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【社説】

英総選挙へ EU離脱を問い直せ

 欧州連合(EU)が英国の離脱期限延期を認め、今月末の合意なき離脱は当面回避された。英国は十二月に総選挙を実施する。混乱が続くEU離脱の是非を問い直す好機としたい。

 七月に就任したジョンソン英首相は、EUと新離脱協定案で合意したが、下院は採決を見送った。

 ジョンソン氏はEUとの合意や英議会の承認がなくても、今月末までにEU離脱を強行する構えだった。議会は協定案を承認しなかった場合に備えて、離脱期限を来年一月末まで延期するよう政府に義務付ける法律を成立させ、先手を打っていた。ジョンソン氏も従わざるを得ず、EUに離脱延期を申請、EUも承認した。

 ジョンソン氏の専横を止めたのは、英議会の機能と底力だろう。

 ジョンソン氏の総選挙実施動議は否決されたが、「合意なき離脱の恐れはなくなった」として最大野党・労働党が総選挙実施賛成に転じ、十二月十二日に行う法案が下院で可決された。

 二大政党の最近の支持率は与党・保守党37%、最大野党・労働党22%にすぎず、選挙の行方は見通せない。

 保守党は政権基盤を強化し、EU離脱実現を目指す。

 EU残留派の野党第二、三党のスコットランド民族党、自由民主党は、総選挙を離脱の是非を問う再国民投票と位置付ける。

 労働党も国民投票実施をマニフェスト(政権公約)に掲げるが、EUとの経済関係を重視する穏健離脱派もいて、一枚岩ではない。

 新党「離脱党」は早期離脱を訴える。

 離脱の是非を問うた国民投票から三年四カ月がたつが、政府案は何度も否決され、離脱の方向性すら見えない。紛争の火種になりかねない英領北アイルランドとアイルランドとの関係は定まらず、EUとの将来像も描けないままだ。

 国民投票後に、分かったことも多い。

 合意なき離脱の場合、食料品や医薬品の供給が滞り、社会不安も広がる。関税の復活で英国生産のメリットはなくなり、すでに自動車工場の閉鎖が相次ぐ。

 総選挙は、EU残留か離脱かを再び意思表示する機会ともなる。議論が深まれば、離脱の是非を問う国民投票を再度実施してもいいのではないか。

 ただ、三年前の国民投票時のような、根拠のないキャンペーンに左右されることのないよう、注意が必要だ。

 

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