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『第三夫人と髪飾り』(95分/ベトナム/2018)
原題『The Third Wife』
【監督】
アッシュ・メイフェア
【製作】
アッシュ・メイフェア
【出演】
トラン・ヌー・イェン・ケー
マイ・トゥー・フオン
グエン・フオン・チャー・ミー
グエン・ニュー・クイン
レ・ブー・ロン
映画『第三夫人と髪飾り』のオススメ度は?
星4つです。
桃源郷です。
女性蔑視の時代がありました。
14歳で嫁ぐとはどんな気持ちでしょうか。
しかも第三夫人として。
初夜を迎える儀式。
性の手ほどき。
美しい演出です。
いやらしくはありません。
恋人と観に行ってください。
映画『第三夫人と髪飾り』の作品概要
19世紀の北ベトナム。まだ一夫多妻制度が残る時代。本映画の監督アッシュ・メイフェアさんの曽祖母が実際に経験した話を元に脚本が書かれました。14歳で嫁ぐ少女の目線から描いています。
映画『第三夫人と髪飾り』のあらすじ・ネタバレ
2艇の船がゆっくりと川上に向かって進んでくる。赤い衣装を着た女性が見えます。まだ幼い。彼女は14歳。親が決めた相手と結婚します。相手は養蚕を営む大金持ちで父親くらいの年齢。しかも第三夫人として。役目は男児を生むことです。初夜の儀式、そして妊娠。第一夫人、第二夫人との関係は、、、。そして男児を生むことができるのでしょうか。
映画『第三夫人と髪飾り』の感想・評価・内容・結末
新しい才能登場アッシュ・メイフェア監督
またすごい映画に出会った。いや途轍もない映画に出会った気持ちです。その喜びで体が今も熱く震えています。
この映画はベトナム人女性監督アッシュ・メイフェアが撮りました。彼女の祖母曽祖母の経験をもとに脚本を書きました。
その脚本を評価したのがスパイク・リー監督です。スパイク・リーの全面協力で本映画が作られます。
でも5年の歳月を要しました。まず彼女の生い立ちについて説明します。ベトナムで生まれましたが14歳でオーストリア、英国オックスフォードで学んだ後、ニューヨーク大学でスパイク・リーと出会います。
ですから彼女はベトナムで長期間暮らしていません。
アッシュ・メイフェア監督の5年間のこだわりが結実した
本映画を撮るにあたって、母国ベトナムで数ヶ月にわたって暮らしています。このロケ地のように19世紀の面影が残る場所で。
キャスティングもこだわりました。第一夫人のトラン・ヌー・イェン・ケー(ベトナムで最も有名なトラン・アン・ユン監督の妻)は当時と同じ衣装を身につけて数ヶ月、その村で暮らしてもらっています。
装飾品にもこだわっています。
そして主役のメイ(第三夫人)(グエン・フオン・チャー・ミー)を探すために何度もオーディションを行い見つけた時は映画が成功すると確信したそうです。
このようにメイフェア監督のこだわりが結実した5年間でした。そして見事な映画になりました。
男児を生むことしか期待されていない
映画の物語は女性蔑視の時代の話です。19世紀のベトナムを舞台にしています。
今も世界のどこかで、女性は子供を産むための道具として扱われています。
しかも産むのは男児、男しか期待されていません。
本映画もその時代の話です。このような男児誕生にまつわる神話は多くあります。
わたしたちが暮らすこの日本も同様です。
女性で生まれたことがまるで意味を持たないような気持ちにもさせられます。
とても悲しくて、情けなくて、悔しくて、怒りすら感じてしまいます。
昼ドラのような愛憎劇は一切ない
映画は養蚕を営む大富豪の家に嫁ぐ14歳の少女メイの目線で描かれています。けれど彼女が嫁ぐ男は父親くらいの年齢の人物です。
しかもすでに二人の妻がいます。
第一夫人のハには男子がいま。第二夫人のスアンは男児がいなくて、女の子が3人います。
そしてこのメイは第三夫人として嫁ぎ、男児出産の役目を担っているのです。
妻が三人となると、とても複雑な人間関係、いじめや嫉妬、妬みが物語を左右するのではないかと思われがちですが、この映画にはそういったドロドロした愛憎はありません。
むしろ三人とも仲良く暮らしています。
女性監督ならではの演出、いやらしくない
特に第二夫人のスアンがメイに夜の営みを教えている場面が印象に残りました。
本映画のタイトルの“髪飾り”を使って手ほどきをしているのです。その手の動きがとてもエロティックです。
ちょっと興奮してしまいました。
またメイが初夜を迎える際の生卵を用いた演出は、さすが女性監督と思わせるような、エキゾチックであり、美しさ満点の表現でした。
いやらしさは全くありません。また初夜の翌朝、彼女が処女であったという証の血のついたシーツを外に掲げます。
みんなに公開するのです。本当にこんな習慣があったのかと思うとちょっとぞっとしました。
ベトナムでは上映禁止になった
新聞やネットで14歳の少女に対しての性描写は許されないと断罪された報道もありました。実際、ベトナムでは一週間で上映が中止に追い込まれました。
幼児ポルノになる可能性もあるからです。
でもそれほど調節的な性描写はありませんでした。
全然大丈夫かと思いますが、国や宗教によって考え方は違いますから致し方ありません。
神様にお願いするも、、、
映画では当時の女性は男児を生まなければ正式な妻にはなれないような傾向があります。
彼女はすぐに妊娠します。必ずや男の子が生まれるように神様にお願いをします。
同時に第一夫人にも新しい命が芽生えます。
彼女は第一夫人に対して少々ネガティブな祈りをしてしまいました。
結果的に第一夫人は子供を流産してしまいます。流産は自分のせいだとメイは考え込んでしまいます。
第二夫人スアンとの関係と第二夫人の秘密
その時、彼女を慰めてくれたのは第二夫人スアンでした。この場面の二人の関係がとても印象に残りました。
メイはスアンに性的な要求をするのです。レズビアンです。
これを脚本に入れた意味は大きいです。まだ何もわからない14歳の少女は性的なものは男性でもなく女性に求めてもいいと思っているのです。
とても純粋です。性に対してなんの偏見もない姿に本当の人間らしさを感じて胸が熱くなりました。とても素直な表現だったと思います。
現在のLGBT問題や性の多様性について、この監督はとても上手に表現し、メッセージを送ってくれました。
もう一人の14歳の少女は悲惨な結婚になった
さて映画の中でもう一つ衝撃的なことがありました。第一夫人の長男ラオと第二夫人のスアンが密通しているのです。
これが発覚子すると大問題です。
ラオは結婚をしなければいけませんが、スアンのことが好きで好きでたまりません。
そんな時に運悪く14歳の女の子が嫁いできます。
しかしラオはこの少女を拒否してしまいました。結婚は破綻です。
最悪なのは少女です。何もなかったと言われてももう遅いのです。傷物です。
実家には絶対に帰れません。実母も戻ることを拒否します。恥さらしの烙印を押されます。夫に拒否された女は生きてはいけません。
その時の少女が流した涙が本当に胸を痛めつけました。
彼女は自殺してしまいます。とても辛かったです。
女の子を出産してしまった悩み、、
さてメイは女の子を出産しました。もちろん皆は祝福しますが、これでは本当の妻にはなれません。
彼女が川辺で赤ん坊を抱えて不安げな顔で、毒花をちぎって赤ちゃんの口に持っていきます。
毒殺か、、、。
つまり女性にとっては行き辛い世の中である、だったら今死んでもらったほうが良いと思ったのでしょう。
第二夫人の次女の決意を応援したい
そして映画の最後は第二夫人の次女が締めくくります。
彼女は伸びた髪の毛を切って川に流しています。
これは女として生きるのではなく男として行きたいと言う意思の表れでしょう。
実際、劇中彼女は男になってたくさんの女を嫁に迎えたいという発言をしています。
まさに男尊女卑への抵抗であり、性の多様性を謳歌しようとする決意も感じられました。
撮影は全て自然光で撮っている理由はベトナムっぽさを出すため
この映画はとても美しいと思います。物語も美しいですが、映像と音がとにかく素晴らしいです。
わらう山々、川の囁き、風の揺らめき、ろうそくの灯り、笛の音、鶏、猫、犬、牛の足音、そして素朴な人々。
囁くような声でゆっくりゆっくり時間が流れていきます。本当に桃源郷の世界を彷彿させます。
映像は全て自然光で撮られているそうです。一切、照明は使われていません。
夜の場面もろうそくや炎を使って撮影したそうです。
ですから映画全体がソフトフォーカス、あるいは霧がかかったような雰囲気になっています。
それがとてもアジア的で、しっとりしていて心地良いのです。
こんな素晴らしい映画を作ったアッシュ・メイフェア監督の自作にはぜひ期待したいと思いました。
本当に素晴らしい映画です。
まとめ 映画『第三夫人と髪飾り』一言で言うと!
「もはや性を分ける時代ではない」
男だとか、女だとか、もはや性別で分ける時代ではありません。今や性は多様化しています。何十種類にも及んでいるからです。自由なのです。性の多様性なのです。偏見も差別も持ってはいけない時代を認識した方が賢明です。
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映画『第三夫人と髪飾り』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
アッシュ・メイフェア
製作
アッシュ・メイフェア
脚本
アッシュ・メイフェア
撮影
チャナーナン・チョートルンロート
美術監修
トラン・アン・ユン
ハ(第一夫人)(トラン・ヌー・イェン・ケー)
スアン(第二夫人)(マイ・トゥー・フオン )
メイ(第三夫人)(グエン・フオン・チャー・ミー)
ラオ(グエン・ニュー・クイン)
ハン(レ・ブー・ロン)
2018年製作/95分/R15+/ベトナム
原題:The Third Wife
配給:クレストインターナショナル
