大学入試センター試験で、受験生にリスニング用の機器を配布する担当者(1月、東京都文京区の東京大学)
2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される英語民間試験について、文部科学省が実施を見送る方針を固めたことが1日、分かった。居住地や家庭の経済状況による受験機会の格差や公平性への懸念が消えず、受験生らの理解を得るのは難しいと判断した。文科省は今後、実施に向けて準備を進めていた受験生や実施団体、大学などへの対応策を決める。
英語民間検定試験は現行の大学入試センター試験の後継として20年度に始まる大学入学共通テストの英語で、導入される予定だった。「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問うため、英検やGTECなど6団体7種類の試験を活用し、20年4~12月の間に高校2年相当の子どもらが最大2回受験。大学入試センターが発行する「共通ID」で成績を管理し、大学側に提供する仕組みだった。
しかし、民間の異なる試験を比べることへの批判や、試験会場が少ない地方の受験生らに不利になるとの懸念が出ていた。会場や日程などの実施概要も全容が決まらず、全国高等学校長協会は9月、文科省に延期を要請していた。
そうした中で、萩生田光一文科相が10月24日のテレビ番組で受験生間に格差が生じないかとの懸念について「身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言。その後謝罪して撤回したが、野党が「格差を容認した」と反発し、民間試験の延期を要求していた。政府や与党の一部からも延期を求める声が出ていた。
英語民間検定試験の実施団体は試験会場の手配などを既に始めている。国公私立大の6割が同センターから成績提供を受ける予定だったため、今後入試方法の見直しを迫られる可能性がある。