【ソウル=恩地洋介】韓国軍合同参謀本部は31日、北朝鮮が同日午後、中部の平安南道から日本海方向に向けて飛翔(ひしょう)体を2発発射したと発表した。日本政府関係者によると200キロ超飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したとみられる。米韓軍や日本の防衛省が分析を急いでおり、同省は弾道ミサイルとの見方を示している。
北朝鮮による飛翔体発射は10月2日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を撃って以来。今年5月以降では12回目となる。日本政府は31日、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開き、対応を協議した。
この後、安倍晋三首相は記者団に「我が国と地域の平和と安全を脅かすものであり、強く非難する」と強調。「今年に入り20発を超える発射が繰り返されており、目的がミサイル技術の向上にあることは明らかだ。これまで以上に安全保障上の警戒監視を強める必要がある」と語った。日本政府は北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議した。
韓国の聯合ニュースは米韓軍当局の分析として、飛翔体は陸上から発射されており、大型ロケット砲や地対地ミサイルの可能性があると伝えた。9月11日の朝鮮中央通信は、同10日に「超大型ロケット砲」の試射を視察した金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「今後は連射実験だけをすればよい」と語ったと報じていた。今回の発射はこの連射実験だった可能性がある。
北朝鮮メディアは31日夜の時点で飛翔体について報じていない。これまで北朝鮮は米国時間をにらんで早朝に飛翔体の発射を繰り返してきたが、あえて昼間に踏み切った今回の発射は韓国に対する示威行動ともとらえられる。
韓国軍は28日から定例の軍事演習に入っている。11月8日までの間、北朝鮮からの攻撃を想定して陸海空軍の合同上陸訓練や合同防空訓練を実施する予定で、これに反発したとの見方が出ている。
7月下旬以降に短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返した北朝鮮には、非核化交渉の再開をにらみ米国をけん制する狙いがあった。特に10月2日のSLBM発射は、3日後にストックホルムで開かれた米朝実務者協議を控え、米国側に圧力をかけようとしたのは明らかだった。
5日の米朝協議は結局、北朝鮮側が一方的な決裂を宣言し、米国に対して年末までに譲歩するよう迫った。今回の飛翔体発射についても、北朝鮮が自ら設定した年末の期限を念頭に危機を演出する対米戦略の一環であるとの分析がある。
27日には今年2月まで米朝交渉に携わった金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長が談話で、米政府高官が北朝鮮を敵視する政策にこだわっていると指摘し「朝米関係の維持にも限界がある」と主張していた。