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世界的な芸術家ジョージ富士川を一目見ようとサイン会にやって来ました。
(ジョージ富士川)ボンジュール ボンジュール。ジョージ富士川が来たでえ。
はいはい ごめんな。
こてこての大阪弁に驚いた喜美子ですがこのあと 更に驚くことが…。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
自由は不自由やで。
♪~
どうぞ。ありがとうございます。はい。
(喜美子)お願いします。あっ はい。
お名前は?川原喜美子と申します。うん。
来年 中淀の美術研究所の絵画科に通おう思てます!
ああ! そこ僕が特別講師頼まれたとこや。はい!
ほな また お会いできますね。はい!
基本を学ぶことは大事なことやで。
土台がしっかりして初めて自由に描ける。
はい。
きみこは どんな字?喜ぶに 美しい子です。
(広東語で)
ちょっと! 割り込まんといて下さい!(広東語で)
喜ぶに 美しい子です。 喜美子と申します。
(草間)喜美子…。
(ジョージ)どうぞ。ありがとうございます。
川原喜美子さん…?
草間さん…。
喜美ちゃん!草間さんや~!
♪~
じゃあ このさえずりコーヒーで。
(雄太郎)はい。 草間流柔道さんさえずりコーヒー 1つ。(マスター)はい。
草間流柔道さんって…。
(さだ)草間流柔道来たて ほんま!?
僕が連絡した。あは~!
お宅が? 草間流柔道さん?そう 草間流柔道さん。
草間流柔道です…。
荒木さださんです 荒木荘の。初めまして。
喜美子が小さい時 お世話になったそうで。
(草間)いやいや…。(さだ)よう聞かされてます。
草間流柔道 何かいうと口にしてな。どんな人やろう思うてたけど…。
(雄太郎)思うてたより…。シュッとしてる シュッとしてる~!アッハッハッハ。 座って 座って もう顔見に来ただけやねん 仕事戻らな。
わざわざ すみません。ううん こんなことあることちゃうもん!
今日は ゆっくりしてええからな。ごはん食べに行っといで。
ええんですか!?ええよ~ 会いたかったんちゃうの?
はい。よかったな~。
よかった よかった。
ちや子さんにも会わしたかったな。連絡したけど 忙しい。
あっ うちも戻らな。 ほな草間流柔道さん ごゆっくり。
マスター ごめんな。(マスター)いいえ。失礼しました。はい。
失礼します。 お邪魔しました~!ありがとうございました。
何や うるさいだけやったな すんません。すみません。
いや。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。
どこまで話しましたっけ?
えっと… 荒木荘で働きだして…。お父さん来たところ?
あっ そや 3年帰らん言うた話。
信楽には帰らないで荒木荘で ずっと働いていたんだね。
細かく言うともっと いろいろあったんですけど今は仕事にも慣れて。
うん もう聞かなくても十分今の感じで分かったよ。
そうですか?うん よくしてもらってるんだね。
はい。頑張ったんだね。
はい。よかった。
草間さんは どうです?どんな感じでした?
どんな感じ?これまで ええ感じで過ごしてきたんかあんまり ええ感じやなかったんかぼちぼちな感じか 最悪か。
う~ん…。
あ… 終戦のあと離れ離れになったままや言うてた奥さん見つかった…?
写真見せてもらったん 覚えてます。
(雄太郎)お待たせ~。ありがとう。
はい さえずりコーヒーです。ありがとうございます。
これ 喜美ちゃんのサクランボ サービスしてあるで。
わあ! ありがとうございます。はい。
ごゆっくり。
♪~
これや! これこれ! きれいな人やん。
ハハッ。 まあまあやって。えっ?
昔 写真見せた時喜美ちゃん 「まあまあやな」って。
ええ!? そんなこと… 言うたか。
ハハハッ すみません。
今 見たら きれいな人や。お世辞言うこと覚えたんだね。
やめて下さい!ほんまに きれいな人です。
優しそうや。
最近 よく思い出すことがあって…。
はい。お店をね…。お店?
お店をやろうって言ってた。
奥さんがですか?
お客さん 6~7人でいっぱいになってしまうような小さなお店でいいから。
何のお店?う~ん 飯屋? とりあえず。
何ですか? とりあえずて。
当時は 一緒になったはいいけど 2人で過ごす時間が ほとんどなかったんだよ。
だから いつか満州から引き揚げて日本に戻ったら2人でお店でもやろう。 そうすればずっと一緒にいられるからって…。
ほう~! そういうことか。のろけや~ん。 アハハッ。
飯屋だよ?ええやん 飯屋。
でも 焼き飯とか作れない。ええっ 焼き飯作れへんの?
作れないよ 今も昔も。あかんやん奥さんの夢 かなえてあげられへんやん。
うん。 そう…かなえてやれなかった。
その夢を… 向こうは かなえてた…。
この近くの商店街の外れで 店をやってる。
生きてたん…?
奥さん 生きてたん!?
よかった… 生きてたんや。よかったですね。
別の人と。別の人?
お店を僕じゃない 別の人と店をやってる。
満州から引き揚げてくるのが遅かったのかな…。
僕が… もう 僕が死んでしまったと思ったのかな。
別の男の人とその… 暮らしてたっていう…。
そういう事実を 誰も みんな…僕には… 言えなかったんだろうな。
ずっと 何年も… 知らないで 僕は…。
知らないで捜して…。
いつか笑い話にできると思ってそしたら 喜美ちゃんにも連絡しようかと思ってた。
ばかみたいな結末で がっかりさせたね。
ごめんね。
そのころ ちや子さんもとんでもない状況に置かれていました。
(ちや子)ただいま戻りました。どういうこと?
ちょっと タク坊 どういうこと!?
(タク坊)何がですか?
ヒラさんや!何で ヒラさんの机 片してある!?
人が話してるんや こっち見ぃ!
ヒラさん新産業新聞に引き抜かれて辞めましたよ。
そんなこと…! いつ そんなこと!?
(石ノ原)ご苦労さん。ヒラさんが いきなり辞めたで!
ああ やっぱり お前 聞いてなかったんか。
えっ?
みんな知ってたん?
えっ… 知らんのうちだけ…?
俺も 来週には よそ移るでタク坊も。 なあ?
ちや子さんと違てこっちは生活かかってるんで。
うちかて 生活かかってるわ!
女と男はちゃうわ。何がちゃうねん!
お前 結婚せえ。はあ!? 何 言うてんねん!
俺やないで ヒラさんが そう言うてた。ほんまや。
結局 家庭に入るまでの腰掛けや 女はどう頑張ってもな。
中野さん これ どう…?(中野)ベタか…。
♪~
回想 (平田)お前も 身の振り方考えといた方がええぞ。
うちは新聞記者道をヒラさんに教わりました。
ヒラさんに認めてもろたおかげで今のうちがあるんです。
辞めません!
♪~
晩ごはん どうします?
せっかくだから 喜美ちゃんが食べたいもの ごちそうするよ。
草間さん 背ぇ縮んだ?えっ?
何や 小さい。
喜美ちゃんが おっきくなったからだろ?あ~。
あのころ 喜美ちゃん どうだろうこれぐらいだったかな?
背ぇ伸びたよね。そうか…。
「それだけやろか?」。あの強くて たくましい草間さんはどこかに消えてしまったんちゃうかと思いました。
そうか…。
どこ行こうか?
あのころ…。うん?
見上げたら 草間さんの顔の向こうに星が光って見えたわ。
ええ?
行きたい所があります。ええですか?
うん いいよ。ほな 行きましょう。