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圭介さんが荒木荘を出ていく日が来ました。
(圭介)急に わがまま言うてすんませんでした。
(さだ)ほんま あきれるわ。すんません。
まあ 若いうちはこういうこともあるわな。
電車ですぐやし いつでも顔出し。はい。
雄太郎さん 時代劇 出られるかどうか分かったら教えて下さいね。
(雄太郎)知りたかったら 聞きに来い。
ちや子が二度と敷居またがせん言うとったわ。
きついな…。
ちや子さんにも よろしくお伝え下さい。
喜美ちゃ~ん!(喜美子)は~い すみません…。
これ 迷ったんですけど 作りました。おっ 圭ちゃんの好きなおはぎ!
うれしいけど もう手がいっぱいや。ああ…。
ごめんな。 喜美ちゃん よかったら食べて。
はい うちが頂いておきます。うん。
ほな 失礼します。
気ぃ付けてな。またな。はい。
喜美ちゃん さいなら。さいなら。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
回想 (圭介)喜美ちゃんのおはぎが好っきゃねん。
やっぱ うまいわ~。
回想 僕と ここで暮らす思うたん?フッ 可愛らしいなあ。
喜美ちゃんが 荒木荘辞めんといてくれてほんま うれしいわ。
こう いって…。(2人)こう! アッハッハッハ…。
♪~
回想 圭介さん 圭介さん。あき子さんが来はりました。
喜美ちゃん ありがとう!
♪~
回想 喜美ちゃんのおかげや。 かわいい妹。
喜美ちゃん さいなら。さいなら。
♪~
恋なんて 二度とするもんかと固く心に誓った喜美子です。
恋物語は こうして終わりを告げました。
そして その年の暮れも押し迫り…。
(商店街のにぎわい)
(大久保)うん。
ふ~ん。やりくりも うまいことやってんで?
お豆さんも ようたけてる。
お豆さんはな。火の加減すんの初めから上手やった。
ほな もう認めてあげたら?
喜美ちゃんも もう3年目や。
ようできるようなりました言うて一人前のはんこ押したげたら?
そんな はんこ押したら荒木荘 卒業してしまいますがな。
寂しおまっしゃやないか。
そんな顔して…そんなこと言われても…。
はあ…。
こんにちは!こんにちは。
喜美ちゃん 何かあったん?うれしいことあってん!
・ただいま戻りました!
お帰り~!
大久保さん いらしてたんですか。
あんたが休み取ったさかい代わりに来たったんやないか。
すみません。フフッ どうやった? 学校見学。
3つ見てきたんです。3校と言いなはれ。
はい。 3校 見学させて頂きました。
うちみたいな中卒でも行けるところで美術に力を入れてる高校が2校と中淀の美術研究所いうところが1校。
ここが もう何て言うか通うてる人も個性的で特別講師も いろんな芸術家が…。はよ 着替えてきなはらんかいな!
はい。そこに決めたん?
そこやったら週3日の絵画コースいうのがあるんで荒木荘の仕事と両立できます。
えっ!? 荒木荘辞めへんの?
辞めたら 食べていけへん。
両立させてもらうつもりでおります。駄目ですか?
大歓迎や~! アハ~ッ!こっから学校通うん?
はい。あ~ 応援するよ~!
なあ?ほな 帰りまっさ。
もう帰られるんですか?
お孫さんの守りせんならん。ああ。
しっかり働き。はい!
ちや子さんの言うてたとおりそこが一番活気があって意欲的な学校でした。
(ちや子)今年からジョージ富士川を特別講師で呼ぶぐらいやからな。
ジョージ富士川… どんな人です?
ああ! サイン会があるんよ。これな 行っとき。
え~。この人が こんなんすんのん珍しいで。
行って 顔拝んどき。日本を代表する芸術家やで。
「パリ国立高等美術学校」…。
あれや 「自由は不自由やで」言う人や。へえ~。
うちの父もジョージいいます。そうなん?
いっぱい賞もらってはりますね。同じジョージでも えらい違いやわ。
学校のお金は大丈夫?
なんとか。着付けの仕事もぼちぼち頂いてるんで。
準備万端やな?
問題は 常治…。ジョージ富士川?
うちのジョージ…。お父さんな。
絵ぇ描くなんて 何の腹の足しにもならん言われんに決まってます。
内職でためた自分のお金で行くんやから。行きたいんやろ?
今 一番興味あることなんで。うん。
先のことは分からへんけど勉強してみたい。
うん。
(雄太郎)ただいま~!
お帰りな… えっ!?何!? ギターや!
マスターにもろてん。すごいやん!
もう歌える喫茶 さえずりに骨うずめえ!うずめるかいな。
何 言うとんねん。
「大阪五人衆」の死体役も落ちたんやろ?はあ…。
♪「落ちたってかまへん売れへんくてもかまへ~ん」
こういう人もおるから。先のことは分からんでもやりたいことあったら やったらええねん。
♪「やったらええよ~」
♪「ほな おやすみ~」
数日後 ちや子さんの上司 ヒラさんが荒木荘にやって来ました。
こんにちは!(平田)おう 喜美ちゃん。
ご無沙汰してます。顔合わすの久しぶりやな。
はい。 空いてるお部屋きれいにしておきました。
住むん わしちゃうで?お知り合いのお嬢さんやそうで。
ああ。 春から大学行くんで下宿探しとったんや。
どうぞ お上がり下さい。ありがとう。
来た 来た。 うちが案内します。で そこが 物干しです。おお どんな眺めや?
別に どうもない眺めですけど。
ヒラさんほんまに下宿部屋見に来ただけ?
何でや?いや 知り合いのお嬢さんのためにわざわざ出向くやなんて。今 大変な時期やのに。
そりゃあ 大変は大変やけどな。
これ さださんの試着品です。試着品? ほな よう見とこか?
あかん! 触ったら!ハハッ お前が言うからや…。
よけとこ。こんなとこで言うことやないけどうちの社 赤字続きは変わらんからな。
お前も 身の振り方考えといた方がええぞ。
何 言うてますのん。 うちは新聞記者道をヒラさんに教わりました。
ヒラさんに認めてもろたおかげで今のうちがあるんです。
うちは ヒラさんについていきます。辞めません!
そうか…。こんなとこで言うことやないけど。
今日は 世界的な芸術家ジョージ富士川のサイン会の日です。
ちや子さんに勧められ思い切ってやって来ました。
♪~
サインをご希望の方こちらへお並び下さい。
来はった 来はった!
お~ ボンジュール ボンジュール。ジョージ富士川が来たでえ。
はいはい ごめんな。
はいはい。いつも応援してます。ありがとう。
こてこての大阪弁に驚いた喜美子ですがこのあと 更に驚くことが待ち受けていたのです。