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まもなく「2億円の遺伝子治療薬」が上陸…製薬業界は正気なのか?

グレタさんなら、きっと怒っている

こんな仕組みはいつまでも持たない

スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんが、国連気候サミットで行なった演説が全世界に波紋を投じ、その影響はいまだに収まらない。

“あなたたちが話すのはお金のことと、経済成長がずっと続くというおとぎ話だけ。
よくもそんなことが言えるね。現在の置かれた状況がわかっているのに、なにも行動しないあなたたちは罪人だ。私たち若者は、あなたたちがなにも行動しないことで生じた結果とともに、今後も生きていかなければならない。全ての未来の世代の目はあなたたちに注がれている。あなたたちが私たちを失望させる選択をすれば、私たちは決して許しはしない”

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グレタさんはこう言って、若い世代を代表し地球温暖化対策の即時実行を各国の指導者に迫った。若者たちの、「いつまでも経済成長は続かない」「このままでは、いつかこの社会は破綻してしまう」という危機感は、環境問題だけに当てはまるものではない。医療保険も同様だ。

 

同時期には、特定非営利活動法人「日本医療政策機構」によるアンケート調査で、高額医薬品の導入が続くわが国の国民皆保険制度が2040年まで維持できると思う人の割合は半数以下、という結果が出ている。とりわけ、若い世代ほど悲観的だ(https://hgpi.org/research/hc-survey-2019.html)。

日本の皆保険制度が崩壊すれば、被害をこうむるのはもちろん若者世代だ。いつ彼らがグレタさんと同じように、皆保険制度が崩壊するのを座視するばかりの年長世代にむかって、怒りの声をあげ始めても不思議ではない。

近年とくに問題視されているのが、遺伝子治療薬の高額すぎる薬価である。

遺伝子治療は、CAR-T細胞療法に代表されるような悪性腫瘍(がん)の治療にも用いられているが、本稿では対象を脊髄性筋萎縮症など遺伝性難病に絞る。下表には、ヒトを対象とした臨床研究がおこなわれ、遺伝子治療の有効性が確認された疾患を示した。先天性免疫不全症から、神経変性疾患まで多岐にわたる。

現在薬事承認されている遺伝子治療薬は、世界でもまだ10種類にも満たない(表中の赤字)が、いずれも数千万円から2億円と超高額な薬価がついている。