2018/03/23
亡き母の写真や忘れてた黒歴史も復活! 「おもいでケータイ再起動」涙と笑いの福岡編
ゴマだれでいただくサバの刺身に、ごぼうのかき揚げと甘辛く煮た牛肉を乗せたやわやわのうどん、ごぼう天、プリップリの牛もつをあっさりダレで仕上げたお鍋、甘くて巨大なイチゴ……ああ、もう、すべて美味なり!
福岡である。あなたが持っている古いケータイをauショップに持ってきてもらえば、どの携帯会社のものでも関係なく再起動。ケータイに残る懐かしいデータを読み出しちゃいましょうというKDDIのイベント『おもいでケータイ再起動』が、3月2日〜4日の3日間、福岡で開催された。
JR博多駅から地下鉄で5分。おしゃれなショップやデパート、ホテルなどが並ぶ福岡有数の繁華街・天神の、こちらは「きらめき通り」というナイスなストリートに「au FUKUOKA」はある。
昨年7月に名古屋で、12月に仙台で開催してきた「おもいでケータイ再起動」ツアーの、今回の舞台がこちらである。
「おもいでケータイ再起動」も、全国巡ってはや3都市目
ケータイのバッテリーはしばらく充電せずに放置していると、完全に手持ちの電力を使い果たしてしまい、充電に必要なパワーすらなくなってしまう場合がある。それをこの「バッテリーテスター」という秘密兵器で蘇らせるのである。
このマシンにガラケーのバッテリーをセット。まだ息を吹き返す余地があるか否かを判定するというもの。昔はどのケータイショップにもあったそうだが、KDDIに現存したのはわずかであった。
そして充電アダプタも山ほど準備。au、au以外に対応するものをチョイスしてその場で充電。
「おもいでケータイ再起動」では、再起動後に、残っている写真を1枚選んでいただいてプリントアウトしたものをプレゼント。過去2回のイベントで、250人以上のみなさんにお越しいただき、400台以上のケータイを再起動してきました。さらに今回は不要になったケータイをリサイクルすると、現在利用しているスマホに画像を移行する試みも行いました。
何年かぶりにクローゼットの奥から引っ張り出してきて、うんともすんとも言わなかった昔のケータイが起動した瞬間、みなさんの顔もパッと電源が入ったみたいになる。自分が生まれる前の両親のデートの写真に、今は亡きお母さんの元気な頃の顔に、学生時代の若気の至り的な画像に、喜び、微笑み、そしてすすり泣いたり。
今回の福岡でも、ケータイの再起動とともにたくさんのおもいでが蘇ったのでした。
福岡で再起動したケータイとおもいでたち
では、古いケータイからどんなストーリーが呼び起こされたのでしょうか。
■「キャバクラ衣装でパチリ!」 久家史愛さん
彼女のケータイに残されていた写真は、まさに宝の山。高校2年生から大学卒業直後まで、おもに郷里の熊本で過ごした日々の記録がたっぷり出てきたわけですが、最初に目を惹かれたのは2009年8月に、あるクラブで撮影した三浦大知とLLブラザーズのイベントの模様。せまくて薄暗いハコで躍動する大知くんの姿に、「あー! 立派になったよね!」と感慨もひとしお。
そして1,000枚近くあったのがプリントシールの画像。「昔はよくゲーセンで撮影してたんですよね。で、そのままデータをケータイに送ったのがすごくたまってて……わーこれ、すごーい!」
センターが彼女。大学時代のお友だちと撮ったプリントシールのデータだそうで。
「当時、キャバクラでバイトしている友だちがいて、その子の部屋に出勤用の衣装がいっぱいあったから、みんなで着て写真撮って遊んでたんです。これ、その流れで撮ったプリクラだ!(笑)」
10年近く前の出来事。ゲーセンでこれを撮った時、ヘアメイクはキャバクラ仕様だったけど、みんな自前の洋服に着替えていたそう。洋服まで完璧にキャバクラ仕様で、お友だちの家で撮った記録が、こちらになります!
彼女は右から二人目の青いドレス。……みたいな大ネタもあるにもかかわらず。
プリントしたのは、去年亡くなった飼い犬・パピヨンのパピ。「相当おもいでのフタが開いちゃいました。楽しかったです。でも、やっぱり1枚プリントするならパピかな。かわいいでしょ?」
■「わー、こら黒歴史や!」 吉原靖さん
約20年前、大学時代に使っていたケータイなど3台を持ち込んだ吉原さん。1台は起動せず、1台は暗証番号のロックを解除できず。というわけで、データは復活しないにもかかわらず、「ヒッ」と短く叫んだのでした。というのも、バッテリーパックを外したところに1枚のプリクラが見つかったから。「…………あー、こりゃ元嫁ですわ(笑)。まだ付き合ってた頃やね」
バッテリーテスターにハメるのに、バッテリーから剥がす許可を求めると「ええよ!」と快く。「わー黒歴史やー」なんてニコニコ。それどうするんですか? と尋ねると「まあ捨ててもよかっちゃけど、貼り直すのもなあ……」とちょっぴり逡巡。結果「隠しとこ!(笑)」と、元の位置に貼り付けたのでした。
結局、その1台は再起動が完了するも、プリントアウトする写真はなし。
「でもよかったよ(笑)。連絡先わからんようになってた高校の先輩の電話番号が出てきたし、早速連絡しようかな」
■「出せる写真が…………ない!」増田有里さん(娘)、淑子さん(母)
さて、中学時代に使っていたおおよそ15年前のファーストケータイほか3台を持ち込んだ増田さん。お母さんともどもえらく盛り上がっているのは、あらぬ写真が出てきたからなのでした。
それはつまり、
ケータイでケータイを撮った写真。どうやら今持ってるケータイで、機種変した新しい機種を撮った模様。
母「なんでケータイでケータイ撮ってんの?」
娘「そんなんわからんよ(笑)。あ! よっぽど新しいケータイがうれしかったんと違う?」
母「あー、なるほどね(笑)。アホやねー」
てな具合で母子揃ってキャッキャ楽しんでいるのであります。
娘「あーーーーーーーーー、これっ!」
母「誰? 彼氏?」
娘「違うよーーーーーー。塾の先生!」
母「なんでそんなの撮ってるの?」
娘「えーーーーーーーーー、アタシこんな顔だっけ!」
母「今も変わらんよ(笑)」
17歳のバースデーを教室でケーキにローソク灯して祝う様子とか、ティーンの頃の娘さんの画像とか、説明はしてくれるけど全然見せてくれない。ちょっと見せてください、と声をかけると、娘さん答えて曰く「出せる写真が…………ない(笑)」。そしてようやく出てきたのが、かつての飼い猫、れおくん。
そんな娘さんの様子を見てお母さんはポツリとつぶやきました。「よかった〜、自分のケータイ持ってきてなくて(笑)」。
結局この、JK感満点のガラケーから復活してきたのは……
れおくんとは別の猫、「人間大好き!」という、ちゃみくんなのでした。
■「知らない誰かのバースデー」市丸美由紀さん
バースデーケーキである。日付は11月29日。かつて娘さんが愛用していたケータイからプリントアウトしたのが、この写真。娘さんが、好きだったアイドルの誕生日を、ケーキを買ってきて勝手にお祝いした時の写真らしい。
お母さんは「そんなんのなにが楽しいん?」と、娘さんに素直に尋ねた。「1回行ってみればきっとわかるよ」。娘さんは、その時たまたま当選していた、あるアイドルグループのコンサートにお母さんを誘った。
市丸さんが今回持ち込んだのはこの2台。青いほうは、自身の愛用のケータイ。8年ほど前から電源を入れたことがなかった。シルバーの方が、以前娘さんが使っていたケータイ。これは何年かに1回定期的に充電し、電源を入れるようにしていた。
「娘のおもいでが消えてしまったら悲しいですから」
娘さんは、10年前の2月に亡くなってしまったのだ。娘さんのケータイは、中に詰まった思い出が消えないように、細心の注意を払って扱ってきた。娘さんが亡くなった日に、娘さんのお友達から寄せられたメールなどが今も残っている。
ブルーのケータイは、娘さんの生前から市丸さん自身が使っていたものだが、もう電源が入らなくなっていた。それを今回、再起動したのである。
そこには娘さんの姿はなかった。夜の東京タワーとか、夜の「イッツ・ア・スモールワールド」とか。お母さんと娘さんと息子さんは、ディズニーランドが大好きで、小中高それぞれの卒業のたび、3人で記念に旅していたという。
「お昼は普通にデジカメで撮るんですよ。娘とか息子はそっちに写ってるの。いっぱい写真を撮って、夜になるとデジカメの電池が切れちゃうんです。その時初めてケータイに切り替えるから、ケータイには建物ばっかりなのね」
懐かしい写真は出てこなかったけれど、懐かしいできごとを思い返す市丸さん。今は「大野くん」と「相葉くん」推しなのだという。娘さんが最後に連れて行ってくれたコンサート以来ハマってしまったのだそうだ。
「もしかしたら、自分がいなくなったあとも寂しくないように、夢中になれるものを私にプレゼントしてくれたのかもしれないですね」
■母の留守電 川邊桃子さん
彼女が復活させたかったのは、亡くなったお母さんが留守電に残したメッセージ。心筋梗塞で9年前に急死。まだ50歳だった。
「事務的な連絡だったんですが、母の声がきっとこのケータイに残ってるんじゃないかって。でも電源は入らないし、確認する方法がなくてあきらめていたんです」
それで北九州市から駆けつけてくれたという。
結果、バッテリーは充電可能だったが、起動しても数分で切れてしまう状態。ここで終了となるケースも少なくはない。ただこの時は、さまざまな好条件が重なった。
彼女は、再起動のためだけに博多に来た。どうしても電源を入れたかったし、時間もたっぷりあった。そしてケータイが抱えていたのが、「時間」が解決できる類の問題だったこと。「すぐ切れてしまうなら」と、スタッフはとにかく時間をかけて、しっかり充電することにしたのだ。
結局彼女が会場にいたのは3時間以上。でもその甲斐あって、再起動後も電源が落ちない状態にまでケータイは復活した。
中には1件だけ留守電のメッセージが残されていた。2009年3月16日14時38分。
再生し、ケータイに耳を傾ける彼女の目からみるみる涙があふれた。
“ニッセイ保険の人から書類が来ています。はい、終わりです”。
それが残されていたお母さんのメッセージ。たった9秒のそっけない伝言。でも……。
「ああ、なんか……こんな声だったんだっけって。亡くなってから聞くことなかったので、ずっと聞けんのかと思ってて……」
手の空いていたスタッフが思い立った。「スマホに残しましょう!」。古いケータイをスピーカーにつないでお母さんの声を再生し、それをスマホのボイスレコーダーで録音。きわめてアナログなやり方で、お母さんの声をいつでも聞けるようにした。
どうでしょう、この最高の笑顔! 担当したスタッフは「再起動冥利に尽きます!」と声を震わせた。
今回は「リサイクル」も行いました
ケータイを持ち込んでいただいたみなさんの多くから、いつも聞かれるのは「イベントのあとに写真を見るにはどうしたらいいの?」ということ。お手持ちのケータイに合うアダプターを手に入れていただき、いつでも充電できる体制を整えれば、いつでも昔のデータにアクセスできる。そんなふうにご案内してきました。
それを今回は「おもいでケータイ再起動」で初めて、古いケータイのデータをリサイクルするために引き取らせていただけば、現在ご使用のスマホに移行させるというサービスをはじめました。
右のPCで持ち込まれたガラケーと、今お使いのスマホを接続し、データを移行。で、左側のレバーのついた器具でケータイ本体に、お客様の前で穴を開けちゃうのである。
こんな感じで。
本体に穴が開き、回収した後は、手作業で基板、液晶、カメラ、プラスチック、ネジ、鉄、アンテナ、モーター、スピーカーなどに分解。基板からは金、銀、銅、パラジウムなどを採取、ネジやアンテナは鉄製品に、プラスチックはプラスチック製品にリサイクルされるのだ。
リサイクルした方にもお話を聞いてみた。
■「データが移せりゃ本体はもういいでしょ?」「1個だけ残して!」Oさん夫妻
おふたりは熊本からやってきた。2016年4月の震災の際、幸いにも崩れはしなかったけれどグチャグチャになった実家の室内を整理に行ったおふたり。
その時、古いケータイも発掘。そして折しも博多で行われたこのイベントに駆けつけてくれたのだ。
11年前の、熊本県の「三井グリーンランド」に佐藤健と東方神起(5人の頃の!)が来るというイベントの看板の写真を復活させ、持参した3台中2台をリサイクルに。
「大事なのは中身ですから。データを今のスマホに移行してもらえるんだったら、古いケータイは使わないまま持ってるより再利用してもらったほうが絶対にいいと思って!」
ホントはこの写真の1台もリサイクルに回すつもりだった。ギリギリのところでダンナさんが「ちょっと待ったー!」。
「実家の整理に行った時に、僕が幼稚園の時に使ってたガッチャマンの絵のついた弁当箱とかベータのビデオテープとか、古いものがいっぱい出てきて。ついつい持って帰ってきてしもて(笑)。絶対に使わんのはわかってても、手元に置いておきたいものってありますよね?」
ゴメンゴメンと頭をかくダンナさんに、「もう、しょうがないねえ」な奥様なのでした。
次はあなたの街かもしれません
そんなわけで、笑顔と泣き顔に満ち溢れた「au FUKUOKA」。
古いケータイを持ち込んで再起動させたみなさんはもちろん、なんとか電源を入れようとがんばる側も笑顔・笑顔・笑顔。このイベント、再起動させる側もかなり気合が入るし、とっても楽しいのです。そしてときには、スタッフがもらい泣きしたりすることも。
「おもいでケータイ再起動」、この後もKDDI直営店で全国ツアーを続けます。次はきっとあなたの街にお邪魔しますから!
文:TIME & SPACE編集部
撮影:Shizuka Sherry、TIME & SPACE編集部
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