にして貼りつけたんです。私の点数は目に見えて右肩上がりで「学習スピードが早い」という印象づけに成功しました。
ライバルより点数が少し足りなくても、実力が同等程度なら、「伸びしろ」があるほうが期待値は高い。その部分を評価してもらえた結果、留学希望が無事に通りました。
――ご自身の仕事や考え方に役立った本を教えてください
学生のときに読んでとても感銘を受けたのが『夢に日付を!』(あさ出版)です。ワタミ株式会社創業者の渡邉美樹さんの本で、考え方はすごくシンプルだけどインパクトがある。
実際に私も夢に日付をつけていて、いつ、なにを達成するかという目標を明確に立てています。「目標を立てれば必ず夢が叶うのか?」と言われると、プラスアルファの要素が必要になると思いますが、まずスタート地点に立つことが大事。そこに立っている人は少ないのです。
そして目標は高く設定すること。さらに、そのことを周りに伝え続けること。高い目標は、目指している人が少ない。そこを目指していることが認識されれば、その上位数%の人たちとのつながりができたり、助け舟を出してくれる人が現れたりします。
「怒られる」ことを恐れなくてもいい
――これまでもらったアドバイスで心に残っているものは?
「お客さまから怒られたほうがいい」「怒られまくれ」と、前職の証券会社ではよく言われていました。
マーケットが下がったら、担当のお客さまがすごく怒っているだろうと頭をよぎります。だけど、電話はかけなきゃいけない。実際、お客さまも怒りのやり場がないから「なにやってるんだよ」って。でも、怒られているということは、お客さまがまだ関心を持ってくれているということです。
私は、前職で一度だけお客さまの前で泣いてしまったことがあります。なかなか取引につながらなかった方を担当させていただくことができて、とてもうまくいっていたのに、ある取引がマイナスになってしまいました。
そのとき、どうしても電話をすることができなかったんです。結局、お客さまから連絡をいただいて、会いに行ったら「君とだから取引した」「連絡をくれるはずだと思ってずっと待っていたんだよ」と声をかけられて…。
そのときに、お客さまの信頼を裏切るということはこういうことなんだと身にしみました。怒ってもらえるうちが華だから、怒られることを恐れなくていいと思います。
――ご著書『資本主義ハック』執筆の背景を教えてください。
大前提として、日本では「資本主義」という言葉が否定的に使われがちです。そして、そういうときはたいてい、金融資本が否定されていると感じます。だけど資本主義とは、「金融」「固定」「人的」「事業」の4つが組み合わされたもの。
いまは、誰にも平等だと思われている時間をお金で買えたり、固定資本が小口化されたり、「資本」を個人で持ちやすくなった時代です。お金がないとダメだと思われているけど、本当はもっと幅広い。それに気がついてほしい。
歴史上、誰にでもチャンスのある時代がいまなんです。10年かけて成し遂げるようなことが2〜3年でできたり、自分にとって「こっちの道はないな」と思っていたような世界が広がったり…。
実は、資本主義って誰にでも可能性を与えるための仕組みなんだよ、って。資本をコントロールすれば、ひとりひとりが掲げた目標、夢が叶う時代なんだよっていうことを伝えたかったのが大きいですね。
ひとりでも多くの人に資本主義で生きていくことを楽しんでもらいたいと思っています。
Source: 『資本主義ハック 新しい経済の力を生き方に取り入れる30の視点』(SBクリエイティブ),『鬼速PDCA』(クロスメディア・パブリッシング)
Photo: Yo Noguchi
いずみかな
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